光の共鳴
カイが死者の行軍に立ち向かい続ける中、セリアは彼を見つめながら、自分にできることは何かと考えていた。彼の力が尽きていくのをただ見守るだけではいけないと感じていた。彼女の中に宿る光――それが、今こそ必要な時だと直感的に理解していた。
「カイ…やっぱり私も戦うわ」
セリアは静かに、だが決意に満ちた声で言った。
「セリア…」
カイは振り返り、少し困惑した表情を見せた。「お前の力を無駄に使わせたくないんだ」
「無駄じゃない。私たちは一緒に戦うべきよ」
セリアの瞳には強い意志が宿っていた。「あなたがここまで私を守ってくれたから、今度は私があなたを守りたいの」
その言葉にカイは一瞬言葉を失ったが、すぐに微笑んだ。「そっか、セリア…お前は強くなったな。いいだろう、俺たちで一緒にやってみるか」
カイはゆっくりとセリアの隣に立ち、二人の光を重ね合わせるように手を伸ばした。セリアも彼の手を取り、心の中に宿る光をさらに強める。彼女の体から放たれる光が、まるで命の炎が燃え上がるかのように輝き始めた。
「私たちの光で、この闇を消し去るわ」
セリアは確信を持って言った。
「そうだな。さあ、行こうか」
カイは力強く頷き、再び死者の行軍に向かって進み出した。
二人の体から放たれる光は、死者の行軍に向かって広がり、彼らの闇を押し返し始めた。亡霊たちはその光に当たると、まるで霧のように消え去っていく。彼らの憎しみに満ちた姿は、次第に崩れ、闇に飲まれていたその魂が解放されていった。
「カイ、見て!彼らが消えていく…!」
セリアは驚きと喜びの声を上げた。
「お前の光が力を与えてくれてるんだ。さあ、もう一押しだ!」
カイは彼女を奮い立たせるように叫び、さらに力を込めた。
二人の放つ光は一層強まり、死者の行軍を一気に覆い尽くしていった。その光は、ただ単に闇を打ち消すだけでなく、亡霊たちに救いを与えていた。彼らの魂はついに解放され、長い間続いていた行軍も、そこで終わりを迎えた。
「やった…」
セリアは安堵の息を吐き、手を胸に当てた。「やっと終わった…」
亡霊たちがすべて消え去り、戦場には静寂が戻った。闇に覆われていた空も少しずつ明るくなり、再び希望の光が差し込み始めていた。カイとセリアは肩を並べて立ち、ようやく一息つくことができた。
「よくやったな、セリア」
カイは微笑んで彼女を見つめた。「お前の光がなければ、俺一人じゃ倒せなかっただろう」
「ありがとう、カイ。でも…あなたの力があってこそよ」
セリアは少し照れくさそうに答えたが、心の中には確かな達成感があった。
カイは軽く肩をすくめ、「そうかもしれないが、お前の成長を見られて良かったよ」
そう言って、彼は少し疲れた様子で座り込んだ。
「カイ…大丈夫?」
セリアはすぐに彼の側に駆け寄った。「あなたの力…また使いすぎたんじゃない?」
「まあな。これで残りはあと3回だ」
カイは軽く笑いながら答えた。「だが、無事に次の厄災に進めるならそれでいい」
セリアは彼の顔を見つめ、心が強く締め付けられるのを感じた。彼の命が次第に削られていく現実は、彼女にとって耐えがたいものだったが、同時に彼の覚悟がどれだけ強いかも理解していた。
「カイ…あなたの命が残り少ないって知ってても、私はあなたと一緒に戦いたいの」
セリアは静かに言葉を紡いだ。「どれだけ厄災が強くても、あなたと一緒なら勝てるって信じてる」
カイは彼女の言葉に一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに飄々とした笑みを浮かべた。「俺もお前がいるなら、最後まで戦えるさ」
二人はしばらくの間、ただ静かにその場に座り込み、戦いの疲れを癒していた。死者の行軍は終わりを迎えたが、まだ厄災は終わっていない。次にどんな恐怖が待ち受けているのか、二人は既に覚悟を決めていた。
空に浮かぶ星々は再び輝きを取り戻していたが、それでも薄暗い影が遠くに漂っていた。次なる厄災の影――それが何であれ、カイとセリアは共に立ち向かう準備ができていた。
「次は何が来るかわからないけど、私たちなら…絶対に勝てるわ」
セリアは小さく微笑みながら、カイに向かって言った。
「その通りだ、セリア。俺たちは負けない」
カイは力強く答え、再び立ち上がった。
次なる厄災に備え、二人は再び歩き出した。