表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦場の紅蓮姫  作者: エル
灰の砦編
46/247

第8話『鬼の訓練、再び』3

「――次は、最終段階よ」


ミレイアの声が静かに響いたとき、リリアナはすでに地面と親友になりかけていた。


「いま……何段階目……?」


「十二段階中の十一段階目よ」


「それ最終段階じゃないんじゃあああああっ!!」


「でも次が“最終段階”なのは事実よ」


ミレイアは涼しい顔で返す。


「ここまでで、炎の直進性、持続力、そして暴発しない出力はある程度整った。

でも“使える”って言うにはまだ早い。

最後にやってもらうのは――“迎撃”。」


「迎撃……って、もしかして――」


「相手の魔法を焼き尽くす」


ズウウン……と、ミレイアの周囲に風が渦巻いた。

風圧の先、訓練場の反対側に立った彼女の手には、風の刃――“風鎌”が浮かんでいる。


「この風の刃は、実戦で敵の魔法兵が使う水準に合わせてあるわ。

これを、あなたの炎で正面から迎撃して、かき消すの」


「え、ちょ、待って!?

あれ直撃したら普通にやばくない!?」


「しっかり狙うのよ?ちゃんと焼き払えば無傷で済むわ」


「おかしいでしょ!?なんでそんな軽い感じで言えるの!?」


「大丈夫よ。もし失敗したら、あなたが吹き飛ぶだけだから」


「そこもおかしい!!」


リリアナの悲鳴を無視して、ミレイアは手を上げた。


「準備はいい?」


「よくない!!」


「じゃあ、いくわね」


「だからなんで通じないのおおおおおおおおおお!!」


風が鳴り、風鎌が空気を裂いて突き進む――!


「ポジティブに、止めようおおおおぉぉぉぉ!!」


ゴッ!


リリアナが放った炎が、直線的に放たれる。


ゴオォォォ――ッ!!


空気が震え、風と炎がぶつかりあい、激しく爆ぜた。


ドンッ!!!


一瞬の静寂のあと、爆風が訓練場に吹き荒れる。


「……っく!!」


リリアナは両足を踏ん張り、両腕で顔を覆ってその場に立ち続ける。


――数秒後。煙の中に、ミレイアの姿が現れた。


「……止まったわね。風は、炎に焼かれた」


「え……本当に……?」


「ええ。今のなら、十分“使える”わ」


その言葉を聞いた瞬間、リリアナの膝が崩れる。


「うう……やったぁ……生きてるぅぅ……」


「あとは制御を保ったまま威力を上げるのよ。それはこの技を使っていくうちに慣れるわ」


その様子を柵の外から見ていた三人。


ガレン「おお、成功したな」


ハルド「普通にすげえな……なんか感動した」


ローク「……それにしても見た目が限界だな。あれ、完全に“焼き上がって”るぞ」


ちりちりになった髪、ススまみれの顔、焦げたマント。


リリアナは四つん這いで地面を這いながら呟く。


「もう……何も怖くない……」


「いや、怖がれよ。次まだ村の調査任務あるからな」

ガレンが笑いながら、そっと水袋を差し出した。




こうして、三日間の“鬼訓練”は幕を下ろす。

炎の制御を得たリリアナは、次なる戦場――

通信が途絶えたミルヴァン村へ向かうことになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