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赤の女王と白兎
時計を失くしたって白兎から聞いた時は耳を疑ったわ。あんなに時計好きな彼が時計を失くすなんて、何かの間違いかと思ったわ。
「時計を失くしたって聞いたけれど。」
「…すみませんでした。」
別に怒ってる訳じゃないのよ、そんなに謝らないで。失くすくらい悪いことじゃないわ。
「いいわよ、また買えばいいでしょう?」
「それじゃあ駄目なんです!」
「どうして?」
失くしたものは買えばいいじゃない、そんな一点物でもないんだから。そりゃあお金はかかるわ、でもそれくらい大したことでもないでしょ?
「紅城さんから貰ったものだから、どうしてもあれじゃないと駄目なんです!」
「そう、なら好きにしなさいよ。私は探さないから。」
「はい、お好きにさせていただきます。」
どうしてそこまであの時計がいいのかしら。買えば同じものなのに。
紅城が白兎の時計への執着に理解できない話。