表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/138

第六十五話 こすぷれぱーてぃー

祝! 三十万文字突破!

まさか、こんなに長くなるとは思っていなかった本作ですが、皆様に愛されて、ここまで描く事が出来ました。

原作のストックも六割がたは使い切ってしまったので、後半戦もがんばりたいと思います!

「はぁ。『コスプレパーティー』ですか?」


「はい」


ゼクスは、相変わらず真意が読めない笑みを、その顔に浮かべている。

しかし、コスプレパーティーって、なんですか。その怪しげなキーワードは?


私は、今日は、新しい発明のアイデアでも考えようかと、朝から王立大学校の図書館へと、調べものにやってきていた。

かなり肌寒い朝、大学校の講義がない休日だからか、静謐に包まれている校内。


図書館の本棚には大量の本が保管されており、私は、一人静かに机に座り、読書の秋を満喫していたのである。ゼクスがやってくるまでは。


そして、私が発明を探求する学徒から、ついつい調査が面倒くさくなって、小説を読み始め文学少女へと変貌したときに、偶然にもゼクスと図書館にて出会い、先ほどの会話が始まったのである。

しかし、ここでゼクスと出会ったのって、偶然ですよね?

まさか私の居場所を四六時中監視、とかしていませんよね?

私はゼクスの笑顔を胡散臭げに見つめ返した。


「百歩譲ってコスプレパーティーは良いとしましょう。でも、なんだってまた、私をそういったパーティーへと誘うのですか?」


「おや。ソニヤ姫は乗り気ではないのですか?」


「……えーっと、そういうわけではないのですが」


単に、ゼクスの真意が図りかねているので、警戒しているだけです。


「ふふふ……。ですが、ご安心ください。今回は実はソニヤ姫には用事はないのですよ」


「ん? 話が読めませんが」


私に用事がないのに、パーティーに参加をしてみないか、というのはどういうことですか?

意味が全然わかりません。謎かけですか?


「おや。誤解を招いてしまいましたか。申し訳ありません」


全然、申し訳ないなんて思っていなさそうな笑みを浮かべるゼクス。


「……実は今回は、ソニヤ姫ではなく、僕の友人でもあるアインスさんを是非ご招待したいと思いまして」


……ふむ。

私をアインスとして招待したい、と。

ソニヤ姫ではなく、仮の姿である商人の娘アインスを、と。


「……つまり、私アインスはそのパーティーにおいては主役ではなく『脇役』ということですね」


「……さすが姫は話が早い」


細めた目から、こちらを試すように瞳を光らせるゼクス。


「簡単な推理です。そして、ソニヤ姫ではなく、アインス、と名指しをするからには、アインスと親しい人物が主賓のはずです」


「ふふっ。あなたは本当に頭の回る方だ。……僕の妻に是非に、と思ってしまうほどですよ」


ゼクスはいつもの調子で、どこまでが本気なのかわからないことを言う。

しかし、ゼクスのその発言を、一部だけ切り出して父王に聞かせてやれば、泣き咽びながら、喜ぶだろう。

だが、私はゼクスの戯言を黙殺して、単刀直入に聞いてみた。


「主賓はマオール様ですね」


「御名答です」


にっこりと是認するゼクス。

私はじっと、ゼクスのその笑顔を観察した後、一つ気になることを確認することにした。


この問いはある意味、私たちの関係、魔王を介したこの不思議な関係についての、真の意味での質問でもある。


「ゼクサイス様。あなた様は、マオール様のこと、一体どこまでご存じなのですか?」


いつもよりも少し踏み込んだ質問をしてみた。

確証はないものの、ゼクスはマオールが魔王だと気がついていると思う節がある。

しかし、気がついていても、なお、ゼクスは魔王に協力している。

これは、ある意味、私と同様、何か別の強力な目的がなければ、なしえないことだ。


ゼクスは、私の目をじっとみつめた後、少し視線を外して、つぶやくように言葉を紡いだ。


「……マオールさんは、我が家の歴史書が本当に正しいのであれば遠い遠い関係者。誤解を恐れずに言えば、遠い親戚のような方ですから。……ですので多少のお手伝いを、と思いましてね。両家の繁栄のためにも、ね」


私の質問に、ゼクスは謎かけのように別のことを答えた。

私としては混乱してしまう。


「……遠い親戚」


魔王が遠い親戚?

