表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦場の紅蓮姫  作者: エル
王都編
200/247

第37話『牙を剥く議場』パート5:特権

「以上をもって、本日の審議を終了とする」


ユルバン判事の宣言と共に、議場の扉がゆっくりと開かれた。


 


議事が終わったというのに、場の空気はまだ張り詰めていた。


フェルナー子爵は最後までリリアナたちに目を向けず、怒気を押し殺すように退出し、

サルトス伯は何も言わず、静かに背を向けた。


 


ユルバンだけが、短くリリアナたちに目をやる。

その瞳には、感情の読めない光が浮かんでいた。


 


「……仮登録、か」


リリアナが小さく呟いた。


 


「正式じゃないけど、“認められた”のは間違いないわ」


ミレイアが隣で答える。


「番号の使用も、軍記録への登録も――今日から第三部隊は制度の中に存在する部隊よ」


 


ラシエルがそっと眼鏡を直した。


「手続き上は“暫定扱い”でも、王紋バッジがある限り――

行動には支障がありません。施設利用も、補給要請も、通行証の代わりになります」


 


「……バッジの権限って、そんなに強いの?」


マリアが驚いたように訊いた。


 


「ええ。もともと“将軍以上”が持つものだったから」


ミレイアが頷く。


「王都内の軍事施設、補給所、武器庫――

よほど機密性の高い禁区を除けば、ほとんどが通れるわ。

しかも、部隊長だけじゃなく、同行者の使用も許可されてる」


 


クラウスが、少し驚いた顔で言葉を継ぐ。


「ってことは……全員で武器庫にも行けるってことか」


「ええ。事前申請さえすれば、使えるはずよ。

王都に滞在してる間に、みんなそれぞれ武器を見ておくといいわね」


 


「……すごいことだね」


マリアがふっと表情を和らげた。


 


リリアナは一歩だけ前に出て、空になった議場を振り返る。


「貴族たちからあんなに嫌がられて、

それでも今日、制度の中に入ったんだ」



 


「さて、そろそろ出ましょうか」


ミレイアが静かに言った。


「外には、使用人が待っているはずよ。

少し休んで、屋敷に戻りましょう」


 


「うん……でも、なんか変な気分」


マリアがぽつりと呟く。


「言葉で戦うって、あんなに怖くて、重たいんだね」


 


議場を出た一同に、冷たい風が吹きつけた。


廊下の先には、待機していた使用人の姿があった。


 


「お疲れ様でございました、皆さま。

屋敷のほうでは昼食と、お茶のご用意が整っております」


 


「ありがとう」


ミレイアが柔らかく答える。


「……それと、王紋バッジについて、使える施設の一覧を貰えると助かるわ。

武器庫も含めて、申請の流れを確認したいの」


 


「かしこまりました。すぐに手配いたします」


 


使用人が頭を下げ、歩き出した。


それに続いて、リリアナたちもゆっくりと歩を進めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