第31話『暁の訓練場』パート5:交わる光
息が白くなるほど、リリアナは全力で魔法を放ち続けた。
だが、イチも一歩も引かない。
火と風がぶつかり合い、爆ぜるたび、地面には焦げ跡とひび割れが広がっていった。
(……そろそろ……)
リリアナは、最後の一撃を決めようと、息を整える。
イチもそれを察したのか、風の魔力を集中させる。
互いに、一瞬だけ静止。
そして――
「紅蓮炎!!」
「つむじかぜー!」
二人の魔法が、正面からぶつかった。
炸裂。
強烈な爆風が巻き起こり、土埃と煙が更地に舞い上がった。
リリアナは腕で顔をかばいながら、後ろに跳び退る。
イチも、軽い身のこなしで地面を滑って後退した。
やがて、煙の向こうから、イチの明るい声が響く。
「たのしかったのー!」
リリアナも、小さく息を吐きながら笑った。
「……うん、すっごく……!」
本当に、心からそう思った。
戦うことが、怖いだけじゃないと知った。
強くなることが、誰かを守る力になると知った。
胸の奥で、小さな火が灯り続けている。
「おつかれー!」
走り寄ってきたコヨ、ニオたちが、ぱんぱんと手を叩きながらリリアナを囲む。
「リリちゃん、すごかったー!」
「火、あつかったのー!」
テトもにこにこと近づいてきて、リリアナの手をそっと叩いた。
「また いっしょに、たたかおうねー!」
リリアナは少し戸惑いながらも、笑ってうなずいた。
「うん。また、やろう」
その少し離れた場所では、セリスも訓練を終えていた。
彼の周囲には、一人パタッと倒れたのか、おんぶをしているツグの姿。
そして、ヘルダス隊の隊員たちがぱたぱたと座り込んでいる。
みんな泥だらけだったが、誰一人、不満そうな顔はなかった。
セリスはそんな彼らに背を向け、静かに空を見上げていた。
(……セリスも、すごい)
リリアナは心の中でそう思った。
いつか、自分もあそこに並べるだろうか。
そう思うと、胸が高鳴る。
「はー……疲れたー」
どこからともなく、ニオが転がるように座り込み、空を仰いだ。
「きもちいいのー!」
コヨが跳ねながら声を上げ、テトも両手を広げてごろごろ転がった。
小さな体たちが、疲れ切っているのに、どこか楽しそうで。
リリアナは、ふと笑みを浮かべた。
(私も……もっと、強くなる)
(守れるように……必ず)
空は、青く高かった。
そして、朝の光の中で。
リリアナたちの、小さな成長の証が、確かに輝いていた。




