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戦場の紅蓮姫  作者: エル
坑道編
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第31話『暁の訓練場』パート4:紅き意志

火球と風刃が、更地の空気を震わせた。


 


リリアナはイチの突風を回避しながら、横へと大きくステップする。


 


(一撃一撃の密度が、前よりもずっと高い……!)


 


イチは小柄だが、まるで、本気のミレイアと戦っているようだった。


彼女もまた、全力でリリアナに応えてくれていた。


 


――遠慮なんてない。


 


リリアナは、構えを低くする。


再び、炎を手に宿した。


 


「紅蓮弾!」


 


火球を立て続けに二発、三発と撃ち出す。


 


イチは風を纏ってそれをかわしながら、旋風を巻き起こし、反撃に転じた。


 


「いくのー!」


 


イチの掌から放たれた小さな旋風が、地を滑るようにリリアナへ向かってくる。


 


リリアナは咄嗟に跳び退き、剣を逆手に持ち直した。


 


(……押されてるだけじゃ、ダメ)


 


リリアナは足元の地面を蹴り、今度は斜め上から火球を叩き込むように放った。


 


「紅蓮弾!!」


 


炸裂する火球。


 


イチは風の盾でそれを受け止めたが、受けきれずに後ろに跳ね飛ばされた。


 


「わわっ!」


 


それでもすぐに体勢を立て直し、再びリリアナへ向き直る。


 


(さすが、ヘルダス隊……)


 


リリアナは無意識に笑っていた。


 


こうして全力でぶつかれる相手がいること。


互いに限界を超えようとすること。


それが、何より嬉しかった。


 


リリアナは深く息を吸った。


心が、燃える。


 


(――私も、ここで強くなる)


(カイルに、対抗できる力を!)


 


 


そのときだった。


 


「リリちゃん! 気をつけるのー!」


 


イチの背後、遠くからコヨの声が飛ぶ。


 


リリアナが反射的に振り返る。


 


そして見た。


 


更地の別方向――再開されていたセリスとヘルダス隊の訓練が、さらに過激さを増していた。


 


セリスの周囲に、雷光が渦巻いている。


その雷を、ヘルダス隊のニオとテトが、必死に氷と岩で押し返している。


 


(すごい……!)


 


リリアナは思わず見惚れる。


 


セリスの雷光は、まるで生き物のようだった。


鋭く、荒々しく、しかし仲間を傷つけないように、寸前で制御されている。


 


ヘルダス隊もまた、必死で応戦していた。


更に炎、雷属性の隊員も加わり、果敢にセリスへと挑んでいる。


 


――誰も、手を抜いていない。


 


この訓練は、全員が本気だ。


生き延びるための、そして未来を繋ぐための、本物の戦いだった。


 


リリアナは拳を握り直した。


 


(私も――負けられない)


 


再びイチに向き直る。


イチも、笑っていた。


 


「もういっかい、いくのー!」


 


リリアナも、自然に笑った。


 


「――来い!」


 


 


次の瞬間、リリアナとイチは、再び火花を散らしてぶつかった。


 


朝の更地に、様々な属性の交錯する音が、いつまでも響き渡っていた。



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