Ⅰ【ⅳ】……………こんの、天然人誑し。
1日ぶりです!(!?)飽き性。です!!
作品を読んでくださってありがとうございます!少しでも好きになっていただけたら嬉しいです(๑•̀ㅂ•́)و✧
それでは〜!いってらっしゃい!✨
とうとう来てしまった始業式の日。
この一週間は今までと比べ物にならないほど忙しかった。
まずレイラさんが普段いる屋敷に行って、男性の使用人さんに風呂にぶっこまれて。
あ、しゃんぷー?っていうのが目に入って痛かったです。
その後制服屋さんみたいなとこに行きーの採寸してもらって。
羽ペンとか魔導書とかよく分からないものを大量に買って。
んで滑舌を徹底的にしばかれて、一般教養を叩き込まれて。
そうそう。
今日レイラさんから渡されて胸につけたブローチは、綺麗な漆黒に染まった。
大体皆目の色とブローチの色で属性が分かるんだけど、俺目は赤なのに闇属性だからパっと見炎属性って思われそうなんだよね。
今は丁度学校に着いて、クラスの担任の先生にご挨拶してるところ。
編入手続きからクラスの手配まで、全部レイラさんが1人で済ませてくれたんだ。
俺も出来れば手伝いたかったけど分かんないことだらけだし、逆に邪魔になっちゃ駄目だから。
「クロッグ先生、こちらが編入生のルーカス・ベネットです。まだまだ至らぬところがある故、どうぞご贔屓に。」
レイラさんは、実家の屋敷にいた時の投げやりな言葉からは想像もできないぐらい(失礼)丁寧な態度で先生と思わしき若い女性に頭を下げる。
彼女は値踏みするように俺を頭のてっぺんから足の爪先までをジロジロ見ていたけど、すぐに目を背けて何も言わなかった。
「ルカ、挨拶。」
ふおっ!?
いやまあそうだよね自分で挨拶しないとだよね!?
レイラさんにいきなりそう言われて、慌てて背筋を伸ばす。
「えっと…今学期からお世話になります、ルーカス・ベネットです。どうぞよろしくお願いします。」
こういう時って笑顔でいるのか頭下げるのかどっちが良いのかな?
でもさっきレイラさんぺこってしてたから、俺は笑ったほうが良い…気がする。勘。
出来るだけ精一杯の笑みを浮かべて言葉を締めた。
…んだけど。
若い先生は何故か俺の表情を見るや否や急に後ろを向いてしまうし、レイラさんに至っては顔に手を当てて何か呟いている。聞こえないけど絶対何か言ってる。多分褒め言葉じゃない。
え〜〜〜〜〜〜これお辞儀したほうが良かったやつ?
俺選択肢間違えちゃったの2分の1を??
おどおどしていると、少し経って先生はやっとこっちに向き直ってくれた。
けど、さっきよりちょっと違和感を感じる。
えーっと…あれ?何か顔赤くない?もしかして体調悪いのかな?熱とか?最近はやってるらしいし…。
ちょっと悩んだ結果、俺は意を決して口を開いた。
「…あの、クロッグ先生。顔色が良くないようですので、今日はお休みになられた方が…。」
言葉を濁したその直後、頭に衝撃。
「いたっ!?」
「その辺にしときなルカ。この天然め。一旦鏡で自分を見て出直してこい。」
無情にもレイラさんの拳骨を食らってしまい、思わず涙目になる。
正直言って、痛い。あと冷たい。
いや鏡で自分を見て出直してこいって何なの!朝、服装とか身だしなみとかいやというほどチェックされたから大丈夫なはずなんだけど!?
痛む頭を擦っていると、先生が咳払いをして口を開いた。
「グラース伯爵令嬢、ここまでご苦労様でした。ではベネット、教室に案内するので着いてくるように。」
「…お先に失礼します。」
短く一礼してこちらに背を向けてしまうレイラさん。
あ待って、お礼言ってない。でも俺の声量じゃ聞こえないかもしれないし…。
迷った挙げ句、控えめに踏み出してレイラさんの制服の裾を掴んで引き止めた。
それに驚いたらしく、小さく振り返ってくれた彼女と視線がかち合う。
「…レイラさん、連れてきてくれて、ありがとう。」
笑顔を忘れずにお礼を言った。
お礼を言うことは大事だって、孤児院が同じだった友達が話してくれたから、俺はお礼だけは欠かしたくなかった。思ってはいても、感謝の気持を伝えないと相手には伝わらないから。
レイラさんは素早く前を向いてしまうと、数秒その場でぷるぷる震えていた。
…えっ?これ俺また間違った?ペコリってしたほうが良かったのかな!?
