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おとぎ話の最後は「めでたしめでたし」ばかりじゃない

 ごうごうと炎につつまれる建物群

 私の目から出た光線は、まっすぐ続くはるか向こうの建物まで破壊つくし、すっかり見通しがよくなっている。

 本意ではなかったが、意図しなかったのにデストロイヤーになってしまった。

 反省から生存者を探し、できるだけは救助した。

 えーっと、わざとじゃなかったんだよ…。本当にごめんなさい。


 まさか「死ぬとは思わなかった」って、どっかの犯罪者が言ったとかニュースに出てたね。

 報道、覚えてる。同じかな?ごめんなさい。落ち込むよ。でもどうしようもない。

 。

 中にはまったく非のない人もいたであろうに。


 私の意図した事ではないが、結果として多くの人を殺めてしまった。

 でも、あの状態で、私に善人と悪人を区別して光線(ビーム)を出せたかといえば、それは無理な相談であったのだ。

 それに、あんな威力があるとは、はじめて出た光線にそんな結果になるとは思いもしなかったのだ。


 結果として、王都どころか国そのものが滅びたらしい。


…、そりゃ、お城も街も壊されちゃったんだものね。




周辺の都市へ逃げ延びた人々がいて、何が起こったのかは広まっているようだ。

あの刑場に詰めていた人の中にも生存者はいたらしい。

 よくもあの中で生き残れたものだ。すごい強運の持ち主じゃね?



曰く、処刑場で爆発があった。

神の怒りが落ちた。

大災害が起きたようだ。


まぁ、こういう災害が起きると囁かれるよね、神罰論。実際は私という人間が起こした人災だったわけだけど。

 ーー冤罪で、さらに人違いで処刑されそうになったのでパニクって王都の人たちを王都ごと滅ぼしました。

 報復する気持ちもちょっとあったかもしれない。

 人違いなのを知っていた神官、無責任に気持ち悪い好奇心をかきたてて煽る人たち。

 冤罪を生んだ本人ぽいのに、なんか自分達だけ主人公顔して勝手に盛り上がってた第二王子と糞聖女。

そしてそのとりまきっぽい人々。


 気持ち悪かった。どっか行けって強く思っちゃった。

 それがああいう事になっちゃったのは、たしかにやりすぎだ。

 だけど、わざとじゃなかった。ああいう結果になってびっくりしている。


 私は、あの時、自分の危機(ピンチ)を何とかしたかっただけだったのだから。


 自首しようかなって思った事もありましたが、この国が滅びて政治機能がない状態で、どこに行ってよいのかわからないし。

 そもそも人違いってわかってて、代わりの人間を処刑しようとするようなサイコパスな国にバカ正直に出頭する必要も感じない。

 ごめん自己中で。

 よし知らないフリしよう。





 ゴブリン達の巣穴を乗っ取り、その洞穴に隠れ住む事にしました。

 その頃にはビームの強弱を調整できるようになって、暴走しても王都消滅みたいな事にならないくらいには上達しました。


 それに私が居なくなったら、この女性は生きていけなくて困っちゃうだろうし…。


 上物が吹っ飛んで砕けて散らばって、偶然見つけた地下牢で私はその人を見つけたのだ。


 そもそも、私が身代わりとなって処刑されそうになった、その原因(ほんたい)の人。

 

 侯爵令嬢 エレンティーネ・ブルア様。


 第二王子とあのエセ聖女に嵌められて、ひどい拷問を受けて四肢が壊死しかかっていた女性。

 そしてそのまま壊れた人形のように日の当たらない地下牢で、静かに朽ちていくのを待っていた女性。

 

 拷問、やりすぎちゃったんでしょうね。

 結果、刑場で処刑を盛り上げるための見せしめの代わりの人間が必要になったと。

 なので、拷問した事実を隠そうと、背格好の似ている、たまたま地方から王都へおのぼりさんで出てきてた、いなくなってもすぐには誰も探さない一般人=つまりは私を拉致して身代わりに処刑して取り繕うとしていたみたいです。


