第18話『束の間の焔』4
朝焼けが、フレスト砦の石壁をほんのりと染めるころ、リリアナ隊はすでに準備を終えていた。
背中に装備を背負い、グレイから貰った荷馬車には簡易の補給物資が積まれている。
帰りに少し寄る所があるとグレイに話すと、いつの間にか物資が手配されていた。
砦の正門前には、グレイを中心に、フレスト砦の隊長たちと兵士たちがずらりと並んでいた。
「あの女の子が龍出したってマジか?」
「中央軍には借りができたな」
「でも……本当に助かった」
そんなささやきが聞こえる中、グレイが数歩、前へ出た。
「中央軍第三部隊」
「……!」
リリアナがびしっと背筋を伸ばす。ノアやミレイア、セリス、そして他の隊員たちもそれに倣った。
「この砦を守れたのは、お前たちの働きがあったからだ。礼を言う」
リリアナが小さく頭を下げようとすると、グレイが先にぺこりと頭を下げた。
「……ありがとう」
少し間を置いて、フレスト砦の他の隊長たちも、深々と頭を下げた。
それを見て、兵士たちが次々に拍手を送る。
「おい、また来てくれよー!」
「今度は酒持って来い!」
「シチューも頼む!」
「舌火傷するなよー」
「うるさいっ!」
ノアがツッコみを入れ、場が和やかに笑いに包まれる。
その後ろの司令塔の上階――窓が少しだけ開いていた。
マリアが手を振ると、カーテンの影で将軍がわずかに頷いたのが見えた。
(将軍は……まだ無理か)
リリアナは少しだけ目を伏せてから、前を向いた。
「リリアナ隊、出発!」
ロークが先頭に立ち、砦を出る。
ノアとティオがその後に続き、ミレイア、セリス、ラシエル、ルネ、クラウス、そしてリリアナが最後に歩き出した。




