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第六十四話 てんねんおんせんにいこう!

「はぁ、はぁ……つ、疲れた……。ね、ねえ、カミーナ。そ、そろそろ休憩にしない?」


「ソニヤ様。休憩ポイントはもう少し先でございますよ」


呆れたような声音で、前を歩いている侍女のカミーナが、こちらに振り返りながら呟いた。

鍛え方が違うのか、彼女は息切れ一つしていないが。


私は今、カミーナと共に、王都トルテの近くにある小高い山(もしかしたら丘?)へと登山訓練に来ている。

最近ご無沙汰している体育教練の一環としてだ。

ここの山は、王家が所有し管理している山である。まあ、管理しているといっても、山の麓の林が王家の狩猟場であるので、林野管理人たちの主たる業務は、そちらの管理がメインではあるのだけれど。


そして、王家所有の林であるため、一般人は許可なく立ち入りが禁じられており、私達以外の人間が入ってくることは、よっぽどのことがない限りあり得ないことだ。


「もう、間もなくでございますよ」


「ふー、やれやれ……」


しばらく、歩いた後、やっとのことで、休憩ポイントに到着することができた。

背中の背負い袋の中から、牛の皮を加工して作られた水筒を取り出し、中の水を飲む。


「ぷはー! 生き返る。まさに命の水よね」


渇ききった身体に潤いが染み渡るのを感じる。


一息がつけたので、息を整えながら、近くにある少し小高いところから、山の周囲を眺めてみる。

天気も穏やかで、空気が澄んでいるように感じる。秋が深まってきているので、少し肌寒いが、赤、黄、緑、と実に紅葉が見事だ。


この世界。四季がちゃんとあるなあ。

まあ、日本人が作ったゲーム世界が元になっていると思うので、単に、そういった設定なのかもしれないけど。


「もう紅葉が満開ね」


「そうですね」


さすがに最近は急に冷え込んできたのと、山の中に入る、ということで、今日は割としっかりめに着込んでいる。


「ソニヤ様。実は先日、下見を兼ねて山の中を捜索したのですが、ここから少し進んだ先の、中腹あたりに、天然の温泉を発見いたしました。もし、よろしければ、ご案内いたしますが」


ん、天然温泉。

いいね!


「それは、ぜひとも案内してちょうだい」


「かしこまりました」


善は急げということで、私たちは登山を続けた。

ここの山は、観光登山などとは縁が遠い場所なので、当たり前ではあるが、登山道は石段などが整備されていない獣道だ。


一応、兵士の訓練などには使われている山ではあるので、登山の難所には、ロープや、鉄杭などで、最低限の補助がなされている。

しかし、それでも、素人にとってはなかなかにきつい道のりである。


最初は周囲を見ながら、紅葉が美しいなあ、などと風景を楽しむ余裕がまだあったのだが、今ではもう、もくもくと歩き続けるのみ。

まさしく修験者みたいな修行である。


個人的には、もうちょっと、歩くペース配分をゆっくりにして、周囲の風景を楽しむ余裕があってもよいのになあ、などと思うのだけど、体育訓練だとかでカミーナがなかなかに、速度を緩めてはくれない。……ケチ。


「こちらです、ソニヤ様」


「はひー。つ、疲れた……。も、もうちょっとなの?」


中腹に到着したころ、カミーナが、登山道を外れ、温泉の方へと案内をしてくれた。


「……あ」


目の前には悠々と川が流れており、水はとっても透明だ。

ただ、川の支流のところからは、モクモクと湯気が立ち上っている。

川に近づくために、下に降りてみると、砂利や流されてきた石が大量にあるのがわかる。

それと、ところどころ、崖があり、そこらに水溜まりが見て取れる。

私は試しに、背負い袋からブリキ製のコップを取り出し、湯気が立ち上るところから、水を汲んでみる。

そして、恐る恐る、そのカップを触ってみる。

熱湯一歩手前といったところか。


「お湯ね」


「はい。あとは、川の水で調整して、湯加減を作れば申し分ないかと、それとそちらに」


そういって、カミーナが、指を指し示すところには、崖の近くで少し湯溜まりなっているところだった。

ただ、石が積み上がって、周囲を囲っており、なんらかの人の手が加えられているのがわかる。


「昨日、私の方で、少し石を使って湯船を整えておきました」


「グッジョブよ。カミーナ」


カミーナ。あなたはなんて有能なメイドなのかしら!


私たちは近くの木陰で、着ていた服を脱ぐと、温泉に浸かった。


「はぁ……♥️」


なんという解放感!

