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第零号【思案】

初作品につき、文法、なろうの作法等に自信がありません。どうか、温かい目でご覧ください。

キャラクターについては、私がネット上で購入したノベルゲーム用美少女立ち絵セット(金額にして約4000円分)から素敵だと感じた子を基に設定を作っていきました。元はティラノビルダーでノベルゲームを作ろうとしていた世界観になります。私の視覚情報から生まれた子たち故に、存分に私の嗜好であふれた作品になるでしょうが、ご容赦ください。


最後まで設定のブレなく執筆できればと思います。

「……ですので、ますます上級生は自己学習、課外活動ともに励むように。新入生の模範となる行動を心がけましょう」


 朝イチの全校集会は睡魔との戦いだ。腕を組んで堂々と寝ている奴もいるが、まさか自分がそうするわけにもいかない。いつ妹様が振り返って俺の寝顔を確認しても、おかしくないからな。


 もし見られたら…あの妹様がなんて言ってくるかなんて、想像することは容易だ。きっと帰宅するなり、家でちゃんと寝ろだの、中学校の頃から何も変わってないだの、責め立てられるに違いない。一つ違いの妹だから、集会ごとでの着席場所は決まって俺の学年と前後の位置関係になる。中学校にいたときからだ。そして困ったことにこの妹様は、こうした集会がある度に俺がちゃんと起きているかを逐一確認してくるのだ。


「……続いて、生活指導の先生よりお話です」


 そもそも、俺の寝顔チェックなんてやってる裕香だって、真面目に集会に出ているとは言えない気がするんだがな。とはいえ、裕香は俺とは違って見た目もいいし頭だってな……。なんてったって兄妹でこんなにも能力に差が出るんだろうか。部活の方だって、陸上の特待生でこの学校に入ってきたってんだもんなぁ。頼むから何か一つでもいいから才能を分けておくれよ、わが妹よ…!


「おいおい、何を難しい顔してるんだ? そんなに意地を張らずに、素直に寝ちゃったらいいのに」


 にやけ顔で囁いてきたのは、俺の隣席に陣取っていた晃だ。入江裕太と宮野晃。出席番号順に着席しなければいけないこの集会で、どう考えても俺の隣にいるはずのない奴が、いた。


「お前、クラスが変わったばかりなのに、初対面でよく席変わってもらうよう頼めるよな」


 新学期早々の新入生を交えた初めての集会だ。人見知りせずに頼み込める積極性は、こいつの才能だな。


「そりゃあ、裕太と居られるのも今年で最後だし。お前の面倒を見るのが、俺の役目だからな」


 俺は普通科で、こいつは明翔学園(ウチ)の目玉の食品環境科だから、三年次からはクラスが離れてしまうと、こいつはそう言いたいのだろうが、なんにせよ言い回しがやけに正妻チックなのが気持ち悪い。


 だが、明翔学園(ウチ)の食品環境科の実績は本物で、普通なら大学が協力してやるような産学連携の案件も年に何件かあるくらい高度なことをしているんだそう。そういえば、晃もフードロスとか貧困問題に興味があってこの学校に来たんだと一度聞いたことがあったな。こんなド田舎の学校で、入試倍率が5倍だか、6倍だと。まぁ、普通科でなんのとりえもない俺には関係のない話なのだが。


「今年はその正妻ポジから降りてくれよ、頼むから」


 えぇー、と不満そうな顔をして、うつむきながら晃はゆっくりと正面に向き直った。そして俺は去年一年間を振り返って、ほとんど何もせず、平凡に生きてきたことを悔いた。帰宅部で特段趣味もなし。今年の終わりには文理選択もしないといけないってのに、将来やりたいことも決まってないままだ。


「……続いて、新聞部……、あ、失礼しました。新聞同好会です。」


 どうしたもんかな、と心でつぶやき、しばらくは悩みごとをあれこれと頭に浮かべ思案していたが、結局は睡魔に勝つことができず、俺は深い眠りに落ちた。



 *



「……おい、起きろよ。もう皆帰っちまったぞ」


「ん……ああ」


 やってしまった。起きるなり講堂の時計を確認すると、針はちょうど10時10分を指していた。生徒たちはほとんどいなくなってしまっている。


「少し長引いたってことで、休み時間長めにとるらしいぞ。ホームルームの前に顔でも洗って来いよ」


 晃は俺の寝起き顔を見て、大げさに笑いながら言った。またもや時間を無駄に使ってしまったことに罪悪感を覚えながら、過ぎたことを考えても仕方がないと思案を振り切り、突如提供された余暇時間の過ごし方について考える。集会終わりはどこも混んでるし、気分転換になりそうな場所なんて。


「じゃあ、遅れるなよ!裕太君」


「君付けはやめろよ」


 また大げさな仕草で親指を立てて言うと、晃は講堂を出ていく生徒たちの群れの中に消えていった。ひょうきんな奴だ。晃を見送り、程なくして俺も立ち上がり、ひとつ大きく息を吸った。そして、体に取り込んだ空気をゆっくりと吐き出しつつ、恐らくこの時間に唯一気が休まるであろう場所へと向かった。

第壱号の発刊予定日は2020年1月17日17:00です。

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