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剣先スコップは売っていなかった

 翌朝、ギルドがすく時間になるまで町中をブラブラする。

 途中で見かけた屋台で串焼きを買って食べながら歩いていく。

 結局食事は、初日に食べた中央広場の屋台と森と静寂の宿が双璧だなーなどのと思いつつ観光気分で歩き続ける。

 串焼きを食べ終えて少ししたころおもしろそうな店を発見した。

 雑貨屋だ。

 早速使えそうなものがないか物色する。旅の間は自炊するつもりなので料理器具や食器が欲しかったんだ。

 携帯食料が売ってるだろうって?ダメダメあれは罰ゲームレベルのマズさですよ。煮込めばそれなりのうまさになるって聞いたけどどうせ火を起こすなら自炊のほうがマシ。生活魔法の風布も覚えたから匂いで魔物を読んでしまう心配も減ったしね。

 というわけで器にスプーン調理用ナイフを複数個買う。消耗品扱いだ。

 あと買ったのは厚めの造りの平鍋だ。背中にしょえばある程度防具代わりになりそうなところに惹かれ購入。ちょっと重いけどしっかりした金属防具よりは軽いし大きめの鍋なので背負った時の安心感もある。これはいい買い物をした。

 満足して店を出る。そろそろギルドもすいてきているだろう。

 よしよし。予想通りギルド内は閑散とまではいかないけどだいぶ人が少なくなっていた。

 早速地味子さんじゃなくてマイラさんの受付に向かう。今日も誰も並んでいない。

 「すみません。この間と同じように奥の受付で買取お願いしたいんですけど」

 カードを見せて頼む。Fランクになってることにちょっと驚いた表情を見せた後

 「それでは奥の買取受付へどうぞ」

 この間と同じようにドアをノックノックノック。

 「すみません。買取お願いしまーす」

 「・・・おう。入っとくれ」

 お許しが出たので入室しドアを閉めカードを見せる。

 「ほう。もうランクが上がったのか重畳重畳。今回も倉庫を使うかい」

 「はい。お願いします。」

 外側執事中身親方のギルマスが左奥のドアを開けてくれたので、遠慮なく入っていく。

 「ゴブリン32匹分の右耳と魔石がこれで、あとはアイスフォックス10匹です」

 「ずいぶん無茶したな」

 「森と静寂の宿のマスターにアイスフォックスの倒し方のアドバイスをもらえたのでなんとか倒せました」

 そういう意味じゃないんだがな、とぶつぶつ言いながら獲物をチェックしてくれるギルマス。

 「それじゃまずはゴブリンだ。こいつは解体してあるから1匹7鉄だから32匹で鉄貨238枚分だな。そしてアイスフォックスだ。こいつは毛皮が一番高く売れるがその毛皮がこれだけきれいだと評価を上げなきゃならん。ヘタに解体もしてないし魔石もまだ体内にあるようだから1匹半銀貨、10匹で半金貨だ。てことで合計銀7銅3鉄8でいいかい?今、半金貨と半銅貨が足んねーんだよ」

 「はい。大丈夫です。それでお願いします」

 「1日でランク上げするやつは久しぶりだ。この町には長居する予定かい?」

 「いえ。用事があるので明日出ます。そのあとまた来るかもしれませんが未定です」

 「おうそうか。意欲のあるやつが居ついてくれるとありがてえんだが用があるなら仕方ねえな。また来てくれるのを待ってるぜ」

 そういって送り出してくれた。

 今日は後なにしようかな。買い忘れたものないかな。

 そうだスコップやつるはしは売ってないのかな?

 町中を歩き回ってみたが見当たらない。鍛冶屋に頼めば作ってくれると思うけど明日までに間に合うかな?

 改めて鍛冶屋を探す。お、ここは生活用品を作ってるみたいだな。相談してみよう。

 「すみませ~ん。剣先スコップとつるはしが欲しいんですけど売ってますか?」

 「なんだいそれ?」

 カウンターのお兄ちゃんは知らないようだ。

 「ちょっと聞いてくるから待ってておくれ」

 「はーい」

 しばし待つ。

 「わけわからん注文したってのはあんたかい?」

 眼光鋭い兄ちゃんが奥から出てくるなりそういった。

 「多分そうです。僕が欲しいのは・・・。明日までに・・・」

 どういうものが欲しいか説明する。

 「つるはしは鉱山近くの鍛冶屋なら扱ってるがここにはない。おれも作れるが特急品だと割高になるぞ?明日までなら銀貨1枚だな。剣先?スコップってのは聞いたことがないから明日までは無理だな」

 「それじゃつるはしをお願いします。前金銅貨5枚でいいですか?」

 「おうよ。明日の昼までには造っといてやらあ。残金用意して来てくれよ」

 「あと普通のスコップはありますか?」

 「それはちょうど今作ってるところだ。明日つるはしと一緒に渡せるぞ」

 「わかりましたお。お願いします」

 よかった。欲しいものは何とかそろいそうだ。

 町中をさらにブラブラしまた串焼きを食べる。夕食は宿で頼むつもりだったけど予約制だったことをすっかり忘れて出てきてしまったのだ。残念。

 暗くなってきたら宿に戻り明日の朝食を予約し湯を使って就寝。


 翌朝食事をとっているとおかみさんが話しかけてきた。

 「どこに向かうんだい?」

 「魔の森にちょっと用事があって・・・」

 「うちのに魔の森は危険だって聞かなかったのかい?あそこはね・・・」

 魔の森のうわさをいろいろ教えてくれるおかみさん。でも

 「僕はこれでも斥候系のスキルがあるんで危なくなるようなら逃げてきますよ。心配してくれてありがとうございます」

 「ま、それならいいんだけどね。魔術研究所のお偉いさんみたいにならないよう気を付けなよ」

 数年前、魔術研究所のお偉いさんが護衛に兵士を10人くらい引き連れて魔の森探索に向かったが全滅したそうだ。

 あれだけ魔物が多ければ10人くらいじゃ無理だよねえ。

 「そんなことにはならないように気を付けます。また機会があったら泊まりに来ますのでよろしくお願いします。ごちそうさまでした」

 そういって宿を出る。

 今回は前回マップをアンロックした道をたどるつもりなので前回よりは楽なはず。

 ほほを両手で張る。

 それじゃ行きますか!


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