第3話『初陣の炎』 2
リリアナはもう一度炎を出してみた。
「……すごい」
リリアナは呆然と手のひらを見つめた。
さっきまで何も感じなかったはずの自分の手に、確かに炎が灯っていた。
「私、本当に魔法が……」
しかし、その言葉が終わる前に――
ボッ!
炎が突然勢いを増し、リリアナの手を包み込もうとした。
「うわっ!?」
慌てて後ずさるが、炎はまるで生き物のように暴れ、手のひらから離れない。
「ミレイア、どうすれば……!」
「だから言ったでしょう?」
ミレイアは落ち着いたまま、リリアナの肩に手を置いた。
「魔力は感情に影響を受けるの。驚けば驚くほど、制御が難しくなるわ」
「で、でも……!」
「いいから、落ち着いて」
ミレイアの声は冷静だった。
「深く息を吸って――ゆっくり吐く」
リリアナは言われた通りにする。
息を吸い、吐く。
すると、炎の勢いが少し弱まった。
「……そう、それでいいわ。今度は、"消えろ"と強く意識して」
リリアナはぎゅっと目を閉じ、心の中で炎に命じた。
(消えて……!)
すると――
フッ……
炎が静かに消えた。
リリアナは驚きながら手を見つめた。
「……消えた?」
「ええ。魔力を制御する第一歩ね」
ミレイアは満足げに頷いた。
「でも、これはまだ基礎の基礎よ。実戦で使えるようになるには、もっと訓練が必要になるわ」
「もっと……?」
リリアナは眉をひそめた。
「当然よ。あなたはまだ炎を出すことしかできない。"どう使うか"を学ばなければ、戦場では役に立たないわ」
「……そっか」
リリアナは拳を握った。
(炎を出せるだけじゃ、意味がない)
(この力を……戦場で使えるようにならなきゃ)
ミレイアはそんなリリアナの決意を見て、微かに微笑んだ。
「いいわ。じゃあ、次の訓練に進みましょうか」




