第六十七話 おたんじょうびってうれしいね
「ハッピーバースデー、ソニヤ!」
王都トルテにある王宮の一室にて、誕生記念パーティーが開催された。
私のですけどね!
この世界にもちゃんと、誕生日という概念があるらしい。
何でもかんでも、現代日本を基準にしたイベントを、これでもかと詰め込むのはよくないと思います。作者さん。
あ、元のエロゲーの作者さんに言っているだけで、本作品(ソニヤ姫奮闘記)の作者さん(ゲームマスター)には言ってませんからね。そこのところは誤解なきよう。
……えー、こほん。
閑話休題。
色々と個人的に思うことはありますが、このパーティーにだされている食事が、とてもとても美味しいので不問にいたします。
料理の一例を紹介してみると、香辛料がたっぷりとかかった豚一頭をこんがりと焼いた豚の丸焼き。しかし、顔がちょっとグロいので、ずっと直視するのはやや困難。
クリーミーなカボチャのスープに入ったスパゲッティ。これは甘くてとても美味しい。
それに、焼きリンゴがのせてあるサラダも、胃もたれするお腹には非常に優しい感じだ。
個人的な一推しとしてはドライフルーツがたっぷりと入ったパウンドケーキを選びたい。香辛料とドライフルーツの甘味が絶妙にマッチしており何個でも食べられる感じだ。
うーん、この世界。現代日本と比べるとクリティカルに危険な世界ではあるのだけれど、ご飯は美味しいし、皆、優しいし。
そういった意味では、実は嫌いではないかも。というか、はっきりいうと好きかも……。
私は父であるメルクマ国王の方に近づいていき、ぎゅっと抱き締める。
「お父様。このようや素敵な会を開いていただき、まことにありがとうございます!」
とりあえず、父親に抱きつき、感謝の言葉をのべておく。
やはり、モノをねだるには、こういった甘えん坊作戦が有効だ。
父の相好が崩れているのはご愛敬。
ただ、筋肉だるまな父の満面の笑みは、少々キモいです。ごめんなさい。
「ソニヤ様。こちらは私からのプレゼントにございます」
そういって、侍女のカミーナが、かわいらしいリボンがあしらわれた箱をくれた。
「中を開けてもいい?」
「もちろんでございます」
私は一つ頷くと、リボンをほどき、箱を開けてみる。
中には小瓶が入っていた。
「……これは」
私は小瓶の蓋を開けてみると、結構強い匂いがあたり一面に漂った。香水かな。
「ふふ。カミーナありがとう」
香水をつけることは、あまりないのだけれど、こういったプレゼントは素直に嬉しい。
「ソニヤよ。我からはこれを進呈しよう」
そういって、未だに我が国の食客として居座っている、元皇帝のナレンが、手をパンッパンッ、と二つ叩いた。
その音を合図に、奥の扉が開き、荷台に乗って、豪華絢爛としか表現しようがないプレゼントが運ばれてきた。
「やはり、我からのプレゼントとしては、消えものが良かろうと思ってな、国の職人たちに、飴細工を作らせてみた。食べてやってくれ」
「……あ、ありがとうございます」
見た目は鳳凰の飴細工。色もカラフルで豪華絢爛だ。
でも、これ、食べないといけないんだよね?
ちょっと、もったいないかも。
「……ソニヤ姫、僕からは、こちらを送らせていただきますね」
そういって、参加者リストに事前には載っていなかったゼクスが木箱をくれた。
私の誕生会にゼクスが参加するのはサプライズだったらしく、父親が参加を聞いて大喜びしていた。
ゼクスも中を開けても良いと言ってくれたので、木箱の中を確認する。
なんと、金細工だった。ネックレスかな?
