Ⅰ【ⅸ】編入2日目、監督生に呼び出される。
1日ぶりです!飽き性。です!
テスト1週間前なので、これからの更新が不定期になるかもですッ(_ _;)
前回のあらすじ( 'ω'o[ 食堂で生徒に囲まれたルーカス!始業まであと5分!? ]o
それでは〜!いってらっしゃい!✨
「始業のチャイムまで、残り5分ですけど。」
…へっ?
質問攻めにされて目を回していた時に、唐突に現実味のある言葉が降りかかる。
慌てて時計を見上げると、時刻は既に予鈴の時を迎えていた。
えいやいつの間に!?もうそんなにやいやいしてたの!?早めに部屋から出たからまだ時間あると思ったんだけど!?
俺の思いも虚しく、秒針は休むことなく動いていく。
俺を囲んでいた生徒達が黙り込み、食堂にまた静寂が訪れた。
エヴァさんは小さく欠伸をして扉にもたれかかる。
「…新学期早々ほとんど全員が遅刻とは笑えますね。」
そんなセリフを言いながらも、表情はしっかり笑ってない。
直後、ほとんど全員と言っていいぐらいの数の生徒が、大慌てで動き出した。
「やばー!授業遅れるー!!」
「え待って1時間目何だっけ!?」
「それよりHR!教室棟まで走って5分で間に合うかな!?」
「50メートル走5秒を舐めんじゃねー!!」
再び騒がしくなった食堂。
やっと人だかりから開放された俺は、安堵のため息を付く。
…てかさっき誰か50メートル走5秒って言わなかった?速すぎない?まぁいっか。
それよりアイク達どこだろ。人多すぎて見失っちゃったや。感知魔法でも使えたらいいんだろうけど、生憎俺はそういう属性じゃないからなぁ。
きょろきょろと辺りを見渡していると、後ろから不意に肩を叩かれた。
「ひゃいっ!?」
驚きすぎて、思わず声は裏返るわーしっかり噛むわ。
舌を噛んだ痛みに涙目になりながらも振り返ると、いつの間に俺の後ろに来ていたのか、そこには監督生のエヴァさんが。
どうやってこの人ここまでこれたの!?全盲じゃなかったっけ!?
「…ちょっと良いですか?あぁ、HRには間に合わせますから大丈夫です。」
噛んだことをすんごいスルーされた。
いやレイラさんみたいに笑われ続けられるのも何だけどさ、スルーされるのもあれだよね。ちょっと傷付くよね。
口を押さえたままこくこく頷くと、エヴァさんは小さく口を開く。
「メイソン男爵令息と昨日やり合ったって聞いて。」
「…め、メイソン男爵令息??」
メイソンって誰だ?でもやり合ったってことは、多分昨日の不良さんだよね。
男爵令息…男爵…って事は爵位ある人じゃん!!俺無爵位だったよね。
待って俺自分より上の地位の人ボコしちゃったの!?正確にはボコされてたのを助けたってことだけどそんな変わんないよね!?
これってかなり不味いんじゃ…。
独り焦っていると、視界の端に見慣れたシルエットが映り込んだ。
「ああルカ、そこは心配しなくていいよ。アンタ一応グラース家の養子だから。」
だからレイラさん内心読まないでって!!そしていつから俺の横にいたの!!
レイラさんの内心読みパレードが凄すぎて、もはや氷属性以前の問題になってる。それ何属性になるのねえ。常人の成せる技じゃなくない?
いや、ちょっと待って。グラース家の養子ってことは…。
「あれ、もしかしてご存知なかったんですか?ルーカス・ベネット・アドッティヴォ・グラースさん?」
ルー…へ?何て??
「ルーカス・ベネット・アドッティヴォ・グラース。アンタの本名。」
いや初耳ですが!?長すぎ!!
ルーカス・ベネット以降が全く聞き取れん!!あ、最後のグラースは分かった!!
どゆことどゆこと?!俺はただのルーカス・ベネットだったはず…。
「…ルーカス・ベネット、グラース家の養子。」
レイラさん、説明していただいたところ申し訳ないけど、全く分からない。
引き取られてたことは勿論知ってたけど、養子は聞いてない。
あと名前長すぎ(2回目)。何あどってぃゔぉって。
動揺する俺を一瞥すると、レイラさんは幼子にそうするように俺の頭を撫でた。
「まあまあ。手続きが手間取って昨晩やっと決まったことだから。次から爵位聞かれたら、胸張って本名言ってやりな。」
長すぎて本人も覚えれませんが?ルーカスベネットあど…ふえっ?ってなるよ絶対。
そもそもそんなの聞いてて眠くなっちゃうね。別に嫌なわけじゃないけど、嫌なわけじゃないけどびっくりがまだ消えなくて心の整理が出来てない。
未だ初歩的な心配をしている俺に、エヴァさんが小さく咳払いをした。
「…本来なら、校内における無断での魔法戦は禁止されている故、厳重な注意をしなければなりません。」
ですよねー!!薄々そんな気はしてた!!
