第5話『前線の戦火』 6
「あと少しで丘の頂だ!」
ガレンの声が響く。だが、その言葉に続くように、敵の咆哮が斜面の上から降り注いだ。
「来るぞ……!奴ら、後衛を下げて肉弾戦に切り替える気だ!」
ガレンの予想は的中していた。
丘の頂から、敵の剣士たちが怒声と共に突撃してきた。
鉄の装備に身を包み、盾を構えた敵の部隊が斜面を逆流するように殺到する。
「クソ……突っ込んで来るぞ!!」
ガレンが剣を握り直し、すぐさま迎え撃つ。
「リリアナ、構えろ!」
「うん!」
リリアナも歯を食いしばって構える。
だが、息は荒く、膝が少し震えていた。
(まだ……まだ私は戦える)
だが敵の勢いはすさまじかった。
ただでさえ足場の悪い斜面を登っていた部隊は、勢いを失ったまま迎撃を強いられる。
「潰せェェェ!!」
「この丘はグランツェルのものだ!!」
怒号が響く。
リリアナの前に現れた敵兵が、盾で押し込んでくる。
「ちっ……!」
咄嗟に剣で受け止めたが、体勢を崩されて膝をつく。
「へっ、若造が出しゃばるんじゃねえ!」
敵兵が剣を振り下ろしてくる。
「……うるさい!!」
リリアナは剣を振り上げて、真正面から迎え撃った。
ガキィィン!
しかし、体制の悪さもあり、リリアナの剣が押し込まれる。
その時ーー
バチンッ!!
目の前の敵に電撃が落ち、一瞬にして敵が沈んだ。
ハルドは他の敵と戦っている。
後方から"誰か"がリリアナを助けていた。
リリアナは先頭を任されていたため、目前にはほぼ敵しかいない。
しかし、後ろには"仲間"がついてきていた。
ハルドは彼女の隣に滑り込むと、周囲を見渡して表情を引き締めた。
「こうなったらもう力比べだ!敵も死ぬ気で来るぞ!」
「突撃が来るぞ!全員、足を踏ん張れ!反撃の準備をしろ!!」
ヴォルフの怒号が響いた。
「盾兵は右に展開、魔法兵を守れ!中央は槍で止めろ!」
ガレンが叫ぶと、部隊の兵士たちが慌てて指示に従って動く。
その一瞬の配置転換の隙――
敵の剣士が一斉に突っ込んできた。
「来るぞおおおおおおっ!!」
ガレンが吼える。
リリアナは剣を振りかざし、剣先に炎を集中させる。
「行こう!!紅蓮刃!!!」
ブォッ!!
紅い炎が彼女の剣を包み、まるで牙を剥くように閃いた。
ヴォルフが再度号令をかける。
「突撃しろ!!頂を奪い取れ!!!」
兵士たちが吠える。
剣を掲げ、叫びながら丘を駆け上がる。