彫り物が精緻で、非常に高そうだ。
「す、すみません、こんな高価なものを」
「気にしないでください。ジュエリーは、美しい女性をさらに引き立てるものですよ」
相変わらずキザなセリフをさらりという人ですね。
「あ。そういえば、ソニヤ様。我がギルドの特別顧問に就任されたマオール様から、プレゼントを預かっております」
ゼクスがカミーナの方に一つ頷くと、カミーナが、机の端の方に置いてあった二つの質素な箱を持ってきてくれた。
「一つは、ソニヤ様に。……あと、もう一つは、アインスさんに、手渡してくれ、と」
アインスへの件については、ゼクスは小声で耳元で語りかけた。
魔王様からのプレゼントですか。
ちょっとどきどきする。
正直、前回のやらかしからこちら、まともに顔を会わせるのが恥ずかしく、しばらくあっていない。
もう少ししたら、心の準備が整うと思うのだけれど……。
目の前の現実に意識を戻す。
カミーナから箱を受け取り、中を見てみる。
ソニヤ宛てには、珍しい色の宝石で飾られたペンダントだった。
その宝石は鈍いピンク色なのだが、見る角度によって微妙に色彩を変える。
そして、アインス宛ての箱の中には、なにやら古くさく鈍い光沢を発している銀色のブレスレットが入っていた。
「これは?」
「む。このペンダントに使われておる石は東国の貴石サンパルゴじゃな。珍しい」
「さすがナレンさんはお詳しい。そうですね。この石は東の大国、大中央華帝国でしか産出されない、貴重な逸品ですね。しかし、マオールさんが、こういった品物に詳しいというのは、少しだけ意外な気がしますね」
ナレンが横から覗きこみ、ゼクスが、ソニヤ宛のプレゼントを鑑定をしてくれた。
これはなかなかの逸品らしい。
「しかし、これは……」
そういって、古い銀色の腕輪を見て、ゼクスが絶句している。
「うーん。なんじゃろうなこれは? 魔力を感じるが、我にはわからん。骨董品かの」
ナレンが眉を寄せて唸っている。
「いや。いいでしょう。……ソニヤ姫。こちらのペンダントは何かのときには売り払って財産にするとよいかも知れません。しかし、この銀の腕輪は、肌身離さずお持ちになることをお奨めいたします。ことによると、その腕輪一つのために戦争が起こりかねませんからね」
凄まじく物騒なことをゼクスが、微笑みながら言ってくれた。
いったいなんなんですか、この腕輪は。
その後しばらくは、パーティーに参加してくれているお客様たちをホストとして歓待した。
私だって王家の端くれに連なる者。仕事はしっかりといたします。
客人たちと談笑をしていると父親がやって来た。
「ソニヤよ。楽しんでおるかな」
「はい。お父様。このような素敵なパーティーを開催していただき、まことにありがとうございます」
「うむうむ。……ところで、な。ソニヤよ。……その、なんだ」
ん。なんだか、お父様、もじもじしてません?
はっきりいって、気持ち悪いですよ?
「……ええいっ! ソニヤよ。ゼクサイス殿との進展は、その後、ど、どうなっているのかな?」
いきなり、変なことを聞いてきた。
「はい? ゼクサイス様ですか?」
「そうだ」
「え、えーっと。ゼクサイス様には、色々とお世話になっていることはたしかでございますが、私たちに特筆すべき事などありませんよ?」
「うむうむ。まあ、そういうものかもしれぬな。若い者同士はな」
そうかそうか、などとにこやかに笑いながら父親は去っていった。
本当にわかっています?
「では、ソニヤの十八の誕生日を祝って、かんぱーい!」
最後に父王の乾杯でパーティーを締めたけど、ん。ちょっと待って。
私、今年で十八って!?
『この作品の登場人物は皆、成人しております』
と、たしか、元のゲームのパッケージに小さく書いてあったはずような……。
もしかして、昔は十五、十六才あたりで成人する、というのが基本だから……。
なんだか、大人の世界の闇を見た感じがした。
今回は、結局、閑話ではなく普通のエピソードになりました。
次回は閑話の予定です。
一応、来週を目標に執筆します。
ちなみに、閑話は、毎回書きおろしなので、プロットから作らないといけないので、実は、コストがかかってます。参考までに、現在、プロットはゼロです(笑




