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幼馴染もの

吸血鬼化した幼馴染が色々アウトなんだが

作者: テル

※苦手な人は苦手かも知れません

 世の中には不思議なことが多々ある。

 幽霊とか心霊現象とか、運命とか巡り合わせとか。

 科学的に説明できることだとしてもやはりロマンを感じてしまうものなのだ。


 ただこれに関して、俺はどう反応すれば良いのだろう。


「......これからどうしよう」

「いや、まあ、ひとまず黙っておいた方がいいよな」


 俺の幼馴染、九条 潤羽(くじょう うるは)が吸血鬼化した。

 太陽が苦手な訳でもないが、どうやら血を吸わなければ喉の渇きが収まらないらしいのだ。

 ちなみに潤羽の瞳の色は赤になっている。学校に行く時はカラコンをつけて誤魔化しているらしい。

 さらに歯が2つ少し尖っている。


「いつからだ?」

「分かんない。でも多分先週くらいから」


 そして潤羽は血を見るのが大の苦手である。相性最悪すぎないか?

 

「それで飲んだのか?」

「いや、飲んでない。トマトジュースを血だと思い込んで誤魔化してる」


 あ、代用効くんだ。しかしよく漫画とかでもある。吸血鬼が血飲んでなくてそのままお陀仏......。

 それなら飲んで生きていてくれた方がいい。


「......嫌だろうが俺の飲むか? 多分飲まないといけないだろ?」

「普段だったら超引いてただろうけど、何でだろう。すごい欲しい......」


 幸い今は俺の部屋で2人きりなので誰かに見られる心配はない。

 

 本当は一緒にゲームしたりして遊ぶ予定だったのだが、随分と潤羽の顔色が悪い。

 こちらとしてはものすごく心配なので早く元に戻って欲しいものなのだ。

 多少貧血になるかもしれないが、そんなことどうだっていい。

 鉄分取っとけば治るでしょ。


 潤羽はごくりと生唾を飲み込んだ。

 そして俺に抱きついた。え、あ、そういう?


 普通に胸がドキドキとしてしまう。

 

 潤羽は俺の首元を優しく噛んだ。

 血を飲み込む音が聞こえてくる。


 不思議と痛みはなかった。噛みつかれたのか一瞬分からなかったほどだ。

 漫画みたいな展開になってるので夢の世界かと疑ってしまう。


 そしてしばらく経ち、潤羽は俺から離れた。


「ご、ごめん。急に抱きついて」

「え、あ、全然。それでどうだ?」

「うん、多少は渇きは良くなったかな」


 潤羽の顔色は元に戻っている。

 対処療法感が否めないが、とりあえず当分は大丈夫だろう。


「ていうか人の血飲んだことないのによくやり方わかったな」

「あ、たしかに。本能かな」


 あれ、なんか頭がクラクラしてきた......?


「とりあえず俺以外にはそのことあんまり言うな......よ......」

「え!? ちょっ、大丈夫!?」


 そして俺はそのまま倒れた。

 やばい、貧血......だ。


 ***


 ......何だこれ。すごい柔らかいし心地よい。


 俺は寝ぼけた頭でそんなことを思った。

 そしてゴロッと転がって顔を疼くめてみる。


「く、くすぐったい」


 上から声が聞こえたので、もう一度反転し、目を開けてみれば潤羽の顔と、それを少し隠す胸が視界に映った。

 

 俺はすぐさま起き上がった。


「おはよ」

「お、おはよう......膝枕してたのか」

「うん、頭撫でたかったからね」


 寝起きの状態でこれは心臓に悪い。

 俺は加速したドキドキを収めるために一息ついた。


 

 潤羽はいつものように微笑んだ。

 少し回復したようだ。よかった。


 時計を見てみれば長針は6を指していた。

 もうこんな時間か。結構寝たな。


「ごめんね。私が血吸いすぎちゃったせいで」

「別に大丈夫だ。普段から鉄分あんまり取ってないっていうのもあったしな」

「ダメだよー。ちゃんとご飯食べなきゃ。食べ盛りの男子高校生でしょ?」

「そうなんだけど作る気起きないんだよな。コンビニで済ませちゃうし」


 俺は1人暮らしだ。

 両親は転勤して別のところへ引っ越して行ったが、俺は地元に残りたかったので無理言っている。

 ただ、1人暮らしは案外大変である。


「あ、じゃあ今日は私が作ってあげよっか?」

「ん、いいのか?」

「もちろん。お礼にね」


 潤羽が作ってくれるとは。潤羽の手料理は何度か食べたことがあるが絶品なので普通に楽しみだ。


「じゃあちょっと待ってて。作ったら持ってくるから」


 そう言って潤羽は部屋から出ていった。


 さて、潤羽が来るまでに少し散らかった部屋を片付けておきますか。


 俺は少し痛む頭を押さえて立ち上がり、片付けを始めた。


 ***


「ご馳走様、いやー、美味かった。前より上達してるな。前もすげえ美味かったけど」

「ありがと。最近結構練習してるからね」


 やはり潤羽の料理は絶品だった。すぐに完食してしまった。


「よしじゃあ私はこのままお泊まりします」


 ポンポンと潤羽は自分のバッグを叩いた。


「え、いや、俺は構わないけど......そっちの親は良いって?」

「うん。準備もしてあるよ」


 たしかにやけに大きいバッグである。

 着替えとか色々入っているのだろう。

 思いつきではなくて最初から泊まるつもりだったようだ。


 それから時間も経ち、就寝の時間になった。

 

「じゃあ俺布団敷いて地面で寝るからベッド使っていいよ」


 そういうと潤羽はキョトンと首を傾げた。


「ん、ベッドで一緒に寝るんじゃないの」

「なっ......いや仮にも異性同士だし色々アウトだろ」

「私はそうは思わないけどなー」

「俺が気にする」

「ふーん......ってことは私を異性として意識していると」


 ......否定できない。


 ってその前に異性同士の高校生が一緒のベッドで寝ること自体がアウトなんだよ!

