笑い猫とアリス
退屈だ。
登下校ってどうしてこんなに退屈なんだろう。
延々変わり映えしない通学路を行くなんて、いっそのこと猫にでもなってそこら辺を散策したいくらいに、学校までの道はとにかく退屈だった。
通学路から外れて寄り道でもしようか。あいにく時間はたくさんある。間に合う範囲で行けばいいんだ、学校なんて。
そうして少し道を外れて、辺りを観察する。何もない。…いや、何もなくはなかった。似たような制服を着た女の子が同じ場所をぐるぐると行ったり来たりしている様子が見えた。何かの儀式か、はたまた迷子か、多分後者なんだろう。どっちにしても面白そうだから、俺はその子に近づいた。
どうしてか、あの子のことがとても面白そうだと思ったんだ。
きっと今までに出会ったことのない、面白い人だとこの時思ったから俺は、その子に話しかけたかった。
“退屈じゃない”会話が出来ると、そんな不確かなことで笑えた。
期待と興味と、…何か別の感情が俺の足を歩ませた。
そうしてやっと、声をかけるに至ったんだ。
「迷子?」
これが彼女との初めての会話だった。
“夢にてアリスは不思議の国を見る”の
『アリスと笑い猫』の玲音視点の話。