表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/138

第百二.五話 閑話 がくやうらのおしごと

「シルフィ。状況報告を」


「はっ。ご報告申し上げます」


軍服姿の特殊陸戦隊のシルフィ中佐は、けも耳を帽子の脇から出しつつ、しっぽをぴんとはり、直立不動のまま、自らの主であるゼクスに対し敬礼を行う。


「……現状、特殊陸戦隊第一班、第二班により、聖王国内の武装蜂起鎮圧作戦が、聖騎士団との合同作戦により進行中。また、第三班による、商工組合(ギルド)内の諜略作戦は成功し、多数派工作は終了いたしました」


「……わかりました。それと、近隣国からの介入は?」


ゼクスは椅子にもたれかかりながら、手元のカップで優雅にお茶を飲んだ。


「はい。第四班が、当該国内で、内乱を起こし、魔法帝国による武力介入を誘発させ、無事に問題のある勢力の駆逐に成功いたしました」


「それは、ご苦労様です。他には……」


「ダライ・トカズマ帝国のナレン様へと協力をし、無事に皇帝位へと復帰していただき、議員枠の確保に成功いたしました」


「これで、西方諸国五議席のうち、僕とナレンさん、の二議席が確保できましたね」


ゼクスはカップを机の上に置き、シルフィに微笑んだ。


「はい。他の三議席についても必要があれば、工作をいたしますが?」


「不要でしょう。我々の他にも、アンジェ教皇の議席と、ソニヤ姫の議席も計算にいれることもできますからね。多数派工作はこれで打ち止めとします」


「しかし、あのお二方には、こちらからの協力要請がしにくいのですが」


「よいのですよ。何事もバランスが寛容です」


「はっ。差し出がましいことを申し上げ、申し訳ございません」


シルフィは弾かれたように敬礼をする。


「いえ、良いのです。しかし、ソニヤ姫も、面白いところで顔がききますね」


「……議長でしたか? 調べてみますと、伝説にうたわれる、あの魔竜ザッハークそのものであるとか」


シルフィは、難しそうな顔をして、手元の報告書に視線を向ける。


「まあ、伝承など、どうとでも伝わるものですからね。そういえば、アンジェ教皇のことはききましたか? それと、僕のことでもありますが」


「……例の魔法技監のヘイシル殿のことですか? あの話は本当のことでございましょうか?」


やや困惑した顔でシルフィがゼクスに問いかけた。


「まあ、本当なんでしょうね。しかし、千年以上生きている……不死の王として存在し続けているというのは、それはそれですごいですね。……その血筋に、僕やアンジェが連なる、と報告されたことには、多少は驚きましたが」


いつもの微笑みを浮かべながらゼクスは呟く。その内心は伺い知れない。


「……しかし、アンジェ教皇とヘイシル殿を見ていると、たしかに、血の繋がりを感じるときはございますが」


やや、言葉を選ぶようにして、シルフィは呟く。


「そうですね。案外、アンジェの魔法力の高さも、先祖帰りなのかもしれませんね」


はあ、とため息をつくゼクスだった。


◆◇◆◇◆


「叔母上。これからは私も魔法帝国の帝都にお邪魔をすることになるので、どうぞよろしくお願いいたします」


とある暗がりにて、燕尾服を着こなした美少年の姿をした悪魔ベリアルは、叔母である、バニーガール姿の美女、悪魔ベルゼブブと相対している。


「……うーん、ベリアルや。それは困ったものですえ」


ベルゼブブは、その艶かしい肢体を床にごろごろと擦り付けながら、キセルを優雅に遊ばせ、紫煙を吐き出す。


「なにがでございますか?」


冷笑を浮かべながらベリアルが問う。


「……我らのような悪魔公爵が、ひとところに集中するんは、この世界の魔法バランス上、あまりよくないんえ」


「それはそうかもしれませんが、私はソニヤ様に忠誠を誓っている身。そうであれば、おいそれと、お側を離れるわけにはまいりません」


「うーん。そうやろね。我らにとっては、契約は絶対やしね」


はあ、と長々とベルゼブブは紫煙を吐き出す。


「はい。ですので、仮に魔法バランスが崩れ、問題が起こったとしても、それは、私の預り知らぬことでございますよ、叔母上」


そう言って、ベリアルは、おもむろに、鉄をも寸断する、漆黒の爪を構える。


「……そうでありんすね。そして、それは、わっちの主である魔王様にとっての驚異となるやもしれん」


そこで、ベルゼブブの目が黄金色に輝き、身体全体が、紫煙により包まれる。


「……そうなったら、ベリアル。わっちはそなたの首をとらないといかんのですえ」


煙が晴れたところには、一匹の巨大なハエが鎮座していた。

そこには、ベルゼブブの魅惑的な肢体は影も形もない。


「それでしたら、叔母上。我らはそれぞれの契約に従い、精一杯殺しあいをいたしましょう!」


そう言って、ベリアルは満面の邪悪な笑みを浮かべ、黒色の巨大な羽を広げるや、ベルゼブブへと疾走し、その鋭い漆黒の爪を振るった。


◆◇◆◇◆


「久しいのー、ソニヤよ」


「あ、ナレン。やっと皇帝の仕事から解放されたの?」


手をヒラヒラとさせながら、ダライ・トカズマ帝国の皇帝位に返り咲いたナレンが、ソニヤの元に遊びにやって来た。

赤毛が陽光のもと、きれいに輝き、その美貌を際立たせている。

ソニヤとナレンが二人並ぶと、侍従の騎士たちも、その美しさに見惚れ、相貌を崩してしまう。


「皇帝位になった次の日には、皇帝の廃位を宣言せねばならなかったがの。今はそなたと同じく、ぷーじゃよ」


「たしか、ナレンも魔法帝国の議員になるのよね? 私と一緒に帝都に行くのかしら?」


「いや。わしは、別に行かせてもらうことになっておるよ。色々と政治的に面倒なんじゃよ。じゃから、はじめは断ったんじゃがのー」


ナレンはおでこを指でつつきながら、やれやれと首をふる。


「じゃあ、なんだってまた?」


不思議そうな顔をするソニヤ。


「んー、ゼクス殿に頼まれてな。まあ、ソニヤもおるし、わしくらい、そなたの近くにいて味方をしてやらんとなー、と思ったんじゃよ」


「!! ……あ、ありがとね」


明後日の方向を見ながら、ソニヤが、ぶっきらぼうに感謝の言葉を述べた。

そのほっぺは真っ赤だ。


「お主にも、照れる、ということもあるんじゃな。くくく」


ナレンはニヤニヤと笑いながら、ソニヤの首に手を回し、優しく抱きついた。


というわけで更新です。

やはり、元の話がなく、プロットから考えるのは大変です。うーむ。

次回作品とかには、もうちょっとプロットを練ってから話を書かないとなー、と反省しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] また波乱の予感( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