笑い猫と帽子屋
アリスと弥生っていう何かは忘れ物を取りに帰ってしまった。
俺は先に帰ってと言われたから帰る。
だからといって、これと一緒に帰るのは勘弁してほしいんだけど。
「玲音君、帰らないの?」
隣に居た赤毛はそう尋ねた。
「帰るけど、その前に寄り道するから先に帰った方がいいんじゃない。」
「寄り道するの?どこに?」
「…コンビニ。」
「あ、楽しそうだね、付いてっていい?」
紅茶野郎は理解力が無いらしかった。普通に一緒に帰りたくないという言葉の言い換えなんだけど。
「コンビニって楽しいの。」
「ケーキとか、あと紅茶補給出来るし、コンビニは好きだよ。」
彼は何が楽しいのか、嬉々としてそう言った。
言ってる意味も解らないけど、なんでコンビニなのか、そんな同級生と一緒に行きたがる神経も解らない。
俺は、嘘ならいくらだって言える口だけど、本当のことを言うのは大の苦手なんだよ。別にここで突き放しても心が痛むとか無いけど、そんな単純なことだって俺は言えなかった。
あれこれ悩んでると、1つの嘘が思い浮かんだ。
「あ、しまった。」
「どうしたの?」
「家の用事思い出したから先に帰るわ、じゃあな。」
用事。単純な言葉だけど、使い勝手は最高に良い言葉だ。
用事の内容を細かく聞く人は基本居ないから、これで逃げられるだろう。
「そっか、じゃあまた明日ね、玲音君。」
案の定、聞いてこなかったから1人で帰れる。
俺は学校近くの横断歩道を素早く渡ってそのまま家に帰った。
“夢にてアリスは不思議の国を見る”の
『アリスと三月兎』でアリスと一緒に帰れなかった玲音視点の話。






