死闘
死闘。今朝の角豚との闘いは死闘というべきものだったと僕は思い返していた。
今朝目が覚めてから僕がしたのはストレッチ、武器点検、そして洗顔。
ストレッチで戦闘準備し武器点検し少しでも生存確率を上げ、そして洗顔で気合と根性アップだ。
ホントは食事してから出発しようと思ってたんだけど、昔読んだマンガで戦いの前に食事はすべきではないって書いてあったのを思い出したのでやめた。
名残惜しいけど食べなかった。
思えばこれがあんなことになる原因だったんだ。
木立に身を隠しながら出発する。少しでも隠身スキルの経験値稼ぎになればいいんだけど。
向かうのは水源を中心としてみた外縁方向西側。どうやら湧き水付近が一番魔力が濃くて外側に離れるにつれ薄くなっているようなのだ。
だから目指す角豚は必ずいるはず。そして今まであまり探索していなかった西側を通ることで食料確保にも期待なのだ。
ってお腹すいたなー。食べないと槍を持つ手にも力が入らないような気がしてきた。
仕方ない。無限収納からホトルの実を取り出し一口かじる。やっぱうまい。
が、これは大失敗だった。
食べることに集中してしまい目の前に角豚が現れたことに気づくのが遅れたのだ。
まずい!このままではあいつの突撃にまきこまれてしまう!!
???
角豚の奴。いつもとなにか様子が違うぞ?なんだろ。俺の左手をものすごい気迫でにらんでいる。
って、もしかしてこいつホトルの実が欲しいのか?左手を左、上、下、右と大きく動かしてみると奴の視線も左、上、下、右とついてくる。
これは確実だな。
この時僕は小学生だったころに実家で飼っていた愛犬ロビンを思い出していた。
ちょっとからかっちゃろ。
「おいでおいでー」
左手を差し出し、奴がくわえようとした瞬間すいっと躱す。
奴がにらんでくる。
「ごめんごめん。ほらどうぞー」
左手を差し出し、奴がくわえようとした瞬間またすいっと躱す。
奴の殺気が一段階上がる。
左手を差し出すと予想通り左手自体を噛もうとしたので、パッ身をかわす。
奴の殺気が一気に上がり唸り声をあげる。
まるで『とっとと出せよ。持ってんだろぴょんぴょんしろよぴょんぴょん』とでも言いだしそうなヤンキーの目だ。
でも食い物につられた愛犬ロビン(ホントは角豚だけど)なんてまったく怖くない。
「いやースマンスマン。ほらよ」
今度は左手握りしめ差し出す。
うたがわしそうにフンフンにおいをかぐ角豚。
「残ねーん。持ってませんでしたー」
左手を開いてホトルの実を持ってないことを見せつける。
一生懸命左手のにおいを嗅がいでいるロビンからは見えないよう右手でホトルの実をかじる僕。
!!!
僕が食べていることに気づくロビン。
ニヤニヤする最低な僕。
ここからホトルの実を賭けたお互い素手の勝負が始まった!
角豚が左足をかじれば僕は左わき腹を殴る。
飛びかかってきて足バタバタ攻撃を食らえばジャイアントスイングで切り返す。
15分、いや10分くらいだろうか。
真剣勝負の結末は
・・・・・・。
僕の完敗だった。
昨日のトレーニングは無駄となってしまった。
戦いの後、僕の右ポケットから食べかけのホトルの実を取り出した角豚は去り際に唸った『明日は丸ごと1個持って来いよ』
敗者の僕に断る言葉はなかった。
道具組立 Lv.2
方向感知 Lv.2
危険察知 Lv.2→3 UP
逃げ足 Lv.3
回避 Lv.1→2 UP
木登り Lv.1
隠身 Lv.1→2 UP
フェイント Lv.1 NEW
槍使い Lv.1
投石 Lv.1
睡眠耐性 Lv.2
魔力耐性 Lv.4→5 UP
集中力 Lv.3
瞑想 Lv.2
<隠しスキル>
異世界語翻訳 Lv.1→2 UP
無限収納 Lv.MAX
無病息災 Lv.MAX
本日2話投稿しました。