第1話『戦場に咲く炎』3
剣の持ち方、振り方、基本の構え。
すべて父の見よう見まねで覚えただけで、実戦での経験は皆無。
それでも、戦わなければ生き残れない。
(でも……)
リリアナは剣を握る手に力を込めた。
ここで戦えなければ、戦場での生存はあり得ない。
「……教えて」
「は?」
「剣の使い方……戦い方を」
リリアナは真っ直ぐにガレンを見つめた。
ガレンは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにニヤリと笑った。
「へぇ……いい度胸してんな」
彼は剣を肩に担ぎ、まるで面白いものを見つけたかのようにリリアナを見た。
「でもな、リリアナ。戦場で生き残るには、"剣の振り方"より"死なねぇ方法"を先に覚えたほうがいいぜ」
そう言うと、ガレンはリリアナの腕を掴み、力強く引っ張った。
「今は戦い方よりも、生き残ることを考えろ」
彼は周囲を見回しながら、低く言った。
「……お前、ひとりか?」
「……」
リリアナは答えなかった。
全身を強く打ち付けた衝撃で、まだ思考が上手くまとまっていなかった。
ガレンはそれ以上は聞かず、無言で前を向いた。
その時だった。
ドォォォン!!
轟音と共に、地面が揺れる。
近くの砦の壁が崩れ落ち、煙と炎が巻き上がった。
「……まずいな」
ガレンが顔をしかめる。
「そろそろここもヤバいかもしれねぇ。さっさと移動するぞ、リリアナ」
「でも……!」
「いいから来い!」
ガレンは強引にリリアナの腕を引き、戦場の混乱の中へと駆け出した。