 許されるのはカップルだけである。


 潤羽はベッドの端に寝転がってスペースを開け、ベッドを軽く叩いた。


「ここで一緒に寝ればいいじゃん」

「あのな、そういうわけにも......」


 すると、服を思いっきり引っ張られて強制的に同じベッドで寝させられる。


 俺が離れようとすると、背中から足を絡めて抱きつかれた。

 背中に何やら柔らかいものが当たっている。


 流石にこれには胸が早鐘を打ち、熱くなっている。


「あのー、潤羽さん?」

「離さないもーん」


 おそらく潤羽は何の気もなしにやっているのだろうが、こちらとしては思わせぶりな行動で心臓に悪いのでやめて欲しい。


「はいはい、一緒に寝ますよ」

「やったね」


 俺の心臓が流石にもたないので、渋々了承し、一緒のベッドで寝ることにした。


「電気消すぞ」

「はーい」


 ベッドが狭いので時々肌と肌が触れ合ってしまう。

 その度にドキリとしてしまう。


 これ寝れるかな。


 潤羽を意識するようになってしまったのはほんの少し前からだ。

 吸血鬼化したとはいえ潤羽は潤羽だ。

 ......はぁ。潤羽はぶっちゃけ俺のことを親友だとは思っているだろうがそれ以上の存在ではないだろう。


「なぁ、潤羽」

「......」


 寝てるのか。


 横を見てみれば、俺の胸に手を当てて気持ち良さそうに寝ている潤羽が月明かりでよく見えた。


 月綺麗だな。『満月』か。

 カーテンの隙間からチラッとまんまるのお月様が見える。


 ......俺も寝るか。


 潤羽の髪をさっと撫でて俺も眠りについた。


 ***


「ん......あ......う」


 何時くらいだろうか。潤羽が突然悶えるような声を出した。

 それを聞き、俺は目を覚ました。


「ん......」

 

 月光が相変わらず差し込んでおり、明るいとはいえないがある程度見える。


 潤羽は起き上がって目を擦った。

 そしてその瞳は前より赤く光っているように感じた。


「喉......渇いた......」

「潤羽......?」


 少し様子が変だ。

 大丈夫だろうか。


「喉渇いた......」

「潤羽? 大丈夫......っ!?」


 そして潤羽は俺の上に乗った。

 馬乗りの態勢である。


「潤羽、ちょっ......」

「......」


 そして俺の首元を噛み、血を吸った。

 そしてすぐに自我を取り戻したのか、俺の首元から離れた。


 目はいつもに戻った。


「......あれ? 私何をして......あ、ご、ごめ......うっ」

「潤羽!? だ、大丈夫か?」

「まだ、喉渇く.......うっ......」

「潤羽?」

「......」


 元に戻ったかと思えば、潤羽はもう一度理性を失った。

 見てみれば目は赤く光っている。


 とりあえず潤羽から離れようと思い、体を起こそうとすると、押さえつけられた。


「逃げちゃだーめ」

「......潤羽?」


 押しのけようとすれば、潤羽は俺の手首を掴んで動けない状態にした。


「あは、かわいい。逃げようとしても無駄だよ?」


 喋り方もいつもの潤羽ではない。

 潤羽は笑みを浮かべた。


「それじゃあ良いよね? ......いただきます」

「うる......は......」


 そして首元に優しく噛みつかれた。

 こんな状況にも関わらず心臓は激しく動いている。


 というかまずい。正気に戻さないと。

 しかし押し除けようとしたが体が上手くいうことを聞かなかった。力が上手く入らない。

 

 そして段々と意識が遠のいていく。


 最後に見たのは変わりに変わり瞳が赤くなった潤羽の満足げな笑みだった。


 ***


「うわ!? って、はぁ......」

「あ、起きた。なんかうなされてたけど大丈夫?」



 俺は勢いよく体を起こした。

 横では潤羽が寝転んでいた。瞳の色は赤くない。

 .....あれ?


「あれ、潤羽。カラコンしてるのか? それとも治ったのか?」

「カラコン? ん、何のこと?」

「え、だってお前吸血鬼化して......」

「ちょっと大丈夫? 寝ぼけてるんじゃない?」


 ......ん、夢?

 あれ、吸血鬼......ん、何で吸血鬼なんて言ったんだ?

 夢か。どんどんと夢の記憶が抜けていく。


 バタッと俺も寝転んだ。


 あー、そういえば潤羽がテスト対策で一緒に勉強するために俺の家泊まったんだっけ。

 

 なぜか心臓が忙しなく動いている。どんな夢を見たんだ。

 何か、潤羽が吸血鬼化した的な内容を見た気がする。

 そんなこと現実であるわけないのにな。


「ていうか何で一緒の布団で寝てるんだ」

「だって1人で寝るのつまらないんだもん」

「どういうことだよ、とりあえず離れろ」


 俺に半分抱きついている潤羽を押して離れさせた。

 普通に暑い。


 夢でもこんな場面あったような気がしなくもない。


「(......美味しかったよ)」

「何か言ったか?」

「別に何も言ってないよ」


 ふふっと潤羽は笑った。




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