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第八十四話 きょうこうさま ごとーじょー

「こちらなります」


初老の紳士が、私とカミーナを、ギルドの敷地の奥にあるゼクスの屋敷へと案内する。

例のギルドの代表の方だ。

ゼクスの屋敷へと入り、ホールで紳士がカミーナに声をかけた。


「すみませんがお腰の武器、それはお外し下さい」


「こちらですね。どうぞ」


カミーナが素直に、腰に吊るしていた細剣(レイピア)を紳士に差し出す。


「……ありがとうございます。では、ごゆるりと御滞在をお楽しみくださいませ。ご用件がございましたら、お呼びだし頂ければ」


そういって、紳士は一礼をし、玄関の扉を閉めて、そのまま出ていってしまった。

どうやら彼の仕事には、屋敷の中での案内は含まれていないらしい。

まあ、何回か訪れたところでもあるし、私は特に迷いもせず、廊下を奥へ奥へと進んでいく。

カミーナは、私の後ろをついてきながら、キョロキョロと辺りを見回している。


私も初めてここに来たときは、調度品などにあらわれる、ギルドのその財力に度肝を抜かれたものだから、カミーナの気持ちもわからないでもない。本当にすごいよね、ここ。


私たちは、廊下を進んだ奥の部屋、この屋敷の主の部屋のドアノブに手をかけ、扉を開けた。


部屋の左側の大型のソファがまずは目にはいる。

そこには三人が座っていた。


ゼクスとオクトーバー司教とが互いに向かいあって座り、オクトーバー司教の隣にゼクスと同じ銀髪の美しい女性が座っていた。


私よりも年上。友人のナレンよりは若干若いと思われる。

物腰には落ち着きと気品があり、銀色の長い髪がさらさらと、胸元に垂れている。

非常に美しい女性で、雰囲気は深窓の令嬢といった感じだ。


……ただ、ちょっとだけ気になるのは、やや頬が赤いような?


突然、カミーナが私の前に出て、私を背後に護るかのような素振りをみせる。

そして、慌てたように腰のあたりをばたばたと、何かを探すように慌てふためいていた。


「ん。どうしたの?」


私は小声で聞く。


「あ、すみません」


カミーナは驚いたように言って、ふと我に返ったのか、赤面しながら私の後方へと下がった。

いったいどうしたんだろう?


「アインスさん。……いえ、ソニヤ姫」


「え! ちょっ!」


ねえ。ここには、教皇様やオクトーバー司教なんかの部外者もいるし、なんで、本名言っちゃうのよ!


「……それに、カミーナさん。ようこそいらっしゃいました。前に話したと思うけれど、この方が、僕の親戚のアンジェ。教皇を努めている」


私の抗議の視線になんら怯むことなく、笑顔のままに言い切るゼクス。


「アンジェともうします。はじめまして、ソニヤ姫! あなたとお逢いできることを、どれ程心待ちにしていたことか!」


教皇アンジェが立ち上がり、私の方に近づいてくるなり、両手でもって勢いよく握手をしてきて、そのままの勢いでいきなりハグをしてきた。


私は引きつつも、顔には一生懸命、笑みを作る。

だが、教皇は近くで見ると、顔が上気して、息遣いも若干荒い。

ちょっと怖かったので、抱きつきが弱まったところで、身体をするりと抜けさせ、なんとか間合いをとる。

だが、教皇は今すぐにでも、また抱きついてきそうな勢いだ。


「ご、御高名なアンジェ教皇にお会いできたこと、恐悦至極にございます」


一応、相手の方が格が上なので敬意を示す。


「良いのよ、ソニヤ。私のことは気軽にアンジェと呼んで」


「……で、では、アンジェ、さん」


いきなり、馴れ馴れしい奴だなあ。

でもまあ、揉めると後々面倒なので、とりあえず、アンジェさんと呼ぶことにした。

一応、年上みたいだし。


「ねぇ、ソニヤ。実は私、あなたに早く見せたいものがあるの。もう我慢できないから、ちょっと私の部屋に来てくれないかしら?」


「え、えーと」


いきなり、何を言い出すのだ、こいつは。


「……」


私の隣に立っているカミーナも、あまりの展開の早さに、口をポカンと開けて、ただただ放心している。

どうやら、事の成り行きについていけないらしい。


「……」


見ると、ソファに座っているオクトーバー司教も同じように口をあんぐりと開けている。


「アンジェは仕方がないですねえ」


ゼクスが珍しく苦笑をしている。


「……はあ。まあ、そこまでおっしゃるのでしたら」


「うふふ。嬉しいわ。さ、行きましょう♥️」


断る理由も特になかったので、教皇アンジェの部屋へとついていくことにした。


「……はぁ、はぁ♥️」


息づかいも荒いし、私の腕に身体全体を絡み付かせるのはどうかと思ったが、邪険にすることもできず、させるがままだ。


アンジェの部屋の扉を開くと、キングサイズのどでかいベッドが一つ、部屋の真ん中にどーん、と置いてあった。

それ以外には調度品などもなく、教皇という大層な肩書のわりには殺風景な部屋だった。


しかし、教皇の私室というには、あまりにも物が少なすぎるような?


「うふふ♥️」


アンジェは、部屋に入るや、扉を閉め、ガチャリと鍵をかけた。


「え……、なんで、鍵を」


かけるのですか、と聞こうと思った矢先、目の前でいきなり、アンジェが服を脱ぎだした。


「へ?」


我ながら間抜けな声がでた。


全裸のアンジェは、たしかにそこだけを切り取って美的に見るならば、まあ、裸婦の絵画のように、美術品としては一級品かもしれない。


しかし、アンジェのその顔に浮かぶ恍惚な表情からは、美的なものというよりも、欲にまみれた俗物としての姿しか見てとれない。

あなた、一応、教皇ですよね?


「うふ。うふふ……♥️」


アンジェは笑みを浮かべながら、私の手にとあるものを渡してきた。


「さ、さぁ、始めましょう、ソニヤ。わ、私、もう我慢できないの♥️」


見るとそれは、木製の品で、二つの角のようなものが両側から突き出ている品物だった。


……ってこれ、『双頭ディ○ド』じゃないの!


さすがにキレた私は、後先考えずに、その『デ○ルド』を、力いっぱい、アンジェへと投げつけたのだった。


というわけで、リッチーさんことヘイシルとならぶ、問題児、教皇アンジェ登場です。

実はこの二人の関係って、前作では明記しなかったんですけど、今作だと、ちゃんと書くかも。

あと、わかっているとは思いますが「ディル●」は検索しちゃダメですよ。


次回更新も来週を予定しています。たぶん、閑話になるかと。

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― 新着の感想 ―
[一言] それを投げつけるだなんてとんでもない!
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