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砂嵐の本

作者: 杜若表六

「これが砂嵐の本ですか」

「そうです」

「なんでも二度と同じページを開けないそうで」

「そうです。いったん本を閉じて開くともう同じページはあらわれません」

「たしかに何度読み返しても、読むのは異なるページです」

「実は、同じページも常に同じに見えますが、刻一刻と変化しています」

「いつのまにか、『あ』の字が『ん』の字になっています」

「すでに開かれたページとは同じにならない。常に異なる内容に変化する」

「なぜそうなるのだろう」

「これは電子書籍ですから、文字がリアルタイムで編集されていくようにできるのです」

「異なるページを開いているように見えて、それはデザイン上の騙しで、実は同じページを開いている」

「違います。デザイン上、同じページを開いているように見えて、実は異なるページを開いている」

「おや、このページでは男二人の会話を記録していますよ」

「偶然そう見えるだけです」

「一篇の小説を読んでいるようです」

「砂嵐の本を読むことで、われわれは全てのページの全ての小説を読んでいるのです。ちょうどマニ車のように」

「われわれが読んでいるこの小説がとつぜん消去されたらケッサクでしょうね」

「全ての小説は完結する前に砂嵐が起こって終わるのです。ちょうど古いテレビのように」

「それはたぶん赤ちゃんが落ちつく混沌ですね」

「電子の混沌です」

「砂嵐が来ないかなあ」

「砂嵐は常にあるのです。来るように見えるのは物語のほうです」

「われわれが読んでいるのは間違いなく物語なのだが」

「物語に書かれているのは間違いなくわれわれなのだが」

「違います」

「それは砂嵐の本ですか」

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