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戦場の紅蓮姫  作者: エル
王都編
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第32話『旅立ちの朝』パート2:出発

荷車に、次々と荷物が積み込まれていく。


出発の列の中には、シアネとその護衛兵の姿もあった。 


ロークは、砦で用意された簡易の治療馬車に静かに寝かされていた。

枕元にはマリアが控え、何かあればすぐ対応できるよう見守っている。


 


リリアナ隊の面々は、それぞれ馬車や荷物の最終点検をしていた。

ヘルダス隊のキユ、コヨ、テトも、近くで慣れない様子で荷車を見上げている。


 


「これ、のるのー?」


コヨが首をかしげながら、馬車をぺたぺた触っている。


 


「王都のご飯……楽しみ」


キユは王都での食事について、妄想を膨らませていた。


 


その横で、ルネがふとロークの寝顔を見て、ぼそりと呟いた。


 


「……お葬式の列みたいだな」


 


空気が一瞬止まった。


 


すかさず、ラシエルが引き気味に、小声で突っ込む。


 


「……この場であなたを埋めても、誰も文句言いませんよ?」


 


ルネは悪びれずに、雲を見上げたまま口笛を吹いていた。


 


リリアナは思わず笑いそうになりながらも、気を引き締めた。

今日からは、"王都への旅"だ。





ハウゼンは、馬車の積み込み作業を一通り見届けた後、リリアナたちに向き直った。


その顔は、見事なまでの鬼軍曹ぶりだった。


 


「いいか、よく聞け!」


 


いつも以上に声が大きい。


砦の端で作業していた兵士たちが、何事かとちらりとこちらを見た。


 


「王都では絶対に問題を起こすな! 些細なことでも騒ぎを起こしたら、即座に報告しろ!」


 


リリアナたちは、びしっと立ち直る。


 


「貴族の前で無礼を働くな! 軽口も厳禁だ! 耳打ちも禁止だ! 全部だ! 黙っていろ!」


 


ノアが、こっそりクラウスの背中に隠れた。


 


「ヘルダス隊は……できる限り目立つな! 走るな! 飛ぶな! 叫ぶな! 市場(いちば)で試食に群がるな!」


 


コヨが「えっ」と顔を上げるが、すぐティオが肩を軽く抑えて止めた。


 


「第三部隊の名を汚すようなマネは、絶対に許さん!」


 


ハウゼンの視線が、リリアナにぐっと突き刺さる。


リリアナはピンと背筋を伸ばし、真剣な顔でうなずいた。


 


「はい!」


 


「荷物をひっくりかえすな! 移動中に体調を崩すな! 馬車で居眠りして落ちるな!」


 


ルネがぽつりと呟く。


「荷車ひっくり返したら……さすがに伝説だねぇ」


 


ラシエルがすかさず低く突っ込んだ。


「不名誉の伝説ですけどね……」


 


「それと!」


 


ハウゼンの声がさらに一段大きくなる。


 


「任命式までは、絶対に! 絶対に! 目立つな!!」


 


一瞬の沈黙。


 


リリアナたちは、一斉に直立不動になった。


「了解!!」


 


ハウゼンは鼻を鳴らすと、少しだけ柔らかく言った。


 


「……無難に終わらせて、無事に、戻ってこい」


 


その言葉に、リリアナたちはそれぞれ、小さく息を飲み、そして、真剣にうなずいた。


 


荷車隊は、朝の光の中を静かに出発していった。



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