闇の巨影
暗闇の中から現れたのは、巨大な黒い影。その姿は一瞬にして大地を覆い尽くし、空気が重く圧し掛かるように変わった。闇そのものが形を取ったかのように、影はゆらゆらと揺れながらも、確実にカイとセリアに向かって迫っていた。
「…こんなに大きいなんて…!」
セリアは目を見開き、その圧倒的な大きさに息を呑んだ。影は目に見える形を持っていたが、どこか不定形で、その輪郭は常に揺らいでいる。赤く輝く瞳が、彼女たちを鋭く見据え、闇の奥から冷たい殺意が滲み出ていた。
「これが本体か…こいつは厄介だな」
カイは軽くため息をつきながら、その巨影を見据えた。「だが、倒すしかない」
闇の巨影は一歩ずつ近づいてきた。足元には裂け目が生じ、闇が地面に染み込んでいく。周囲の空気が一気に冷たくなり、まるで世界全体が闇に飲み込まれていくかのような感覚に包まれていた。
「カイ、どうするの?」
セリアはカイの側に立ちながら、緊張した声で問いかけた。「あなたの力はあと4回しか残ってない…こんな相手にどうやって戦うの?」
カイは一瞬だけ考え込んだが、すぐに軽く笑みを浮かべた。「心配するな、セリア。俺の力を温存しながら戦うしかないが、闇ってのは光があれば消えるもんだ」
「光…私たちの中の光?」
セリアはカイの言葉を思い出し、再び自分の内にある力を感じ取ろうとした。
「そうだ。お前の信じる光がある限り、闇には飲まれない」
カイは軽く頷き、少しだけ前に進んだ。「だが、この巨影はただの闇じゃない。厄災の意志を持ってる。だから俺が直接叩く必要がある」
「でも、それをしたらあなたの力が…」
セリアは戸惑いを見せたが、カイは彼女を落ち着かせるように手を挙げた。
「まだ大丈夫だ」
カイは飄々とした調子で答えた。「確かに、残り回数は限られてるが、こういう時に使わなきゃ意味がないだろ?」
その言葉に、セリアは少しだけ安心したが、彼女の中で不安が完全に消えることはなかった。それでも、カイの信頼を感じて、彼女も一歩前に進んだ。
「じゃあ、私も一緒に戦うわ」
セリアは決意を込めて言った。「私が光を信じれば、この闇を打ち破れる…そうでしょ?」
カイは軽く微笑み、「その通りだ。お前が光を信じてくれれば、俺たちは負けない」
闇の巨影は次第に大きくなり、その動きが一気に速まった。地面を割るような轟音と共に、巨影の腕が大きく振り下ろされ、二人を押し潰そうとする。
「来たぞ…!」
カイは鋭い声で言った。
カイはその瞬間、力を解放する準備を整えた。彼の体が微かに光り始め、周囲の闇を一瞬だけ押し返す。セリアはその光景を見て、自分の心の中にも微かな光が灯るのを感じた。恐怖が消え去り、勇気が彼女の胸を満たしていく。
「ラスト・ジャッジメント…!」
カイの声と共に、巨大な闇の腕が一瞬止まり、そのまま崩れ落ちていった。闇の一部が消滅し、周囲の空気が一瞬だけ軽くなった。しかし、それは巨影全体のほんの一部に過ぎなかった。
「少しだけ削れたか」
カイは息を吐きながら呟いた。「だが、これで終わりじゃない。まだ奴の本体は健在だ」
「本当に…大きい相手ね…」
セリアはその巨影の大きさを改めて感じながら、震える手を握りしめた。「でも、私たちなら勝てる…!」
「その意気だ、セリア」
カイは笑みを浮かべた。「お前の信じる光がある限り、俺たちはこの闇に負けない」
闇の巨影は再び動き始めた。その体は一瞬崩れたものの、すぐに再生してさらに巨大になっていた。闇の力が強まるたびに、巨影はますます威圧的な存在感を増していく。
「このままだと、どんどん強くなるわ…」
セリアは焦りを感じながらカイに言った。
「そうだな。だから、今度は俺たちの光で奴を抑え込む」
カイは自信を持って言い放った。「行くぞ、セリア。俺が光を解放するから、お前も自分の力を信じろ」
セリアは深く息を吸い込み、カイの言葉に従って心を落ち着けた。彼女の内にある光――それは単なる魔法の力ではない。自分の信念と使命感、それこそが闇を打ち破る鍵だと信じた。
「私たちの光で…この闇を消し去るのね」
セリアは静かに呟きながら、カイの隣に立った。
二人は再び闇の巨影に立ち向かい、闇がすべてを覆い尽くす前に、その光で世界を取り戻すために戦い始めた。