その後何故か乱暴に袖を引き剥がされて、こっちを向いてくれないまま。
「……………こんの、天然人誑し。」
って、言い放たれた。
「…ほへっ?」
思わず自分でも奇妙な驚き声が出てしまって慌てて口を手で覆う。
レイラさんはさっそうと廊下の向こうに姿を消してしまった。
え、てんねんひとたらし?って何!?どゆ意味!?誰か教えて!!!
天然は自然ってことでしょ、人は人でしょ、たらし…!?人がだらーんって垂れてる…??
あっつまり、ふにゃふにゃしてないでしゃんとしろってことか!!理解した!!
本日何回目かの先生の咳払いで、慌てて姿勢を正す。
「もういいですか、行きますよ。」
「…はい。」
レイラさんと離れるのはちょっと不安だけど、学年が違うから仕方ない。
そういえば一週間前に初めて会った、クラーク家の…そうだ、ミラとノア君も同じ学年って言ってたっけ。
ミラさ…ん”ん”っ、ミラとクラスは一緒らしいくて嬉しいんだけど、ノア君はちょっと怖い。
だって初手から嫌われてたもん…。悲しみ。
先生の後ろを暫く着いてって、ある立派な扉の前で立ち止まった。
扉には”Grade Ⅰ-ⅰ”と金の文字が施されている。1年1組っていったとこかな。
「今日から貴方が通うクラスです。私が呼ぶまで廊下で待っていなさい。」
先生はそう俺に告げると、ドアを開けて教室に入っていってしまった。
1人誰もいない廊下に残される。
「(…どうしよう、正直凄く緊張する。)」
孤児院でも人と関わるのは苦手だった。どうしても目と容姿を怖がられて避けられてたから。
屋敷で監禁されて大人が怖くなった。急に来て殴ったり蹴ったり切りつけたりしてくるから。
子供でも大人でもない、今年15歳の同い年の人達にどう思われるかが分かんない。
それが不安で、事前にレイラさんに相談したんだけど、なんて言われたと思う!?
『笑顔でいりゃ何とかなる。』
俺それでさっき「こんの、天然人誑し」って言われたばっかりなんだけど!?
笑顔でしゃんとしろとは!?
「ベネット、入りなさい。」
急に中から声をかけられて、慌てて姿勢を正した。
恐る恐る扉を引いて、教室に一歩踏み入る。結構な数の視線が自分に集中している…気がする。
こんな多くの人目にさらされるのは初めてで、緊張で口の中が乾いてくる。
先生に手招きされて教団の横に立った。
後ろの方の列に、見知った顔があってちょっと安心し、その横にちょっと苦手意識のある人がいたから結局プラスマイナスゼロだね。
ミラとノア君。
一週間ぶりで服装も制服に変わってたけど、ふたりとも目立つ容姿をしていたからすぐに分かった。
「こちら今学期より編入してきたルーカス・ベネットです。…挨拶を。」
予想していた振りに、予め用意していた言葉を頭の中で手繰り寄せる。
「えっと、ルーカス・ベネットです。この学園には来たばっかりなので、迷子になってた時は声掛けてくれると嬉しいです。これからよろしくお願いします。」
笑顔で自己紹介をしつつ、最後にお辞儀をした。
よし、大丈夫噛まなかった。偉い俺。
「ベネットに質問がある者はいますか。」
質問コーナー!?えっ孤児院であったけど俗に言う小学生の編入生かな!?
予想外の展開に思わずおどおどしていると、廊下側の一番奥の席に座っているいかにもヤンチャそうな男子生徒が手を上げた。
やだ質問しないで怖い!!
「しつもーん。爵位は何処ですかー。」
しゃくい…?
