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戦場の紅蓮姫  作者: エル
フレスト砦編
122/247

番外編:灰の砦の軍事情 パート5『意外と足りてない――戦力とローテーションの話』

「灰の砦って、結構人が多いよな?」

「いや、足りてないんだよ、全然」


そんな会話が交わされるほど――

この砦は、“人が多そうに見えるけど、実は足りてない”という不思議な場所である。




■常駐している中隊は、たった4つ


灰の砦に駐屯している中央軍の部隊は、次の4つのみ。


- 中央軍第一部隊・第一中隊(ヴォルフ隊)

- 中央軍第一部隊・第二中隊(アイアス隊)

- 中央軍第一部隊・第三中隊(ヘルダス隊)

- 中央軍第三部隊(リリアナ隊)


このうち、第一中隊から第三中隊までは、かつて統一された中央軍第一部隊として運用されていたが――

現在は隊長が不在のため、各中隊が独立して運用されている状態である。


つまり、第一部隊は「部隊」ではなく、「中隊連合」として機能している。


なお、リリアナ隊のみ“部隊”単位での運用”となっており、中央軍第三部隊として独立任務を受けている特殊な存在だ。




■第四・第五部隊は不在、第二部隊は凍結中


中央軍には本来、第一~第五までの番号付き部隊が存在している。

だが、現在その中で灰の砦にいるのは第一と第三のみである。


- 第四部隊・第五部隊は、それぞれ他の前線拠点に展開中

- 第二部隊は数年前の壊滅的損耗により“番号ごと凍結”

- 第三部隊も長らく空席だったが、ハウゼン将軍の判断でリリアナ隊が復活配置


つまり、灰の砦に戦力が集中しているわけではなく、本来いるべき部隊の多くが不在なのだ。




■それでも“人が多く見える”理由


砦を歩けば、どこにでも人がいる。

食堂では村人がご飯を食べ、通路には支援兵が資材を運び、

広間では兵士が木箱を並べて食事をとっている。


では、なぜそう見えるのか?


答えは――「軍人以外が多すぎる」からである。




およそ100名の民間人が、

倉庫・食堂を占領し、どこから仕入れたのか、徐々に荷物も増えている。


当然、食堂は完全に村人用として運用され、兵士たちは屋外や通路で食事をとっている。




■支援班と裏方兵の仕事量がえぐい


支援系の兵士たちは、表向きには「雑務担当」とされているが――

実際は以下のような仕事を毎日こなしている:


- 補給管理:物資の仕分け、再配布、村人用物資の調整

- 伝令:他部隊や王都との連絡を馬か徒歩で運搬

- 医療支援:兵士と民間人の軽度~中等度の治療(1日20人以上を処理)

- 雑務:掃除、洗濯、火の管理、水の確保、ライム追い払い等



すでに支援班の誰かが休むと、回らないほどギリギリの人員配置となっている。


そんな彼らも人間である。

楽しみの一つでも無ければやってられない。


「地獄組の俺にも、楽しみがあるんだ。誰にも見られない場所で、木箱に座ってきゅうりをかじるっていうさ」


そうぼやく兵士がいたとか、いないとか。




■交代制=限界を前借りしてる


砦の兵士たちは、交代で以下の任務にあたっている:


- 門警備(昼夜)

- 外周巡回(昼と深夜)

- 村人の見回り(夕方と夜)

- 番犬の餌番(不定期)


この交代勤務を回すため、

兵士たちは1日6時間も眠れれば上等という状態。


ヴォルフ隊やアイアス隊は、交互に深夜巡回も受け持つ。


リリアナ隊は基本“外任務”の機動枠扱いのため、砦の中での役割はほぼ無い。

そのため、リリアナ隊が任務に出ていない時は何かと使われる。




■砦の現実は“目に見えない消耗”


- 貴族が送ってくる視察隊は、これを見ずに帰る

- 村人は兵士たちに頭を下げながら、食事をもらう

- 犬は何も気にせずパンを狙っている


そんな毎日の中で、兵士たちは静かに疲れていく。

それでも誰も崩れず、倒れず、逃げ出さない。


この砦は――戦力が足りないからこそ、

全員で支え合って“持ちこたえている”のだ。




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