それから1週間は
それから1週間は採集と訓練にほとんどの時間を費やした。
採集した果物を何度か角豚の集会所に持って行ったことで角豚たちとの交流も深まり、初日に逃げ出した川辺にいって水浴びすることもできた。
でも大目標であるこの世界の文明促進はまったく進んでいなかった。
文明に影響を与えるには人里に行く必要がある。
そのためには森の外に出る必要がある。
そしてそのためには森の外縁にいる凶悪な魔物を倒さなければならないのだ。
暇な時間にはロビンも戦闘訓練に付き合ってくれるけどそれが効果を上げているかはまったく自信がなかった。
そんなグチをロビンに話してると『すげえ臭い草があるけどそれをこすりつけたらほかの魔物も近寄ってこないんじゃないか』と今更な情報をもらうことができた。
さっそくその草の群生地に案内してもらうと確かにちょっと臭い匂いがしてきた。
だがロビンは『俺はこれ以上無理だ』といって離れて行ってしまった。
僕は大丈夫だけど角豚には苦しいってことか。これは期待できるかも。
群生地に入り久しぶりにスマホで見てみると
名前:嫌魔草
状態:成熟
食用:不可
毒:強。魔力が高いものには匂いだけでも毒となる。食べると毒効果倍増。
メモ:魔力の高い地域に自生する草。処置により薬の素材となる。
おお、素晴らしいじゃないか。
薬の材料になるなら高く買い取ってもらえるかもしれないしちょっと多めに採っておこう。無限収納に入れておけばロビンに匂いで迷惑かけることもないだろうしね。
てゆうか、もしかしてほかにも薬の素材いろいろあるかもしれないよね。
すっかり忘れていたスマホのカメラ機能でいろんなものをチェックしてみた。
ついつい夢中になって探しまくってしまったけど成果は大漁。
薬の素材になるものがいくつかにメモ欄に貴重と書いてあった素材もゲット。
これには僕もニッコリ。
が、最終の途中でおかしなものも見つけてしまった。
見るからに弱った虫をカメラで見ていたら、その虫が死んだ瞬間死骸が真っ黒な霧状になり『瘴気』と表示されたんだ。
瘴気自体はすぐに周りに散って行ってしまったんだけどどう考えても体に悪そうだよね。
近くの集会所に行って角豚たちにこれがなんなのか聞いてみよう。
集会所に行ってみるとロビンの奥さんがいた。すでに何度も顔を合わせるから気楽なもんだ。
「こんにちは。ロビンは戻ってますか?」
『いるよ。あっち』
ロビンと比べて流暢な口調じゃないけどこれはロビンのほうが特殊らしい。
「ありがとう」
教えてもらったほうに行くとロビンがほかの角豚たちとなにやら話していた。
「ロビン、ちょっといいかな?」
『おういいぞ。どうした?』
さっきの瘴気のことを話す。
『ああ。あれが見えるのか。このあたりで動物を殺すなといった理由があれだ。瘴気が増えると魔力が不安定になる。魔力が不安定になると人や魔物が狂うといわれているんだ。だから俺たちはそれを阻止しようとしているって訳だ』
なるほど。
「さっきの虫は?」
『それぐらいじゃ大きい影響はない。でもないに越したことはないから虫は俺たちが食ってるんだ』
どうやら角豚が一口で食べてしまえばほとんど瘴気はでないらしい。
「大変だね」
『それが俺たちのお役目だからな。不満はない』
「ほかにもこんな場所はあるの?」
『魔力の吹き出し口は何か所かあると聞いている。どこにあるかは知らないがそこにも俺たち角豚のように役目を持った魔物がいるらしいぞ。詳しくは知らないがな』
そんなことを聞いたらほかの場所がどうなっているか不安になってきた。
これはできるだけ早く森を出たほうがいいかもしれないな。
「そっか。それじゃあほかの魔力吹き出し口を見に行ってみようかな」
『本気か?』
「うん。気になるからね。ここに転移したのも魔力吹き出し口を見張れって意味かもしれないしさ。だから数日準備したら僕は森を出るよ」
『そうかわかった。気を付けて行けよ』
「ありがとう。そっちも気を付けてね」
そういって僕は寝床に戻った。
あと何日かだけだけど頑張ってスキル上げしよう。
嫌魔草が手に入ったから、隠身、投石、逃げ足を中心にね。
本日2話投稿しました。




