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終焉の星と八つの厄災  作者: 或真怜央-ARUMA LEO-
第三章:無限の夜の下で
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闇に潜む影

暗闇の中を進むカイとセリア。時間の感覚が次第に薄れていく。闇が深ければ深いほど、前に進んでいるのか、それとも同じ場所を歩いているのかすらわからなくなっていた。しかし、カイは飄々とした態度を崩さず、無言で前を進んでいた。彼の背中はどこか頼りになる存在感を持ち、セリアはそれに力を得て、暗闇を恐れずに進むことができた。


「これほどの闇が世界を覆い尽くすなんて、想像もしなかった…」

セリアは足を止め、闇に包まれた空を見上げながら呟いた。「まるで世界そのものが消え去ろうとしているみたい…」


「厄災ってのは、そういうもんだ」

カイは足を止め、セリアに軽く振り返って言った。「自然の摂理を無視して、俺たちに死と恐怖を見せつける。だから、俺たちが戦うしかないんだ」


「戦うって言っても…あなたの力も限られてる。私たちはこの闇をどうやって打ち破ればいいの?」

セリアは問いかけたが、カイは微笑みながら答えた。


「心配すんな。何度も言ってるだろ、光は俺たちの中にあるってな。闇に負けなきゃいいだけの話だ」


その時、不意に風が吹き、耳元に何か囁くような音が響いた。セリアは一瞬身を竦ませ、周囲を見回したが、何も見えない。ただ、闇が静かに、しかし確実に蠢いているような気配がする。


「カイ、何かいる…!」

セリアは警戒の声を上げた。


「だろうな。厄災はいつもお前の心を狙ってくる」

カイは落ち着いた声で答えたが、その瞳には鋭い光が宿っていた。「この闇は、ただの暗闇じゃない。俺たちの恐怖や迷いを吸収して、力を強めてるんだ」


「じゃあ、私たちが恐れたら…?」

セリアは不安げに尋ねた。


「闇に飲み込まれるってことだ」

カイは静かに言った。「だから、お前の信念が試される時ってことだな」


その言葉が終わると同時に、地面が揺れ始めた。足元から黒い影が次第に浮かび上がり、形を成していく。影は人の形をしていたが、その輪郭はぼやけ、まるで霧のように不確かな存在だった。目は赤く光り、虚ろな表情で二人を見つめていた。


「これが…闇の本体…?」

セリアはその異形の存在に息を呑んだ。


「いや、こいつはただの使いだな。本体はまだ隠れてる」

カイは影を一瞥し、準備を整えるように手を軽く振った。「でも、まずこいつらを片付けないといけないか」


影の群れが次第に増え、二人を取り囲み始めた。その動きは不気味で、まるで生き物のようにゆらゆらと揺れながら近づいてくる。影たちが放つ不気味な囁き声が耳元に響き、次第にセリアの心に不安を植え付けていった。


「カイ…!どうするの…?」

セリアは焦りながら尋ねた。


「落ち着け、セリア。まずはこいつらを片付ける」

カイは軽く笑いながら、影たちに向かって歩き出した。「お前は心の中の光をしっかり保ってろ。あいつらはそれを奪いにくるからな」


セリアは深く息を吸い、目を閉じて自分の心を落ち着けようとした。カイの言葉を信じて、恐怖に負けないように自分を保つ。自分の内にある光――それが何かはまだ完全にはわかっていないが、それを失わなければ、この闇に負けることはないと信じた。


その間にも、カイは影の群れに向かって進み出ていた。彼の動きは飄々としていたが、確実に影たちの中に入り込み、冷静に彼らの動きを見極めていた。


「ほら、来いよ。俺はまだ元気だぜ」

カイは笑いながら、軽く指を鳴らした。


その瞬間、彼の体から放たれた光が影たちを一瞬で包み込み、影の存在がかき消されていく。影たちは呻き声を上げ、次々に消滅していった。カイの圧倒的な力に、影たちは抗うことすらできなかった。


「ふん、こんなもんか」

カイは軽く息を吐き、残りの影たちを見渡した。「本体はまだ隠れてるな。こいつらは囮みたいなもんだ」


「囮…?」

セリアは眉をひそめた。「じゃあ、どこにいるの?本当の厄災は…」


その時、地面が再び激しく揺れ、空気が一気に冷たくなった。暗闇の中から、何か巨大な気配が感じられた。影の群れが消え去った場所から、今度は何か大きな存在が姿を現そうとしていた。


「来るぞ…」

カイは鋭い目つきで暗闇の中を見据えた。「本体が動き出す。ここが本番だ」


セリアは息を整え、覚悟を決めた。これが、無限の夜を生んだ本当の厄災。ここで闇に飲まれるわけにはいかない。彼女は自分の内にある光を信じ、カイと共にこの戦いに挑む決意を新たにした。


暗闇の中、次なる厄災との戦いが始まろうとしていた。

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