周囲の大自然との一体化を感じる。

ああ、私は自然の一部なのね……。


生き返る。まさに、命の洗濯だ。

ここまで、登ってきた身体的な疲れが癒されていく。

……このままここで、ダラダラとずっと温泉に入っていたい。


私たちがのんびりと湯船に浸かっていると、一緒に入っていたカミーナが急に、近くに立てかけていた剣を掴んだ。


「ソニヤ様。誰か来ます!」


「!?」


ぎゃー!

こんな格好のところを襲われると非常に困る!


私はカミーナの背後で縮こまりながら、首を伸ばして、カミーナの視線の先を凝視した。


こちらに近づいてくる人影。


私たちが緊張しながら待っていると、その人物は口を開いた。


「あれ? 売女じゃない」


魔王の妹エミーが、素っ裸で驚きの顔をこちらに向けていた。

なんで、あなたがここにいるの?


◆◇◆◇◆


「……なるほど。あんたたちもここの温泉を探し当てたというわけね。なかなかやるじゃない」


そう言いながら、魔王の妹エミーが堂々と風呂に入ってきた。

いつもの黒色のゴスロリ服は着ておらず、その第一印象としては、お人形さんのように、ちっちゃくて子どもっぽい、という印象だ。


南のビーチでのタコ型の魔物に襲われたときや、この前の魔王の部屋での土下座騒ぎのときも思ったのだけど、エミーの肢体はちょっと幼い印象でロリコンどもが喜びそうな感じだ。

まあ、本人に言うと殺されそうだけど。


ちなみに私はエミーの実年齢は知らないので、本当は私よりも年上なのかもしれない。そこは本当にわからない。


「ええと、エミー、で良いかしら?」


「……本当は高貴な私に対してそのような馴れ馴れしい言葉遣いは万死に値するのだけど、この前の借りもあるから、特別に許してあげるわ。感謝なさい」


「……」


どこまでも尊大だなー、この娘は。

でもまあ、ここで事を荒立てるのは下策。

私は大人なのだから、広い度量を見せてやらないと。


私はニヤリと笑って、目を瞑り、大自然に身を委ねる。

しばらくお風呂に入っていると、冷たい秋の空気と、温かい温泉とが私の中で混じりあい、なかなかに極楽な気分になってくる。

しかも、まわりの紅葉も綺麗で、落ち着く感じだ。

なんというか、一献を傾けたくなってくる。

……当然、手元にはないけれど。


しばらく湯船に浸かっていると、エミーが私のことを、上から下まで、まさに舐めるように見入っていた。


「……な、なに?」


さすがに同性とは言え、こうも、なめ回すように身体を見られると気恥ずかしい。


「あんた、ちょっとむかつくわね」


「え?」


なんの前触れもなく、いきなりエミーがキレた。

エミーは叫ぶなり、私の胸をむんずと揉んできた。


「はぁん♥️」


いきなりの事なので、変な声がまろび出た。

今まで自分でしか揉んだことがない(この世界に来て初期の頃の話だけど、仕方がないよね?)ので、他人からむんずと生で揉まれたのは実はこれがはじめてのことだ。


「ち、ちょっ!」


さすがに抗議の声をあげる。

この女は、いきなり何をしてくれるのだ!


「くっ、この……」


そこで、わなわなと肩を震わせるエミー。


「この巨大な脂肪の塊がぁ! お、お兄様をたぶらかしたのね!」


そう言って、エミーが、私の胸をさらに強く揉み始めた。かなりご立腹なご様子だ。


こ、これはいけない。

ちょっと痛いし、しかも、な、なにやら刺激が強い。


「そ、そんなことするなら!」


くそー。そっちがそのつもりならば、私にも考えがある。


「ひゃん♥️」


かわいい声をエミーがあげる。

私は勢いよく、エミーの(自己主張が少ない)胸を揉んでやった。

反撃タイムだ。


……ん? でも、よく考えてみたら、この世界で他人の胸を直に手で触ったのって、これが始めてかも。

むむ、なんだか、段々とエミーが愛おしくなってきてしまった。

いけない、これはいけないと思いつつ、ついつい愛撫を続けてしまう。


こ、このまま、この時間をいつまでも……。


「はい。そこまでです」


そんなことを思いながら、無心に揉んでいると、カミーナに首根っこを押さえられて、止められた。

エミーはなぜか、顔を真っ赤にしてちょっとぼーっとしていたけど。


カミーナ。せっかくの私のハッピータイムをよくも邪魔してくれたわね。

悔しかったので、カミーナの胸もエイヤッと揉んでみた。柔らかかった。


「ソ・ニ・ヤ・さ・ま!」


このあと、めちゃくちゃカミーナに怒られた。

だが、反省はしていない。きりっ。


というわけで、頭空っぽな感じで更新です。

次回更新も、来週できたらよいなー、という感じです。

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