って何??
でも、その言葉で教室にざわめきが広がった。
ん何で?そもそも爵位って何?
そういえばついさっきそんな言葉を聞いていたような…。
『グラース伯爵令嬢、ここまでご苦労様でした。』
あー!!そういや挨拶の時に先生がレイラさんに言ってた!!
いやレイラさんは伯爵令嬢だけど多分俺にそんなステータスないよね!?
ここで無爵位ですって答えなきゃいけないの地味に恥ずかしいんですが…。
色んな意味で冷や汗を流していると、急に視界の端で誰かが元気に手を上げた。
「質問です!ルカの好きな食べ物はなんですか!!」
おう、流石クラーク家のご令嬢。他の人の言葉を堂々と遮っていらっしゃる。
でも多分これ俺を庇ってくれたんだよね、申し訳ない。
この言葉でクラスの雰囲気がどうなったかと言うと、明らかに和みました。
誰もミラを咎める様子はなく、むしろ仲の良さそうな女子生徒の何人かがミラと笑いながらアイコンタクトをとってる。
ミラの家の爵位もあるだろうし、あとは単に人がいいからなんだろうな。
癒やしっていうか、ほわーんってしてるから友達も多そう。偏見だけど。
ってか好きな食べ物!?待って思いつけ俺!!
孤児院時代の食べ物は殆ど覚えてなくて、屋敷の監禁生活も殆ど食べ物貰えてなかったんだけど、レイラさんがここ1週間で色々食べさせてくれたから…。
何だっけあの冷たい氷菓子。えーっと…。あ、そう。
「…ジェラートが好き、かな。」
数日前に、召使いさんが夕食の時に出してくれたやつ。
冷たいけど甘くて凄く美味しかったから覚えてる。レイラさんが熱いもの好きじゃないから冷たい系のご飯が多かったんだよね。
「ジェラート!俺も好き〜!!」
ミラがにこにこと相槌を打ってくれて、これで質問ターンは終了。
俺は、ミラさんの1つ後ろの空いている席に座るよう促された。
…因みに横はノア君です。仲良くしようよねえ。
* * *
―キーンコーンカーンコーン…
終業を告げるチャイムが校舎内に木霊する。
初日の授業はこれで終わり、かな。
授業言っていっても、何か新学期お決まりの色々があって殆ど授業らしい授業はなかったけど。
明日から本格的に授業が始まるらしく、帰りのHRでは忘れ物をしないようにと念を押された。
あっ因みにこのネオノスタルジー学園は全寮制で、男女別々の4人寮になってるらしい。
確かー俺は509号室だったはず。ルームメイトはまだ分かんない。
編入時の荷物を運び込んでくれたのはレイラさんのお手伝いさんだったからなあ。後でお礼言っとこう。
取り敢えず部屋に行って挨拶するか。変な人じゃないといいけど…。
そう思って席を立った、その時。
「よおベネット。ちょっと着いてこいよ。」
聞き覚えのある声と両肩に重みを感じて顔を上げた。
あ、この人あれだ、俺の爵位を聞いてきたヤンチャさんだ。目が赤いから炎属性かな。
いや絶対これ行ったら駄目なやつじゃんーでも行かなきゃ殺されるやつじゃんー詰みかな??
クラスメイトは俺を遠巻きに見ているだけで何も言わない。
ミラはお友達とどっか行っちゃったしノア君も先生のとこ行っちゃったしで1人でどうにかしないと。
「…えっとごめん、俺これから寮行かなきゃいけなくて。」
「おいおい、ちょぉ〜っとぐらい良いだろ〜?」
面倒くさいタイプですこれ。知ってはいたけど。
ここで”魅惑の瞳”で精神干渉してもいいけど、それでクラスメイトに怖がられるのは嫌だな。
大人しく行くかー。危なくなったら使えばいいし。
―――その選択が、致命的な間違いだったことを。
この時の俺はまだ知らなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました〜!次回もお楽しみに✨
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> 次回予告【5/26更新予定】 <
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( 'ω'o[ 不良について行ってしまったルーカス!そこで彼が見た光景とは…!?衝撃の5話!! ]o