Ⅰ【ⅲ】え、新学期来週からってまじっすか
お久しぶりですっ!飽き性。です!!
執筆初心者で拙いことばかりとは思いますが、温かい目で読んでいただけてたら嬉しいです(๑•̀ㅂ•́)و✧
それでは〜!いってらっしゃい!✨
この人は強い。
彼女が氷剣でドアを破壊した時からずっと肌で感じていた。
俺が危ないって思って突き飛ばしたときも、受け身を取る以前に空中で動きを取って着地してたし、いつの間にか屋敷の主人の男の人は氷漬けになってた。
急にこの人が来て、誰かも分かんなくて、それはもうびっくりしたんだけど。
『おいで。』
そう言われた時、驚きすぎて最初俺は言葉の意味を理解できなかった。
俺を繋いでいた鎖を破壊し、自由にして。強気な少女―…えっと名前は確か、レイラ・グラースさん。
彼女は何もできない俺に、手を差し伸べてくれた。
でも、おいでって。どういうことだろう。
分かんなかった。
だって俺を連れて行ったってこの人に多分メリットなんてものはないから。
むしろデメリットしかないと思った。
分かんなかったけど、ずっとここで痛い思いをするぐらいなら。名前しか知らない彼女についていくほうが何倍もマシだと思えたから、差し出された手を取った。
お礼の言葉は噛み噛みで聞くにも忍びなかったけど、怒られなかったから安心した。逆に大笑いされて、なんだか恥ずかしくなって俯いた。
…それで、今に至ります。因みにレイラさん、今も笑ってる。
ねえ、それは笑い過ぎじゃない?酷くない!?
「ふふっ、はー…うん、嫌いじゃない。」
レイラさんはそう言うと、俺を引っ張って立たせた。力は強いけど、気遣ってくれてるのか体が軋むことはない。
ようやく落ち着いてくれた…みたい。いや笑い過ぎだよ…。第一声で盛大に噛んだ俺の気持ちよ。
「じゃ行こっか。」
そう言って彼女は、さも至極当然のように、突き当たりにある大きな窓に足をかけた。
…ん?
……窓??
「まっ……ぇ…?」
思わず痛む喉から言葉が出る。
いや嘘でしょ。窓て。ここ4階だよ?無理だよ?スパ●ダーマンじゃあるまいし??
あとこの子15,6歳ぐらいだよね。流石にその年の少女が窓から飛び降りて着地できるわけ…。
「何?行くよ。」
よいしょと呟きながら軽々と枠の上に立ち上がったレイラさん。
軽くその右腕が持ち上げられる。
…と。
辺り一面に冷気が立ち込め始めた。碧い氷の粒子が室内を照らす。
魔法の発動を受けて、空気中の魔力が発動主に集中する現象で、暗い室内が一気に幻想的な空間になる。
綺麗だけどね?凄く綺麗なんだけど。
うん寒い!!いやこの子氷属性なのは知ってたけどこんなに寒くなるんだ!?
でもやっぱりこれほど寒くなるってことは彼女の魔力値は確実に70以上かな…。
初手で感じたもので間違ってない。かなりの実力者。
「流石に君を4階から飛び降りさせるわけにはいかないって。ほらこっちおいで。」
恐る恐る窓に近づいてみる。
窓の下は、すべり台のように氷の台が、緩やかなカーブを描いて地面まで降りていた。
どうやら今は夜らしい。何年ぶりかに見る月は、見事な満月だった。
久しぶりに部屋から出て、久しぶりに時間というのを実感する。
うん、というよりもね。
今まで時間なんて感じる余裕さえなかった俺に失笑してしまう。
仕方ないっちゃあ仕方ないんだけど。
レイラさんは先行っとくよとだけ声をかけて立ち滑りしてってしまった。
…滑り台は座って滑るものですレイラさん?
仕方なく窓に足をかける。
こわいなー。やだなー。飛び降りるよりマシだけど滑るのもこわいなー。
当然だけど、俺の意識は前に向いていた。
だから後ろに全く集中してなかった。
―ゾワッ
本能的に寒気が背中を這い上がる。
咄嗟に振り返ったその直後、後ろから見えない何かに吹き飛ばされ、俺の体は宙に飛んだ。
「(…風属性の攻撃…!)」
この屋敷にはありとあらゆるところに召使いや使用人がいる。
風属性の祝福者がいてもおかしくはない。
さあてどうしよう。
受け身取れずこのまま落下したら最悪お陀仏。
受け身取ったとてこの体じゃあもたない可能性のほうが高い。
レイラさんに頼むとて彼女は氷属性だから多分無理。氷硬いからごっつんってなっちゃう。
俺?闇属性と光属性の目で何が出来るって言うのよ?
…えこれ詰んだくね?打開策ゼロでは??
いや流石に3話目で死ぬとか笑えないって落ち着け俺!!!
かくいう闇属性でも、何か出来ることはあるはずなんだよな。
落下地点に闇をクッションみたいに敷き詰めてみる?
絶対溺れる。自分の能力に溺れて死ぬとか絶対嫌。
落下地点の地面を消す?
いや流石に人様の庭にクレーターあけるわけにはいかないっしょ。
そう考えている間にも地面との距離はどんどん縮まっていく。
「(無理だ。間に合わない。)」
せめてもの情けで受け身を取ろうと体制を整える。
…その次の瞬間だった。
「―っ、危ない!」
どこからか聞こえた甲高い悲鳴。
俺の周りに急速に白い光の粒子が集まり始めた。さっきと同じ、空気中の魔力が集中する現象。
んぇ?ほわいと??
