Ⅰ【ⅰ】 久しぶりに家に帰ってくる時は事前に連絡下さい(母親目線)
初めまして!飽き性。です!
執筆初心者で拙いことばかりとは思いますが、温かい目で読んでいただけてたら嬉しいです(๑•̀ㅂ•́)و✧
それでは〜!いってらっしゃい!✨
「………う。」
もうどのくらい寝てたんだろ。
冷たい床で、不意に目を覚ました。
ゆっくり体を起こして辺りを軽く見渡す。暗くてうっすらとしか見えないけど、この部屋には相変わらずほとんど何もない。それでもぱっと目につくのは、天井近くにある小窓と、幾重にも鍵がかけられた重々しい扉。あと俺をこの部屋に繋ぎ止めている鎖だけ。
自己紹介してなかったね。
俺の名前はルーカス・ベネット。男。多分、15歳。
孤児院でいたところを、7歳の誕生日の直前に、あるお貴族に拾われてこの屋敷に連れてこられた。
…までは良かったんだけど。
ああ、これは話しておこう。
この世界では、人間は7歳の時に神から”祝福”の力を与えられる。
”祝福”とは、俗に言う”特殊能力”とか”魔法”みたいなもの。使える力の種類は1つだけで、似たものはあれど人それぞれ違う。それのキャパ――…通称”魔力値”は皆まちまち何だけど、一般の人の平均が50。中等祝福者の平均が80。高等祝福者の平均が100、って感じかな。
えっと、話を戻すよ。
お貴族様に拾われてバカでかい屋敷に来て、俺は小さな部屋に閉じ込められた。今いる部屋よりもうちょっと広かったかな。
7歳までの子供に対するこういった措置はこの世界ではあまり珍しくない。何せ能力が分からない以上、どうしても色んな危険性は出てくる。それに実子で大事に育てられていたならまだしも、俺拾われ児だったし。
そーいや何でここに拾われたんだろね。髪色も目の色も変だったし愛想も結構悪かったと思うんだけど。急いでるみたいだったし誰でも良かったのかな。
何やかんやあって迎えた7歳の誕生日前日の0時前。
儀式の為にただっぴろい広間に連れてこられた俺は、上座の椅子に座らされ、占い師――…子供の”祝福”を告げる者――…と対面した。フードを深く被ってて顔はよく分かんなかったけど。
時刻が来るとまあ例外なく、俺にも”祝福”が与えられた。
『___...使用属性・闇属性...』
魔法と同じく、”祝福”にも属性がある。
多い順に、水属性、氷属性、火属性、風属性、土属性、音属性、雷属性、空間属性、光属性、闇属性。
水を生成して操ったり、空間を切断したり色々レパートリーは豊富。
闇属性は文字のイメージの通り忌み嫌われる属性で、使い手も少なく詳しいことはよく分かってない。
古い記録によると、物を消したり、何か闇を云々するーみたいな事ができるらしい。
まあ、この力…だけだったらまだ良かったんだけど。占い師の次の言葉で、周りの大人は凍りついたんだ。
『___...光属性・”魅惑の瞳”。』
水と火のように、光属性と闇属性は対立する属性。
2つの属性を持つだけでも例がないのに、対立する属性を持つなんてもってのほか。
使用するのは闇属性だけど、目に宿す能力は光属性が元とか笑っちゃう。
因みに”魅惑の瞳”が何かって言うと、目があった相手を軽い催眠にかけたりする精神干渉系の力だね。
あ、聞いてて絶対思ったでしょ。それ光属性なの?って。
精神干渉以外にも、視界に捉えた人の”祝福”の能力値を増幅させたり、逆に削ったり。案外良いことにも使えるらしいよ。
…使ったことないけど。
1人1つまでの力という常識を(俺はそんな気なかったんだけど)玩具同然ぶち壊し、さらに正反対の性質を併せ持つ俺は、周囲からしたら絶対に存在を知られたくなかったらしい。
それで、今に至ります。
絶対に存在を知られてはいけないので、屋敷の奥の暗くて狭い一室でもう7年もこうやってこっそり過ごしてる。暫く部屋の外に出たこともない。
1日1食朝起きたら適当な食事が置かれてて、あとはまあ―…。
―――ガチャ
ドアの開閉音で、重い顔を上げる。
…ああ、来ちゃったか。
重々しい扉が外側から開けられて光が差し込んだ。
そこから大柄な男性が入ってきた。その手に素晴らしいぐらい大振りな凶器を持って。
中年で小太りした、この屋敷の主人。名前は…何だっけ、孤児院から連れ出された時に聞いたような気もするけど忘れちゃったや。
この人はね、週に1,2回ぐらい俺がいる部屋に来t
―――ドガッ!
