プロローグ
都会特有の人の多さ。それに伴う喧噪、焦燥、熱。何度この光景を見ただろうか。もう十分だ。たくさんだ。人生、苦節二十余年。頑張ったほうだろう。
汗と同様、嫌な妄想は止まるところを知らない。
「はぁ……」
後ろに並んでいる人に聞こえるか聞こえないかくらいの、ため息。吐いた息と共に、この感情も消えてなくなるかと期待したが、そんなことはない。
努力が報われない世界。
一言で言い表すならば、その言葉が正しい。そんな世界で誰が努力をするというのか。努力が報われる世界。頑張ったなら頑張っただけ自分の力になる世界。最高だ、至高だ。妄想だ、想像だ、空想だ、幻想だ。
そんなことは分かっている。なんなら中学生くらいから分かっていた。好きな女の子が言っていた好きな本を読んでいたからって、俺は彼女と話すことすら出来なかっまあ、この話はおいておこう。
嫌なことを思い出したものだ。
湿度高めの午前七時半。ぐっと視線を上に向ける。眉に溜まっていた汗が、もみあげの毛に沿って流れていく。
幻想だろうが妄想だろうが、求める人がいるから出来上がるものでして。それに憧れる事の何が悪いのだろうか。まあ、ないものねだりだ。しょうがない。人生に絶望した人間が自殺しようと、しょうがない。
黄色の線に右足をかけ、左足を出す。結果、前に進む。あたりまえ体操だ。
一つだけ当り前じゃないのは、左足の先に地面がないことだ。
空中で目を閉じる。
右から迫る音。
息を飲むような音。
人生とは呆気ないものだ。最初は絶望の大泣き、最後は絶望の咽び泣き。
まったく、呆気ないものだ。
本当に。
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