第5話『前線の戦火』 5
斜面を駆け上がる兵士たちの足元に、爆発のような閃光が走る。
「くそっ、またか!」
ガレンが咄嗟にリリアナの肩を引き、すぐ脇に落ちた火球を回避する。
「ありがとう……!」
息を切らしながら、リリアナは剣を握りしめる。前方の地面は爆発の衝撃で抉れ、土と煙が舞い上がっていた。
「ガレン、あれが敵の魔法兵……?」
「ああ。あの丘の上に構えてるヤツらだ。近づくには、味方の援護が必要だな」
「だったら……!」
リリアナが左手に視線を落とす。
(もう一度……さっきみたいに)
彼女は走りながら紅蓮弾を繰り出す。
ブワッ!!
敵の魔法兵は、リリアナの放つ火球を打ち落としていく。
「リリアナ、ナイスだ!」
敵の魔法兵はリリアナの攻撃に対処し、最前列に向いていた魔法攻撃が一瞬止まった。
ハルドが雷を纏わせて槍を一閃する。
「突き抜けろ、迅雷!」
バリバリッ!!
ハルドが高速で敵陣に突っ込み、電撃を叩き込む。
そこへガレンが割って入り、大剣で突撃の突破口を作る。
「俺に続け! 押し上げるぞ!」
「おおおおお!!」
兵士たちが叫びながら丘を駆け上がる。
その瞬間――
「リリアナ! 左!」
ミレイアの声に振り返ると、魔法兵が呪文を唱えながら杖を掲げていた。
「……っ!」
リリアナは即座に地面に飛び込む。
次の瞬間、リリアナの頭上を氷の矢が通過し、背後の味方兵士が吹き飛ばされた。
「うっ……!」
立ち上がろうとした瞬間、目の前に現れたのは刃を構えた敵兵。
「死ね、小娘が……!」
「じじいは黙ってろ!」
リリアナの紅蓮弾が"じじい"の顔面を捉え、その剣を紅蓮刃で跳ね返す。
ガキィン!!
一撃で弾くと、ガレンから学んだ"流れる斬撃"で敵を斬り伏せた。
「ふん、年寄りの腕じゃ私に追いつけないみたいね」
火花と煙の中、彼女の目は紅く燃えていた。
――丘の頂が、目前に迫っている。




