第2話『剣を取る理由』2
リリアナは剣を強く握りしめた。
敵の重装兵は、ガレンの攻撃を受け止めながらも、まだ倒れていない。
(私は……戦えるの?)
足が震える。
呼吸が浅くなる。
けれど、今ここで何もしなければ――
「……私は、また何もできないまま、見ているだけなの?」
それだけは嫌だった。
(お父さんは、剣の持ち方を教えてくれた)
(剣の振り方も……基本だけなら知ってる)
戦場で通用する技術じゃないかもしれない。
それでも――
リリアナは、動き出した。
恐怖を振り払いながら、足を踏み出す。
「……やるしかない!」
槍を受けているガレンに、重装兵が大きく斧を振り上げる。
その瞬間――
リリアナは横から駆け込み、剣を振るった。
「ッ――!」
ガキィン!!
刃が敵の鎧に当たり、火花を散らす。
だが、傷はついていない。
(硬い……!)
リリアナはすぐに跳び退り、距離を取る。
重装兵がゆっくりと振り向いた。
黒い兜の奥から、冷たい視線がこちらを睨みつけている。
「……ちっぽけなガキが、何をしている」
その声に、リリアナの背筋が冷たくなった。
「リリアナ、下がれ!」
ガレンが割り込むように動く。
しかし、敵兵はすでにこちらに向かって斧を振りかぶっていた。
(まずい――!)
リリアナはとっさに剣を構えた。
だが、次の瞬間――
ゴォォー!!
突然、突風が吹いた。
リリアナは驚いて目を見開いた。
敵はバランスを崩し、斧を握り直す。
「………なに?」
リリアナが周囲を見回すと、煙の向こうから歩いてくる影があった。
「……ふぅ。ギリギリだったわね」
涼やかな声が響く。
そこにいたのは――
長い銀髪をなびかせた、一人の女性だった。