いったい全体、どういうこと?


私の胡乱(うろん)な視線は無視して、ゼクスは、一つ会釈をした。


「少し、喋りすぎてしまいましたか。後ほど使いの者をやらせますので、詳細はそのときにでも。では、よろしくお願いいたしますね。()()()()さん」


「……喜んで参加させていただきますね。ゼクスさん」


ニコリと優雅に一礼をした後、ゼクスは図書館から出て行ってしまった。


「……ふむ」


コスプレパーティーかあ。

一人残された図書室の椅子に、どっかりと座り込んでしまう。

パーティーへと参加することに、いったい、私に何のメリットがあるのかと、自問自答してみると、色々とメリットとデメリットがあり、中々に悩ましいものではあるのだけど……。


だけどまあ、あの魔王が、私がいないところで、勝手にパーティーに参加したりして、変な騒ぎが起こったりするのも困りものではあるし。


あと、うん。そう……。

実際、ちょっとした打算的な計画もあるし……。


うん。これはもう仕方がない。

パーティーには、魔王のお目付け役として参加してあげようか。


前々から粛々と温めていた計画もあるし、こういった機会ならば実行するのもごくごく自然なことかもしれない。うん。


私は密かな、とある『計画』を胸に、一人頷くのであった。


◆◇◆◇◆


コスプレパーティー当日。

そこは以前にも訪れたことがある、ギルド地下の大ホール(第二十五話参照)。

大きさ的には、学校の体育館ほど、天井までの高さも優に十メートルを越えようかという大きさだ。

しかも、その壁にある金箔を施された、竜、獅子、鳳凰や、一角獣なんかの彫刻、天井に掲げられた天使や悪魔を描いた油絵。

それに壁一面に勢揃いしている英雄たちのものと思わしき胸像郡、あとは、ホールのまん中の、天井からぶら下がっている巨大なシャンデリアなどなど、どこぞの王公貴族が、全財産つぎ込んでも到底築けなさそうな代物が相変わらず鎮座している。

少しくらい、その財力を分けて欲しいものね。

そんな感想を抱いていると、入り口の方から、ゼクスが魔王様を連れて入ってきた。


「紳士、淑女の皆様! 今宵、このゼクサイス主宰のコスプレパーティーへとご参加いただきまして、まことにありがとうございます。今回は有名人のコスプレをしている方々もいらっしゃいますが、くれぐれも本物と間違えませんように」


そういって、ゼクスは私の方に視線を向けてウインクを飛ばしてきた。

しかし、人数的には数百を越える参加者がいる中、どうやって私を的確に見つけ出しているんだろう。不思議である。

ふと、そんなことを考えてしまう。


「それと、皆様にご紹介したい方がいらっしゃいます。……こちらのマオール様。シュガークリーを始め、いくつかの国にて所領を有する大貴族様ではありますが、此度、我が、商工組合(ギルド)の特別顧問に就任していただけました。これこそ正に我がギルドの誉れ。皆様、盛大な拍手をマオール様にお願い致します」


魔王様が前に進み出て、軽く手をあげただけで、会場内にスタンディングオベーションの嵐が吹き荒れた。

魔王様、何か、魔法でも使ったんですか?


それと当然のように、魔王も私の方に向きながら頷いている。

だから、なんであなたたちは、私の居場所がわかるんですか?


しかしそんなことよりも、私が一番気になったのは魔王様のその服装である。

たしかに、今回はコスプレパーティーなので、何を着ても良いとは事前に言われていたけど、魔王が着てきた服装は、前に一度だけ教会主宰の魔王軍対策会議で見せた『魔王のコスチューム』そのものであり、曰く付きの服を着て登場してくださった。

いったい全体、これはなんのジョークですか、と思わず突っ込みたくなってしまう。

あと、ホログラムで登場した前回の老人姿ではないので、ちょっと若々しく新鮮ではある。


ちなみに、私は胸元が開いた純白のドレス姿だ。

ソニヤ姫のコスプレ、という名目で着てみた。


……う、うーん、あんまり、魔王様の事は笑えないかも。


「あ、マオールさまー」


とりあえずせっかく魔王と目が合ったので、私は、魔王のところへと小走りに近づくことにした。


いつもどおり、来週更新を目標にがんばります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