 そりゃぁ、侯爵令嬢の身内や知り合いからしたら、いきなり思ってもいないような罪で断罪され、投獄され隠された彼女の姿をやっと処刑前に見たのなら疑念もわくでしょうね。


 あーこれ、冤罪じゃね?ってさ。

 ありもしない罪を自白させるために、拷問で強要したなってさ。

 エレンてば、髪もむしられていて、最初見たとき、壊れたマネキンがあるのかと思いましたもん。

 それほどひどい状態でした。



 あの第二王子、糞ですね。




 それと驚愕の事実がもうひとつ。

 個人的にはこっちの方が驚いた。


 彼女を鑑定して気がついたんだけど、私と彼女、姉妹だったんだよね。

 びっくりして、自分も鑑定したら、私、ただの一市民じゃなかった。

 転生者ってこと以外にも、驚く事実があったんだよ。

 人に歴史あり、自分も知らない歴史があっちゃったんだよ。


 いや歴史というか経歴か。

 

 いやー私お貴族様だった。

 転生したら孤児院からのスタートで苦労したのは何だったのかしら。 


 どうやら、私は小さいころに誘拐されたブルア侯爵家の子供だったらしいのです。


 似てるのも当然ですよね。

 だから身代わりにされたんでしょうけど。

 まぁ、実際はエレン姉さんの方がすごい美人さんで、私はその廉価版て感じなんですけど。

 いいんです。美人は3日見たら飽きるとか言うでしょ?

 私は噛めば噛むほど味が染み出るようなスルメのような女を目指すんです。


 今は姉のエレンを介護しつつ、せっせとダンジョン整備に精を出しています。


 なぜかゴブリンのいた洞窟には、ダンジョンコアらしきものがあったので、触ったら私の中に吸収されちゃったんですよね。

それからは、ダンジョンを思い通りに弄繰り回せるようになったんです。


 エレン姉さんの回復には時間がかかります。何しろ心まで壊れちゃってるんで。

 時々、発作を起こしてひどく泣いて暴れたりするから、介護が大変なんですよ。本当、勘弁してほしい。

 いつか正気を取り戻して「普通」に幸せをつかんでほしいって願っていますけど、難しいかもなぁ。


 ブルア侯爵家の皆さまは、断罪されたのか、追放されたのか、それとも私のビームでやられちゃったのか、行方がわかりません。

 エレンお姉様をお世話できるのも保護できるのも私だけ、という事になります。


「ほら、お姉さま。海風が気持ちいいでしょう?」


 ダンジョンとは不思議なものです。地中にあるはずなのに、この場所には海がありますし太陽だって再現できます。まぁ疑似太陽なんですけど。

 

 車いす型ゴーレムに姉のエレンを乗せて、ダンジョンの中のいろんな光景を見せてあげるのが私の日課のひとつです。


 お外?


 逃亡生活の最初のころは、食材を求めてダンジョンの外まで出ていった事もありますが、総じてダンジョンの外の人は怖いです。


 こっちの世界の人は民度が低いって言ったら、わかってくれるでしょうか?


 前世の世界と比べて、って話ですけど、まぁ前の世界だって悪い奴らはいたし、犯罪も起きていましたけどね。


 少なくとも、街道で盗賊に頻繁に出くわすこっちの世界ほどじゃなかったと思うんですよね。


 ほんとお外怖い。


 街の中でも、人さらいに、泥棒、暴力がはびこっているんですもの。無理無理。


 国境またいで国を変えても、あまり変わり映えしてません。誤差範囲でしたよ。


 その点、私の乗っ取ったこのダンジョンの中なら、私が主人なのでポップするモンスター達だって私の考えた仕様が適用されるので安全です。


 はぁ、おうち(ダンジョン)大好き。


 それにね、わたし、3つのチートをくれた存在が求めてきたこと、知らないうちに達成してたみたいで。



 ほら?転生し始めあたりに良くわからない神様っぽい存在から「世界を救ってほしい」みたいなお願いというか命令を受けてたじゃないですか?


