第42話『決戦前線』パート4:突撃
砦前の平地には、濁流のような魔力の残滓が渦巻いていた。
焼け焦げた大地。
跳ね飛ばされた岩。
爆裂の痕が、無数に刻まれている。
それでも、中央軍の陣形は崩れていなかった。
「そろそろ、いけるのー!」
上空の魔法を弾き続けていたヘルダス隊の声が、明るく響いた。
その小さな声が、戦場全体にわずかな安堵をもたらす。
アイアス隊の盾列も乱れはない。
整然とした隊列が、まるで壁のように敵の猛攻を受け止め続けていた。
その背後、まだ一歩も踏み出していない二つの部隊が、静かに待機している。
――リリアナは剣を見つめていた。
魔力を通せば、紅蓮のような炎が刃を包む。
この剣で、何人を守ってきたか。
何人を失ったか。
それでも前を向くために、戦ってきた。
彼女は、一歩、地を踏みしめる。
「次は――私たちが進む番」
静かな決意が、その声には込められていた。
セリスが頷き、ロークは腰の双剣に触れながら、にやりと笑って見せた。
ミレイア、クラウス、ノア、ティオ、ラシエル、ルネ――全員が動きの合図を待っている。
マリアを含む治癒部隊はアイアス隊の後ろで待機し、怪我人が出たらいつでも動ける状態だ。
同じように、ヴォルフ隊でも動きがあった。
「ようやく俺たちの出番ってわけか」
ガレンが肩を鳴らし、重たい大検を構え直す。
「行くぞ――!!」
ヴォルフの号令が、戦場に重く響いた。
その直後。
リリアナが、炎を纏った剣を高く掲げて叫ぶ。
「全員、連れ戻す!!全員、生きて帰る!!」
その声は、まっすぐに兵たちの心を貫いた。
ヴォルフ隊、第三部隊――ついに突撃開始。
武具の音が鳴り、足音が地を打つ。
整った陣形が、敵の前衛へと向かって突き進む。
風が巻き、砂塵が舞い上がる中、敵の動きも変化を見せた。
再編成される敵前衛。
焦りと怒りの魔力が立ち上る。
だが、中央軍の勢いは止まらない。
その中心を走るのは、リリアナ。
金の髪をなびかせ、真紅の瞳がまっすぐに敵を見据える。
迷いは、もうない。
「……絶対に、守り抜く!」
リリアナがそう呟いた瞬間、炎の剣が光を放つ。
剣と剣が交差する前の、ほんのわずかな静寂。
次の瞬間、火花が弾けた。