だばっと滝の涙を流す俺をよそに、彼女は言葉を続ける。
「……なのですが、今回に限っては色々報告もありましたし、非があるのはメイソン男爵令息です。よって今回はお咎めなし。」
はへっ?何か思ってたんとちゃう…。
もうちょっとガツンと怒られるかと思ってた。だって昨晩俺の爵位が決まったなら、あの不良とやり合ってた時は無爵位だったんでしょ?地位的に怒られるかと思ってたや。
そしてエヴァさんの口元が、小さく緩んだ。
「………よく助けました。」
さっきの厳しい声色や佇まいから一転して、不意にそんな言葉が紡がれる。
そう言ってくれた声と表情に、俺は何か既視感を感じて、思わず目を見開いて固まった。
『…よく…ま…た。も…大…夫……よ。』
頭の中に、エヴァさんの声に共鳴するように、懐かしい声が響く。
でも記憶もあやふやで、何って言ってるかさっぱり。頭が痛い。最近思い出しそうで思い出せない、こういうの多すぎて萎えちゃう…。
いつ、どこで会ったかとかは分かんない。顔は覚えていないけど、確か白いローブを来て、フードを目深に被ってたはず。
頭痛に顔をしかめる俺に、エヴァさんもレイラさんも特に気付いた様子もなく、そのまま会話が進んでいく。
「さ、レイラさんは自分で教室棟まで帰れるとして。」
「ふざけんな後2分だよ。」
「貴女なら行けるでしょう?」
「…変に信頼してくれてどうも。」
始業のチャイムまで2分ってま?
時間経つの早すぎて、気付いたら俺もう卒業してそう。そこまではいってないか。
それにしても、エヴァさんとレイラさん仲が良いのかな。話を聞いてる限りお互い信頼し合ってる雰囲気はする。
いやいくらレイラさんと言っても、2分で教室棟まで行くのは無理なんじゃ…。
「じゃあエヴァ、ルカを頼んだ。」
「…考えときますね。」
「はいはい。」
レイラさんが苦笑いしながら軽く腕を振るう。途端に空気中の魔法の粒子が碧く輝き、レイラさんに集中する。
「…凍れ。」
詠唱あり…?どれだけの規模なんだろう。
4階から1階までという、馬鹿でかい規模の氷の滑り台を作った時でさえ無詠唱だったのに。
密かに心の中で考えていた、その直後のことだった。
――キーン!
高い高音が響き渡り、びっくりして思わず目を瞑ってしまった。辺りに冷気が立ち込め、かんなり肌寒く感じる。
そういえばレイラさんの魔力値ってどれぐらいなんだろ。70は確実で90以上…下手したら100ぐらいあるのかな。
恐る恐る目を開くと、視界に飛び込んできたのは、氷、氷、氷。
廊下も窓も全部、澄んだ碧色の氷で凍てついていた。
「びびってやーんの。」
ちょっレイラさんそんなこと言わないで!?
足元氷だからめっちゃ滑りやすくて今必死にバランス取ってるところなの!!
これすんごいスピードで滑ってったら、そりゃ教室棟まで1分足らずで行けますわ。どうせ階段も手すり滑ってくんでしょ?氷属性の特権だねこりゃ。
「…これどこまで凍らせたんですか?流石に全部は凍ってませんよね??」
エヴァさんが顔を引き攣らせながらそう言った。ほんと下手したら全部凍ってそう…。
でもレイラさんは特に気にしてない様子で、大きく背伸びをしてみせる。
「さぁ?テキトーにやったから分かんね。でもまあ監督生の許可取ってるし大丈夫でしょ。」
「…あーなーたーねーえー、そこまでやれとは、」
「はいはいそれじゃ。」
ぶわっと強い風が吹き抜けたと思うと、レイラさんの姿はもうここにはなかった。
いや滑るスピードが想像の倍速くてもう笑っちゃうね。もはや滑るという概念を超過してるよ。
俺もうさっきからツッコミしかしてないから、ルーカス・ベネット・なんちゃら・グラースからルーカス・ベネット・なんちゃら・ツッコミマンにしようかな。それでもいい気がしてきた。うん。
変な想像をうんうんと考えていると、不意に横抱きにされた。
「…ふえっ?」
「さ、行きますよ。貴方じゃあ私のスピードについてこれませんでしょうし。」
「ちょっちょっと待ってください、分かりますけど流石にこれは…。」
「喋ってると舌噛みますからね。」
「…ひょえぇぇ…。」
はしっ走るのかな?えでもどんなスピード?
そう思った、その直後。
――ブワッ
強い風が吹き抜け、思わず目を閉じる。
耳元で風が轟々となり、恐らくエヴァさんが地面を蹴る音以外は何も聞こえない。
え、何事!?めっちゃ怖いんだけど!?風が刺さる!!ちべたい!!!
恐る恐る目を開いた。
目に飛び込んできたのは、とんでもないスピードで後ろに流れていく風景。
エヴァさんは汗1つかかずに屋根から屋根に走り移り、あっという間に俺の教室の扉の前に辿り着いた。
残り、30秒。
えっっっっっっっっっっっっ(中略)っっっっっっっっっっっぐ。
体術が強いってのは聞いてたけど、このスピード出せるのはさてはエヴァさん人外なんじゃ…。
俺の心配を他所に、エヴァさんは俺を下ろすと何でも無い顔で口を開いた。
「はい、間に合いましたよ。」
「…………ぇえっと、ありがとう、ござい………ました、?」
何て言えばいいのこれ。
もう驚きすぎて腰が抜けそうだったんだけど。ギリ抜けなかった俺偉い。レイラさんと1週間鍛えた成果出てる。
俺がお礼をいうと、エヴァさんは軽く頭を下げて。
瞬きしたその直後には、もうその姿はなかった。
「風みたいな人だなぁ…。」
そう呟き、扉を開く。
1時間目なんだろ。座学だとありがたいな。朝から色々ありすぎて疲れちゃったし。
そんな儚い希望は、俺が黒板を見遣った次の瞬間に終わるのでした。
『―――1時間目 実践授業』
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
良ければ…!モチベになりますので、ブクマ感想等いただけたら嬉しいです!!✨
次回はテスト明けなので間が空きますがお楽しみに〜!!
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> 次回予告【6/23更新予定】 <
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