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第百三話 ぎいんしゅうにんしき

……ひ、広い。


魔法帝国の帝都にたどり着いた私たちは、そのあまりの広大さに呆気にとられる。


帝都の中央にある巨大な黒い宮殿。

魔王城『キャッスルオブテラー』の屋上庭園から、その街並みを一望してみると、そのあまりの巨大さに、改めて、今まで私たちが呼んでいた『戦争状態』というものは、自分たちの単なる一人相撲だったのだな、と理解できてしまう。

紳士的に彼らが接してくれていたからこそ、膠着状態になっていたのであって、我々が頑張ったからなんとかなっていたのではない、ということがよく理解できた。


しかし、この壮大な景色はなんと表現すべきか。

言うなれば、地方の田舎の街しか知らない人間が、現代の都心のビル群を最初に眺めた時に似たような気持ちだろうか。


シュガークリー王国から魔法帝国帝都への旅程としては、おおよそ三週間はかかったけれど、その間に、魔法帝国の現状を、リザードマンの書記官の人から簡単に教えてもらえたので大変に助かった。


……魔法帝国は、制度上は魔王(魔法皇帝)専制だけど、その助言機関として帝国議会があり、現魔王は、議会の議決をだいたいそのまま通しているらしい。

ある意味、啓蒙的な君主だ。


……まあ、単に、政務が面倒だから、部下に丸投げしているだけのような気もするけど。


議会の議員は、終身制で、特に人数に上限もないらしい。

私の議席は、議長枠にて推薦してもらえたみたいだ。

書記官の人が言うには、議長というのは、私が昔出会った、例のレッドドラゴンらしい。どこでどんな繋がりができるのか、本当にわからない世の中だなあ、と思う。


他には、西方諸国全体で五議席、帝国議会の議席が割り当てられたのだが、その巨大な利権を巡って、様々な権力闘争があったみたいだ。

話し合い?の結果、概ね、大手の国の、若い王子なんかが、任命されたらしい。

終身制なので、なるべく議会に長くいるための小手先の技だろうとのこと。


魔王城の屋上庭園、別名『空中庭園』には、私と同じく、新たに議員となる何名かの人間がいる。

ゼクスやナレンと目が合う。

彼らは、その王族枠で、帝国議員になった。


「ソニヤ姫。これからもよろしくお願いしますね」

「ソニヤは、もう猫を被らんのか?」


目があった二人が私に声をかけてきた。

私は肩をすくめてみせた。


「ゼクサイス様もナレン様も、よろしくお願いしますね」


「なんじゃ、猫を被っておるではないか」


ナレンが突っ込んでくるが黙殺する。

私は、気品ある姫君でとおす予定です。


……他にもアンジェ教皇も、魔王推薦枠で、議員になった。

ただ、こちらは、まだ帝都に着いていないのか、姿が見えない。

どうやら、教会内のごたごたが、まだ終わらないみたいだ。


「では皆様、こちらへとお願いいたします」


事務員の指示に従い、移動を開始する。


私たちは、今日は、各地への挨拶回りだ。

帝都のあちらこちらへと出向き、西方諸国から持ってきた貢ぎ物を配る。

様子を伺うに、葡萄酒が一番好まれている。

樽で持ってきて正解だった。


あと、帝都での、我々が滞在する一時的な宿の手配などの、細々とした事務仕事でお世話になった官吏の方々にも、お土産を配っておく。

経験上、こういった気配りが、あとあと役に立つのですよ。


そして、やってきました。

魔王様への就任挨拶の時間。

まぁ、当然と言えば当然なんですけどね。一応、私たちの主様(あるじさま)ですから。


目の前で、重々しく宮殿の大広間のドアが開く。


「……只今より、帝国議員就任宣誓式を執り行います。新人議員の方々は、係りの者の指示に従ってください」


私たちは言われた通り、作法に則って、式をつつがなく行っていく。

魔王様は、いまだにこちらに気がついていない。あんまり、やる気を感じない風に椅子に座っている。つまらなさそうだ。


式典の最後。魔王様に一人一人が挨拶をさしあげ、この式典は終わりとなる。


「麗し……」

「大義であった」


なにやら、口上を述べようとした議員の発言に被せるようにして、魔王様が発言をなされた。

非常につまらなさそうだ。


「よろしくおねがいしますね」


ゼクスが、魔王様に軽やかに挨拶をしている。


「ゼクスか。期待しているぞ」


魔王様が、にやりと笑って言った。さらに、立ち上がって、肩まで叩いている。

周りの官吏たちが、慌てふためいている。


魔王様はナレンにも軽く声かけをしていた。


……そして、ついに私の番がやってきた。

儀礼に従い、顔を()せて奏上する。


「……かしこみ、陛下へと拝謁できましたこと、喜びに堪えません。此度、帝国議員へとご推挙いただきましたご恩に報いるため、全身全霊をもって職務に邁進(まいしん)いたします」


手元の資料を覗きこんで、その顔に驚きを張り付けた魔王様と視線があった。


その驚いた顔を見たら、どうやら、今回のいたずらは成功したみたいなので、私もついつい、満面の笑みを浮かべてしまう。


「……西方より着任いたしました、ソニヤと申します。魔王様。」


というわけで更新です。

今後の展開はいまだに悩み中です。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] そろそろソニヤ=アインスってバラすのかな [一言] 魔王様一瞬心臓が止まったこと間違いなし
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