第1話『戦場に咲く炎』2
(……誰?)
意識がまだはっきりしない中、リリアナはぼんやりと彼を見つめた。
「何ボーっとしてやがる。敵は待っちゃくれねぇぞ」
そう言いながら、男はリリアナの腕を引き、半ば強引に立たせる。
「……っ!」
全身に走る痛み。
爆発の衝撃で地面に投げ出されたらしく、体のあちこちが打撲でズキズキと痛む。
(それでも……動かないと、殺される)
リリアナは歯を食いしばり、膝を震わせながら立ち上がった。
「チッ……なんでお前みたいなガキが戦場にいるんだよ」
男は苦笑しながら、大剣を肩に担いだ。
「おい、名は?」
リリアナは息を整えながら、ゆっくり答えた。
「……リリアナ・アーデル」
彼女はそう答えた。
「リリアナねぇ……。まぁいい。俺はガレン・グランツだ」
ガレン――それが彼の名だった。
彼はリリアナの肩をポンと叩き、周囲を見渡す。
「さて、話は後だ。まずはここを抜け出すぞ」
そう言いながら、彼は剣を構えた。
その瞬間、リリアナの背筋が凍りつく。
――敵だ。
「よくも仲間を……ッ!」
槍を構えた敵兵が、リリアナ目掛けて突進してきた。
「くっ……!」
リリアナは咄嗟に地面に転がり、槍をかわす。
(このままじゃ……!)
リリアナは剣を握りしめた。
技などない。
剣の振り方すら、父の見よう見まねで覚えただけ。
敵の槍がもう一度振り下ろされる。
その瞬間、ガレンが横から飛び込み、大剣で槍を弾き飛ばした。
「チッ……戦えねぇなら、下がってろ!」
彼は敵兵の首元へ一閃を浴びせる。
ザシュッ!!
敵兵は短い悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちた。
リリアナは息を呑みながら、それを見ていた。
「……お前、まさか剣の使い方も知らねぇのか?」
ガレンは呆れたようにリリアナを見下ろした。
リリアナは悔しさを押し殺しながら、唇を噛みしめた。
(……こんなんじゃ、戦場で生き残れない)
そう、痛感しながら――