属性によって、勿論だけど魔力の光の色は違う。
水属性は淡い水色、氷属性は青色、炎属性は赤色、とかね。因みに俺は漆黒です。
白って確か…。
そんなこんなで、俺の体はさっきの様子からは考えられない程ゆっくりと降下し、難なく着地した。
「だっ大丈夫!?」
「ちょ、ミラ…!」
たたたとこちらに近づいてくる知らない人影が2人。
2人とも俺と同い年かそれより下ぐらいで、雰囲気がよく似てるからもしかしたら双子かも。
レイラさんは、2人を見ると意外そうな表情を見せた。
「あれ、ミラとノア。どったのこんな時間に。」
「こんばんはレイラ先輩!」
「…ミラが、急に散歩に行きたいってわがまま言い出したから。」
「えへへ〜」
知り合い、なのかな?
どうしよう、お礼…いや話に割り込んだら悪いし…。
よし、背景になろう。
そう心に決めた直後、いきなり女の子の方に抱きつかれた。
「おわっ」
思わず体重が斜めって後ろにたたらを踏む。けど彼女は特によろめいた俺には気づかなかったようで、まだ腕を離してくれない。
「大丈夫?上から落ちてたけど…。あっ俺ミラ・クラークって言います!よろしくねっ!」
情報量が多いな?!元気な子なことで…。
えっと、ミラさんね。片目に綺麗な星がある…。ん?クラーク…??
「あー…。そいつあのクラーク家であってるよ。」
えちょっ、レイラさん内心読まないで!?
この国の歴史とともに続く光属性の超超超超名家、クラーク家。
孤児院時代で幾度となく耳にしてたから流石に知ってる。てかこの国でその家の名前を知らない人はまずいないんじゃないかな。
…んで?
そんなエリート家のご令嬢に抱きつかれてるわけですけど?これどないするのが正解なんどす??誰か教えて下さいまし???
慌てふためく俺に小さくため息をついて、レイラさんは口を開いた。
「こらミラー。そいつパニクってるでしょ離れなさい。」
「や〜っ!」
えこれ俺も自己紹介するべきだよね。
流石に不敬罪で首と胴体が亡き別れにならないよね大丈夫だよね??
「んっと…、ルーカス・ベネットです、よろしく、ね?」
舌回った!偉い俺!!今回は噛まなかったよ流石にね!?
ミラさんは俺の顔をじーっと眺めると、その幼さが残るあどけない顔に、ふにゃりとした笑みを浮かべた。
「ふへ、ルカね!」
呼び捨て頂きました〜あ国家反逆罪で死刑執行ですね〜。
…いやどういう展開。
孤児院育ちで貴族の屋敷に監禁されてた俺が、屋敷のご令嬢に救い出されてさらに超有名人に抱きつかれてるんだけど、こはいかに??
すると、ずっと黙ってミラさんを見守っていた…えっと確か、ノア君?が不機嫌そうに口を開いた。
「…ミラ、帰ろ。皆遅いから心配してるって。」
「い〜や〜!もうちょっとだけ!」
「……もうっ」
心配してるのは早く帰ったほうが良いんじゃ…。
あっそうだ。お礼。助けてもらったお礼言うの忘れてた。
「あ、えっと、ミラ、さん。」
「ミラでいいよ?」
きっっっっっっっっっっっっっつ。
いや勿論ミラさんがきついんじゃなくて、俺の精神的に持たないってこと。
まあ首は飛ばないだろうし大丈夫か。
「…じゃあ、ミラ。助けてくれて、ありが、とう。」
たどたどしいお礼の言葉。
レイラさんの時の惨状よりマシとはいえ、早く喉回復してくれませんかねぇ??
頭はもう普段通りに回るのに、喉と舌だけ言うことを聞いてくれない。
ただ、ミラさんは俺の言葉に何故かきょとんとした後、また明るく笑った。
「俺じゃないよー、守ってくれたのはノア!ねっ!」
「……うん。」
でも確かに、そうかも知れない。
多分だけどミラさん魔力値そんなに多くないから、ノア君の方かも。
「…ありがと、う。」
気を悪くしてしまわないように、精一杯の笑顔で感謝の気持を伝えた。
だって実際ノア君がいなきゃ俺、死んでたかもしれないし。3話目でどっがーんって。
ノア君は俺の方をチラリと見ただけで特に何も言わず、ミラさ…ん”ん”っ、ミラの方に向き直る。
え何か、俺もしかして嫌われてる…!?
「ミラ、帰ろ。来週新学期なんだよ?準備しないと。」
「むぅ〜……わかった。」
来週新学期なのか…。学生さんって大変だな…。
俺も孤児院と屋敷にしか行ったことなかったから、学園ってどんなものか分からないけど何か凄そう。
人間関係とか人間関係とか人間関係とか。
俺が他人事の方にのほほ〜んとした顔で聞いていると、レイラさんが何かを思いついたように軽く顔を上げた。
そして唇の端をにんまりと吊り上げる。
…なーんか、やな予感がするんですけど??
「そうそう、ルーカス…長いからルカでいっか。君も新学期なんだから準備しないとね。クラスはミラと同じクラスに入れるよう手配してあげるから安心しな。」
…は?
「…同い年なんだ。背高…。」
…ひ?
「え!編入してきてくれるの!!うれし〜!!」
…ふ?
「1週間もありゃ色々揃うっしょ。男子ものアタシ分かんないからノア教えてね。」
…へ?
「…うん。」
…ほ?
「ふへへ〜。ようこそ、国内最高峰の教育機関であるネオノスタルジー学園へ!」
最後まで読んでいただきありがとうございました〜!次回もお楽しみに✨
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> 次回予告【5/25更新予定】 <
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( 'ω'o[ とうとう始まる学園生活!しかし入学早々トラブル勃発!? ]o