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Ⅰ【ⅱ】ありがひょう(噛んだ1)…ござい…まふ(噛んだ2)

1日ぶりです!(?)飽き性。です!

続く2話目!!家出中のはずのご令嬢が戻ってきた理由とは…!?


それでは〜!いってらっしゃい!✨

「レイラお嬢様…!?」



驚くのも無理はない。

8年も不在だった当主が何の前触れもなく帰還したのだ。

召使い達が最後に見た時の容姿より随分大人びてはいるが、意志の強い瞳は変わっておらず見間違えることはないだろう。


驚きの波紋があっという間に広がっていく光景に、少女―…レイラは不愉快そうに顔をしかめた。

その表情を見た召使いは慌てて口を噤み、壁一列に並び直す。

当主の機嫌を損ねることはクビに繋がる。他人への関心が薄いレイラが直接手を下すことはなくとも。

静かな動揺で空気が満ちる中、奥から召使いを束ねていると思わしき古株の女性がレイラの前に進み出た。



「おかえりなさいませ、レイラお嬢様。私達一同心より貴方のご帰還を―…」

「んな事はどうでもいいから。」



自身に向けられた丁寧な言葉を、無表情で一蹴するレイラ。

しかし召使いの女性は特に気を悪くした様子はなく食い下がる。



「馬車の中でさぞお疲れでしょう、今紅茶を入れさせま―…」

「いらない。」



レイラはそう言い捨てるとスタスタと廊下を進んでいく。

まるで、お前達に用はないと言わんばかりに。

女性とすれ違う直前、彼女は碧い目を鋭く細めた。



「催眠薬入りの紅茶なんて、いらないね。」



押し黙る召使い。

壁に並んでいる召使いを纏う雰囲気も、動揺よりも緊迫に変わっていた。


ずっと不在だった当主が戻ってきた。

つまりレイラに言わせれば、自分を引き留めたい敵陣の中に1人突っ込んでいった状況。一族はどんな手を使ってでもレイラを屋敷においておきたいはずだ。

…例え、椅子に縛り付けてでも。


そんなリスクを背負ってまでもレイラがここに来たのは理由があった。



「あ、そう。クソ親父どこにいんの。」

「言葉遣い!」

「別にいいでしょ。」



会話すらも面倒くさげな彼女は、振り向くことなく廊下を進んでいく。

召使いがなおも黙っていると、レイラは当主の言葉に背く召使いに、さも意外そうに振り向いた。



「へえ、言わないんだ。もしかしてだけど彼奴がどこにいるか分かんない?…それとも…。」



途中まで喋って、少し時間を置いて。その口角が初めてニイっと吊り上がる。

言えない秘密を分かってしまった時のような、悪魔の笑み。

金髪碧眼に整った顔立ちの彼女が浮かべるその笑みは、見る者を惹きつけた。



()()()()()()()?」

「…っ!」



図星だとも言うように、奥の方に並んでいた召使いの1人が小さく反応した。ずっと奥の暗がりで、注意してみていなければ気づかないほど、小さく。

それをレイラは見逃さない。



「そ。」



悪魔のような笑みを引っ込め、また無表情に戻る。

レイラは周りに関心をなくしたように、壁際に立つ召使いに脇目も振らず廊下の奥へと消えていった。





* * *





レイラは、人の気配に敏感だ。

仮にも幼少期同じ空間でいた父親の気配なんぞ嫌でも分かる。

レイラは、非常に賢い少女だ。

頭の回転が驚くほど速く、記憶力も高い。


だから、すぐにクソ親父の場所を見つけた。



「(この扉の向こうに、いる。)」



しかし。

敏感なレイラは、もう1人の気配を感じ取った。全く知らない、身に覚えのない気配だ。つまり、8年前まではこの家にいなかった存在。


恐らく10代前半の男子。

扉が厳重に音を漏らさないので中の様子は聞こえないが、2人とも穏やかではないだろう。

時々聞こえる物騒な物音がそれを物語っている。



「(…あたり。)」



レイラがわざわざここに来た理由。父親を探していた理由。

それが今、1つとなる。


彼女は、堪えきれない感情に悪魔のような笑みを浮かべながら、片手に()()()()()()を生成した。

そしてその切っ先を扉に突きつける。

分厚く重々しい扉は、15歳の少女に壊すことは難しい…はずだった。


レイラは生成した剣を大きく振りかぶり、



―――ドゴォッ!