 お城をビームで薙ぎ払っちゃったあたりでピコーンて電子音が聞こえたんですよ…。


 なんか「依頼を達成しました」みたいな機械音みたいな声も聞こえたしさ。


 自分を鑑定した時に、依頼報酬スキルとかいうの増えてましたもの。


と、言うことは、私のしでかした王都破壊が依頼だった、もしくは王都にいる人物、もしくは何かを破壊、消滅させる事が条件じゃぁなかったかと…思うんです。


 ビームで蒸発させちゃった貴族や群衆の中に、この世界を破壊させるような因子を持ってるやつがいたか、何らかの壊さなくちゃいけない何かを壊してやった事かなと想像するのですが…。

 聖女かな?もしくは王子とか。まさか神官のおっちゃんとか…?


 あと、聖女召喚のノウハウと召喚陣が王城に隠匿されてあったらしいので、そっちの線もくさいかな?

 この国のみが出来る秘術とかで、消滅させちゃったのでこれでもう永久に召喚はできないと思うんだけど。


 まぁ、そういうことです。


 神話時代にエストラーダに、神によりもたらされた魔法陣と秘術だったらしいけど。

 私に頼んできた神様と同じ神様なのかな?よくわかんないけど。


 いいんじゃないかな。そんな方法は失われても。

 一向に差し支えないと思う。


 召喚されてきたのが、あんな糞聖女じゃぁねぇ?

 何の役にたってたんだよあの人。

 一般人には「聖女様の召喚に成功した王族すごい!」って圧しかなかったし。

 実際、何やってたの?あの聖女。

 魔を払ってたとか、浄化の旅に出たとか病人やけが人を治してまわってたとか聞いた事ないし。

 行動が、悪役令嬢断罪とかイケメンハーレムを作ってただけのような気がしてきたよ?

 本当にそれって聖女召喚の技術だったわけ?

 糞女(エセ聖女)召喚のための技術だったんじゃないの?。


 まぁお貴族様の健康と安寧には役にたってたみたいだけどさ。


 前の聖女様のことはよく知らないけど、庶民に読まれている過去の「勇者物語」では活躍が書かれていなかったからねぇ。

 やっぱりあんまり役にたっていない聖女だったんじゃないかなぁ?

 勇者パーティの足を引っ張っていたんじゃないかな?


 この世界、魔王あるとこ勇者ありで、2~300年ごとに、世界を二分するような戦いがあるので、そこに糞女(イーリーン)を放り込んだりしたら、可能性として世界も滅びるかもしれないねぇ。


 何となく思うんだけど、魔王も勇者も誑し込んで「私のために争わないで」とかやりそーじゃない?

んで引っ掻き回すだけ引っ掻き回しておいて、あれでしょ?「みんな友達(逆ハーメンバー)」とかやるんでしょ?その間に姉のような被害者を量産しつつ。



 ああヤダヤダ。


 どこぞのクソゲー(乙女ゲーもどき)ですかってんだよね。

 あの女の周囲には王子から少し下がった位置だったけど、ぐるっと高貴な方々(権力者のイケメン)が取り囲んでいたしね…。

 私の勝手な想像ばかりではないはず。


  でもちょっと、私ってあれかしら?ちょっときめつけすぎ?

  思い込み激しすぎ??




 まぁ、あれだよね。


 転生者ってやっぱり、転生した世界からしたらやっぱり異物というか馴染まないっていうか。

 私のこの目からビームとかも異質だしね?

 口から破壊光線とか、竜のブレスかって感じだし、ダンジョン乗っ取りもそうだけど、「魔法の才能」さんのお仕事ぶり、半端ない。


 あれから練習したけどね。

 今では普通の(魔法を使う人)と同じようにウィンドカッターだの、ファイヤーボールも出せますよ。普通にね?


