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戦場の紅蓮姫  作者: エル
坑道編
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第23話『封鎖戦域』パート2:命の天秤

「マリア、民間人を頼む!」


ロークの声が通路に響く。


マリアは小さく頷くと、細い抜け道の前に立って声を張る。


「順番です、一人ずつ!頭上気を付けて!」


既に十人以上の敵兵が目の前に広がっていた。


「来るぞ……!」


ロークが剣を構えた隣で、ラシエルが水の刃を繰り出し、通路を守る盾となる。


「全員連れてこい。その三人もだ」

カイルの一声で敵兵が一斉に動きだす。


「っ……くっ!」


ロークが敵の剣を捌き、ラシエルが援護する。


「マリア、あと何人だっ!」


「あと三人……あと三人ですっ!」


ロークは歯を食いしばり、双剣を交差させて突っ込んでくる敵兵を止める。


「こっちが崩される前に全員逃がすぞ!」


「わかりました!」


ラシエルも必死に動き、水の鞭で敵を打ち払うが、数が多すぎる。


「マリア!」


「……行きました!民間人、全員通りました!」


その瞬間、空間の奥から怒声が上がった。


「てめぇらぁあああっ!止めろォ!」


「ラシエル、先に行け!」


「なっ……でも!」


「いいから行け!!」


ロークの叫びに、ラシエルの足が止まる。

マリアが泣きながら後ろから彼女の腕を掴んだ。


「ラシエル、行くの……ロークが、時間を稼ぐって言ってるの……!」


「……っ、でも……でもっ……!」


ラシエルの目には涙があふれ、足が動かない。

この状況でローク、一人を残して"無事"なわけがない。


この細い抜け道。

入口は更に狭く、かがまないと通れない構造になっている。


通り抜けるには"剣を振れない時間"が発生する。


どう足掻いてもこの細い道に入る瞬間、無防備になるのだ。


敵から見れば"最後の一人"は確実に刺せる状況だった。


「おい、早く行けって!」

複数の剣を受けながらロークは肩越しに叫ぶ。

後方では、もう敵兵たちが武器を構えて距離を詰めていた。


「ラシエル!!"私たち"は民間人を守らなきゃいけないの!!」


仲間の命。

民間人の命。

それらを天秤にかけなければいけないこの状況で、マリアは胸が張り裂けそうな、悲痛な声で叫んだ。






「…………お前ら……何泣いてんだ」


ロークの優しい声が響いた。


「すぐ追いかける。だから――早く行け」


ロークは一瞬だけ振り返り、笑ってみせた。


マリアはラシエルの手を強く握り、引っ張る。


「ローク、絶対に、戻ってきて……!」


「っ……かならず……!」


涙で視界を滲ませながら、マリアとラシエルは民間人を連れ、抜け道の奥へと走り出した。



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