まさかの投擲した。


凄まじい音を立てながら、扉が大破する。

レイラの魔力保有値は高等祝福者レベルの90。しかも魔力値の成長期は10代なのでまだまだこれから増えていくだろう。

そんな高密度の剣を受けて、扉は完全に無力だった。


埃が室内を覆う。

室内から2人の咳き込む声が聞こえてきた。レイラの父親と、気配だけ認知できた少年のものだろう。



「ごほっごほっ!誰、だ!今は来るなと、何回も、」

「ご機嫌よう、クソ親父。」



咳き込む父親に、とびっきり冷たい一言。

レイラは父親を一瞥すると、後ろでまだ激しく咳き込む少年の方に歩み寄った。


上背に恵まれているから何とか誤魔化せているものの、明らかに栄養が足りておらずガリガリ。

頭髪の色も元の色が分からないほどぼさぼさでひどい有り様。

両手両足は鎖で縛られており、その細い手足にはまだ新しいものも含む無数の傷跡があった。


…しかし、目は。


飢えを知らない輝きを宿していた。



「(…嫌いじゃない。)」



レイラがここに来た理由。それは、最近ある噂を聞いたから。

「グラース家には実は当代以外の隠し子がいて、屋敷に監禁している」という出どころの掴めない噂。


レイラは知っている。

母親も父親もレイラ以外の子を()()()()ということ。だから、隠し子はいないはず。

しかし、火のないところに煙は立たない。だから聡明な彼女は1つの仮説を立てた。


レイラは7歳の時に家を出た。

その時両親は、レイラが当代になっても家に戻ってこないことを悟って、大慌てで彼女の代わりになる子を探した。恐らく、孤児院から。

まだ属性が決まっていない7歳未満の子か、氷属性の子を。

しかし拾ってきた子は、氷属性ではなかった、或いはあまりにも魔力値が低かった。

だからレイラの代わりとしては使えず、屋敷に監禁されている。

そして、その情報がどこからか漏れた。


それを検証するために、遠路はるばる敵陣に突っ込んできたのだ。

相応の結論は欲しい。


今のところは及第点。

だが、この少年がレイラが欲する結論であるか、もう少し試す必要がある。見かけによらず、監禁生活のせいで彼の性格が歪んでいても困る。


レイラはくるりと父親に背を向け、少年の前に屈み込んで視線を合わせた。



「レイラ・ガラース。アンタ名前は?」

「……っ…ぁ…」



初対面の人とのコミュニケーションの基本。名前を聞く。

低い位置で、2人の目線がかち合う。

少年は1度は口を開いて声を出そうとしたものも、すぐに視線を落として顔を歪めた。まるで喋りなれない幼子がそうするように。



「(…上手く喋れない?まあ監禁生活が長ければ、こうなるのも仕方ないか。)」



1週間も喋らなければ、人は言葉を忘れるという。

当初んな馬鹿なと思っていたレイラも、実際目の当たりにすると納得せざるを得なかった。まあ、生涯目の当たりにもしたくもなかったのだが、人生そうは簡単にいかないらしい。残念だ。


…と、次の瞬間。


「〜〜〜〜〜〜〜!!」


少年が急に声にならない悲鳴を発し、レイラを横向きに突き飛ばした。

一方突き飛ばされたレイラは、瞬時に生成した氷を蹴り上げ、空中で一回転してから何事もなかったように着地。

レイラが先ほどいた位置には、大振りの鈍器が突き刺さっていた。

飛んできた方向には、勿論クソ親父が。


レイラは全てを完璧に無視し、少し唇に手を当てて思案した。

…因みに少年の悲鳴から鈍器まで、全てレイラの計算通りである。



「(…よし。まあ、合格かな。)」



少年に近づき、四肢を拘束する太い鎖に手を当てるレイラ。

そして、少年が凍傷にならない範囲で鎖を凍結させ、一気に破壊した。

床に鉄の破片が砕け散る。



「…?」



そして未だ困惑している少年に向かって、レイラは手を差し伸べた。

状況が飲み込めずキョトンとしているその表情に、少しだけ安堵する。


普通、監禁され度々散々な状況にあっている子供は精神が壊れ、感情なんてものはなくなってしまうケースが多い。

だが、この少年は違った。

表情をコロコロと変え、まだそこにはっきりとした自我が存在していることを教えてくれる。



「おいで。」



少年は、出された手とレイラを交互に見ていたが、なんだか不思議な気持ちに包まれていった。

この8年間で、忘れかけていた気持ち。

なんだかふわふわしてあったかくてくすぐったい、そんな気持ち。


この人は多分、自分に痛いことをしない。助けてくれようとしている。



「(こういう時、何ていうんだっけ…。)」



孤児院で唯一、整いすぎた容姿を怖がらずに話してくれた気さくな友達が教えてくれた言葉。

その子が別のところに引き取られて1人になってから、ずうっと忘れていた言葉。

誰かに助けられた時に、救われた時に、言う言葉。お礼の、言葉。


少年―…ルーカス・ベネットは、忘れかけていた笑顔で、レイラの手を取り、



「………ありがひょう…ござい……まふ」



盛大に噛んだ。



「ぷっ…ふふ…あははは、んふふっははは!」



堪えきれず大笑いするレイラと、顔を真っ赤にしながらたじろぐルーカス。

…それと、いつの間にか氷漬けにされ、物語の背景と化した父親。


8年ぶりに発した、ルーカスの自分の意志を持って発したちゃんとした言葉。

けど第一声の大事なところで噛んじゃった。まあ無理もない。



えー後ろの父親はさておき。

後にこの2人がこの国の歴史に大きく関わる人物になるということを、誰が想像できるだろうか。

きっと誰も予想できない。

いや、まだその未来が決まったわけではない。

楽しいことばかりじゃないし、辛いことばかりじゃない。出会いもあれば別れもある。無理難題に直面したとしても、彼らならきっと乗り越えてくれる。

彼らが築く未来はこれからだ。


だってこの物語の歯車は、回りだしたばかりなのだから。

最後まで読んでいただきありがとうございました〜!次回もお楽しみに✨


_人人人人人人人人人人人人人人_

> 次回予告【5/24更新予定】 <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

( 'ω'o[ レイラと共に生きることにしたルーカス!新しい道の始まりの3話!! ]o

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