 だけど、この世界じゃ私は異質なんだろうなって思う。

 だから、ダンジョンに基本的には引っ込んでいますよ。こっちの世界の普通の人に迷惑かけたくないしね。


 あの空間で私に3つのチートを選ばせた存在ってさ、たぶん私の意志なんて関係なかったんだろうね。

 私はその存在の道具(コマ)で、いいように使われたってか。


 その手のお話でよく言われているように、きっと神様は直接世界にゃ手出しできないとか言う縛りがあったりして。


 大変そうなことはできないっていう私のリクエスト(拒否)通りだったし。

 人違いされて身代わりに処刑されそうになるとかね。それで不可抗力で破壊光線出しちゃうとかねー

それに選ばされた3つの能力だけどさ、こういう風になるのわかってて誘導されたんじゃないかなとか。


 神の手のひらで踊った気分だね。


 なんかねー。うん。溜息ついちゃうね。私の意志でしたことじゃないしさ。



 エストラーダ国で起こった事は、おとぎ話とか昔ばなしになっていくんだろうね。


 そして物語の最後にはこうしめくくられるんだろう。


「召喚なんかしてたら、悪役令嬢に国ごと滅ぼされるぞって」


 いや、王都を破壊しつくしたのは悪役令嬢の身内の、その時にはただの一般市民だった私なんですけどね。


 それとも「壮大なざまぁ話」として語り継がれるんだろうか。


 エレン姉さん、正気に戻らないから「ざまぁ」したとはいいがたいんだけど。


 ジーク王子とイーリーン(糞聖女)が、エレン姉さんをはじめとした人々にどんな酷い事をしたのかとかは、すでにサイドストーリーとなって吟遊詩人達によって歌われているらしいよ。

 あの悪夢のような事故の中で、生き延びた吟遊詩人がいたのかな?

 生き残った人から聞き出したのかもしれないね。


 なんか婚約破棄がとか、幼馴染の婚約者だとか誘拐されて行方不明の妹の存在がどうとかって嘘なのか本当なのか今となってはわからない事も含まれて歌われていたみたいだけど、もうどうでもいいね。


 どうでもいいってか、もうどうしようもないっていうか。


 関係者はエレン姉さんを除いてすべてお亡くなりになりましたしね。私のビームで。


 ビームの進行方向に王城や貴族街があったから、事実も関係者も証拠も欠片ぐらいしか残ってなくてさ。

 王都はちょっとじゃそっとじゃ再建できそうもない程、めちゃくちゃになっちゃったし。



 


 あれから数年たって、世界は対魔王との戦争でチリチリするように緊張しているけど、この世界じゃ小国のひとつでしかなかったエストラーダ国が違う国の名前に変わったって、何も関係なくってね。

 影響皆無だよ。


 エストラーダ国の王都が滅びたのは、バードーラ教の中枢が腐っていたからだとかで新生バードーラ教が派生したり、エストラーダ国がひそかに研究していた異世界からの召喚によって呼ばれた異世界の魔王が行ったせいだとか、いや魔族からのきたる勇者との決戦のための前哨戦だったのだとか、まぁいろいろ言われてるみたいだけど、私の意見はこうだ。


 エストラーダ国の民度が低かったせいも一因だと。


 ブルア侯爵家から、報酬に目がくらんでペド趣味のお貴族様に売りつける目的で次女(わたし)を浚った侍女も、事故ったのに証拠隠滅のために生き残った幼女を保護しないで孤児院の前に置き去りにした商人も、賄賂次第で無実のものを有罪と断じた司教も

 若い娘の処刑をゲスな好奇心で歓喜して歓迎した一般大衆も。

 王太子になるために幼馴染から奪った婚約者を陥れた王子も、異世界から召喚されたものの、これ乙女ゲーだってヒャッハーしてやりたい放題した聖女も。

 息子達のやりたい放題を咎めなかった保護者である王族も。


 これは間違った事なんだって思ったら、どこかで止まったはずなんだよね。


 まぁ、その場合は私は駒として別の動きをさせられていたのかもしれないけど。








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