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終焉の星と八つの厄災  作者: 或真怜央-ARUMA LEO-
第三章:無限の夜の下で
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無限の夜

カイとセリアが王都へ戻る途中、空には何も星が見えなくなっていた。まるで、星々がその光を放つことを拒んでいるかのように、暗い黒雲が空を覆い尽くし、夜が永遠に続くような不吉な静寂が辺りに広がっていた。


「…星が一つも見えない…」

セリアは不安げに空を見上げた。


「無限の夜か」

カイは淡々と呟いた。「次の厄災が来たみたいだな」


暗黒の空が世界を覆い、太陽は昇ることなく、月も姿を消した。その代わりに、無数の黒雲が渦を巻き、空気は冷たく重く沈んでいた。光が失われた世界では、ただ暗闇だけが支配していた。


「カイ、これが次の厄災…?」

セリアの声には明らかな恐怖が滲んでいた。「太陽が…昇らないなんて…」


「無限の夜、その名の通りだ」

カイは冷静に答えながら、前方を見据えていた。「このままだと、世界は永遠の闇に包まれるってことだな。厄介だが、なんとかするしかない」


闇の中、二人は慎重に足を進めていた。地面も、空気も、すべてが静まり返っているようで、まるで生きている世界そのものが息を潜めているかのようだった。周囲には何も見えないが、二人はその暗黒の中に潜む何かの存在を感じ取っていた。


「この暗闇…何かが私たちを見ている気がする」

セリアは小さな声で言った。


「そうだな」

カイは同意し、注意深く耳を澄ませた。「厄災ってのは、ただの自然現象じゃない。俺たちの恐怖や不安に反応して力を強めることもある。今は闇そのものが俺たちを試してるようなものだ」


「試してる…?」

セリアは驚きの声を上げた。


カイは頷き、「この無限の夜は、闇に飲み込まれた者を取り込む。俺たちが光を信じなければ、闇が世界を完全に支配するだろう」


その言葉に、セリアの中で何かが反応した。闇が支配するこの世界で、彼女は光を見出さなければならないという使命感が強まっていった。


「私たちが信じるべき光…それは、どこにあるの?」

セリアはカイに問いかけた。


カイはしばらく黙っていたが、やがて少し微笑んだ。「光は、俺たちの中にある。お前が信じるもの、俺が守るもの。光ってのは外にあるもんじゃなく、内にあるものだ」


その言葉は、セリアにとって一瞬理解し難いものだったが、同時に深く心に響いた。闇がどれだけ深くとも、自分たちの内に光を見出すことができれば、この無限の夜に勝てるかもしれない――そう思えるようになってきた。


「でも、どうやってこの闇を打ち破るの?」

セリアは再び問いかけた。「あなたの力も有限だし、これだけの闇を…」


「俺の力は残り4回だ。確かに、無限の夜を一撃で消し去ることはできないかもしれない」

カイは飄々とした態度を崩さずに答えた。「だけど、ここで重要なのはお前の力だ。お前がこの闇を信じず、光を信じる限り、俺たちは負けない」


「私の力…?」

セリアは自分の胸に手を当て、少し戸惑った。


「お前はただの貴族の娘じゃない。お前には人々を導く力がある」

カイは軽く微笑んで言った。「この闇に飲み込まれるかどうかは、お前が決めることだ」


その時、セリアはカイの言葉の意味を少しずつ理解し始めた。彼女は王国の令嬢として育ち、人々を救いたいと願い続けてきた。しかし、それは単に王族としての義務ではなく、彼女自身が持つ内なる光であり、使命だった。闇に支配されないためには、自分自身の信念を貫くことが重要だと感じた。


「私が…光を信じる限り、闇に負けない…」

セリアは自分に言い聞かせるように呟いた。


「そうだ。その光を忘れるなよ」

カイは軽く彼女の肩を叩き、前方を指差した。「ほら、行くぞ。闇の中に潜む本体を見つけなきゃならない」


二人は再び歩き出した。闇は依然として深く、先が見えないままだが、セリアの心には小さな希望の灯が灯り始めていた。それはカイが言う通り、彼女自身の内にある光。それを失わない限り、無限の夜を打ち破ることができると信じていた。


「カイ、ありがとう」

セリアは小さく呟いた。「あなたがいてくれて…本当に良かった」


カイは笑みを浮かべ、「俺もお前がいて助かってるさ。さあ、行こう。まだ夜は明けないが、俺たちが動けば、きっと夜は終わる」


その言葉に、セリアは再び勇気を取り戻し、カイの背中を追って進んだ。闇の奥に潜む厄災の本体――それを見つけ出し、打ち破るために。

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