激痛。暗転。
* * *
高級住宅街の中でも一際大きい豪勢な屋敷の前に、控えめで小ぶりだが立派な馬車が停まった。
扉が開き、1人の少女が馬車から飛び降りる。
金髪碧眼で、整った顔立ちをしている。恐らく同年代の子の中では比較的背の高い少女。来ている服は汚れ一つなく、恐らく上級貴族のご令嬢だろうか。
彼女は屋敷を一瞥すると、頑丈な門に近づいた。
しかし明らかに体が拒否しているようで動きがぎこちなく、表情が嫌そうに引き攣っている。
門の前まで来て、中央に嵌め込まれている大きな宝石に右手を翳した。
その手の人差し指に嵌めている指輪と門の宝石が共鳴するように輝き、門が大きな音を立てながらゆっくり解錠する。
―――ギイィィィィ…
この屋敷は古くから続く氷属性の名門、グラース家のもの。
先代の趣味で全体的に青と金で統一された、明らかに多額の金額がかかっていそうなお屋敷である。
氷属性といえばこの家、と誰もが答えるほど、他の氷属性の家と比べて飛び抜けて超有名な名家。
しかし超名門グラース家は今、決して外には口に出せない、家庭問題を抱えているまっ定中であった。
それが何かと言うと…。
まさかの、当代の家出。
この国では、一族の当代は14歳を迎えた長男又は長女に任せられる。
そして古くから家に伝わる、家の家宝とも言える”家宝石”を守っていくのだ。
…が。
当代である現在15歳の少女は、7歳の時に親と家の方針について大きく揉め、家出。
何でも金と権力と地位に縋る親が嫌になったそうで、レイラは親の話を誰かがするたび頬を引き攣らせていた。
今は離れに建てらせた屋敷に、僅かな使用人を連れて1人で暮らしている。
自分の正しいと思う道を進み、真っ直ぐ前を向く齢15歳の当主。
その名を、レイラ・グラースという。
さて一方、一族のお屋敷では。
当代がいなくなってしまえば”家宝石”を守る人はいない。
当代以外”家宝石”を守ることは困難であり、というよりかは当主以外魔力値的に困難を極めるため、残された一族は家宝を守るすべのない絶体絶命の窮地に立たされていた。
因みに”家宝石”とは、一族の初代当主が、子孫繁栄を願って宝石に魔力を込めたもの。上級貴族から下級貴族まで当たり前のように所持している、一族繁栄の象徴とも言える家宝。
レイラのいる屋敷に押しかけ、家に戻るように言おうと思えども扉は開けてもらえず、かといって叫んでしまうと周囲に悟らせてしまうという、一族からすると手詰まりな状況。
その緊迫した状況が8年続いた今。
物語の歯車をせき止めていた氷が、溶け始める。
少女は屋敷の扉を押し開けた。少しずつ玄関の様子が顕になる。
外からの光が、玄関に敷かれていたカーペットに鮮やかさを与える。
少女は、屋敷の中に一歩足を踏み入れた。
来客に気付いた召使いが慌てて駆け寄り、そして少女の顔を目視し。驚愕に歪み、次々と言葉を失っていく。
そのうちの誰かが彼女を見て、驚きの悲鳴を、金切り声を上げた。
「レイラお嬢様…!?」
最後まで読んでいただきありがとうございました〜!次回もお楽しみに✨
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> 次回予告【5/17更新予定】 <
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( 'ω'o[ 家を出ていたご令嬢が戻ってきたその目的とは…!?出会いの2話!! ]o