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EARTH OF END/ALTERNATIVE -DIEND-  作者: 吾郷夜月/原作:天元遊戯
第一章-集いし勇者編-
7/60

~拳と次元の弾丸~(後編)

雅史はマンティコアを殴り飛ばす。マンティコアの左前脚がグシャグシャに変形しており、上手く歩ける状態ではなくなっていた。


「お兄ちゃん凄い…。あのでっかいモンスターを殴り飛ばすなんて。」


子供達は、雅史をどんな風に感じただろうか。希望の象徴?天の使い?勇者?英雄?それは誰にもわからないが、子供の心奥深くまで刻まれているに違いない。

マンティコアはようやく雅史を強敵と認めたのか、雄叫びをあげ、先程より殺気に満ちた眼差しで雅史に襲い掛かる。


「まだやるってか。なら俺も本気でやってやるぜ!一撃粉砕!ガン・バレット!!」


雅史は右腕を反らし、マンティコアの顔面を殴り付けた。何本かの牙ごと顔の骨が砕ける音が鳴り響いた後、マンティコアは拳の威力によって再び吹き飛ばされ、絶命した。


祐斗は、自称錬金術師のへリスに絡まれて困っていた。彼女の言う“ラヴ”とは何なのか、その答えに辿り着けずにいた。


「錬金術ってね、等価交換なの。0から1は生まれないの。1から生まれるのは1なの。」

「その理屈は分かる。だけど、お前の言うラヴがわからないんだよ。」

「まだ分からないの?」


祐斗は再び考える。等価交換、ラヴ。ある事に気が付くが、閃いた瞬間に鳥型モンスターがへリスに襲い掛かる。祐斗はそれに気が付き、へリスを押し倒し、鳥型モンスターの攻撃を回避し、ハンドガンで鳥型モンスターを撃ち落とす。


「いきなり押し倒すなんて、ダ・イ・タ・ン」

「そういうんじゃない。」

「ちゃんとラヴ戴きました。」

「ビッチかよ!言葉通りのラヴだったのか!俺はてっきり自分の丹精込めて作ったハンドガンを使って強化された銃を作るんだと思ってたのに。」

「え?そうだけど。愛情込めた銃を媒体にして錬成しようと思ったからラヴだって言ってたんだけど、まさかもっと違う事考えてました〜?男の子だもんね。仕方ないよね〜。」

「あー!そんな顔で俺を見るんじゃない。撃つよ!答えは聞かないけど!」


へリスは祐斗の顔を見ながらふふふと笑みを浮かべる。祐斗は恥ずかしくなり、銃口を向ける。へリスもやり過ぎたかと思い、「ごめんごめん」と言いながら、足元に錬成陣を描いていく。その中心部にハンドガンを置き、錬成する準備を整えていく。


「…で、本当に錬金術が使えるのか?」

「ねぇ知ってる?十王神伝説って」

「話を逸らすな。十王神?そういえばそんな話は聞いた事あるな。ただの物語だろ?」


へリスは再び笑みを浮かべる。

十王神伝説。祐斗も話は聞いた事がある。それはポーカーで稼いでいる時に相手から聞いた話だ。でも、子供に聞かせるおとぎ話を、何故今へリスがここで十王神伝説の話を持ち出すのか、その意図は何なのか疑問に思った。


「そして、ここに白い果実があります。まずはこの果実を」


へリスは袖の中から白い果実を取り出した。その果実の白は純粋な白で何色も混ざっていないとても綺麗な白色の果実だった。その果実をいきなり祐斗の口を目掛けて投げつける。果実は祐斗の口の中にスポッと入り、そのまま丸呑みしてしまう。


『力が欲しい?あなたって答えを聞くのが好きじゃないみたいだから、そのままあげるね。どこにいても手の届かせる力、光天王の力をね。』


祐斗の頭の中に直接語り掛ける様に女性の声で問われたが、こちらの答えを言う前に頭の中に膨大な記憶と空間操作系の魔法と誰かの過去の記憶。それが脳内を駆け巡り、その膨大な情報量に激しく頭痛がした。


「はい、これで光天王の出来上がり!そして、これがアナタのハンドガンから錬成した光天王の武器、マルチハンドガンになりま〜す。」

「・・・・・・・・・・。」

「どうしたの?光天王の記憶が凄すぎてパニックになっちゃった?」

「先に…、先に言ええええええええっ!こっちの有無を聞かずに勝手に事を進めるな!ったく、俺は答えは聞きたくないが、俺の答えは言いたいんだ!勝手に何もかも決めやがって。…まぁ良い。これで空の敵と戦える様になったのは事実だからね。」


祐斗はマルチハンドガンを狙撃モードに変形させ、上空にいるマンティコアに照準を定める。心を落ち着かせ、トリガーに指をかける。呼吸を一定に整え、一点に集中し、トリガーを引く。銃弾はマンティコア目掛けて真っ直ぐに飛んでいき、マンティコアの羽根の付け根を撃ち抜いた。


祐斗は自分の周りに複数の次元の裂け目が現れ、上空を飛んでいる鳥型モンスターの真後ろに出口であろう次元の裂け目が現れる。さらにマルチハンドガンを二つに分離させ、二丁拳銃にする。


「銃撃のプレリュード!」


祐斗は踊る様に動き回り、次元の裂け目に銃弾を撃ち込んでいく。銃弾は次元の裂け目を通り、鳥型モンスターを後ろから次々と撃ち抜く。

先に羽根を撃ち抜いたマンティコアも上手く飛べずにこちらへと降りてくる。

祐斗は二丁拳銃にしたマルチハンドガンを再び一丁の拳銃に戻し、ライフルモードに変形させ、銃口をマンティコアに向ける。へリスは祐斗の後ろに戦闘を眺める。

マンティコアは祐斗に向かって突進してくる。しかし、冷静にマンティコアの動きを観察し、的確に鎮圧できる急所を照準に合わせる。へリスは逃げない祐斗の服を掴んで恐怖を堪えていた。祐斗はすれ違いざまに射撃して倒そうと思ったが、へリスが服を掴んでいる為、動けない。自分が動けないなら一撃で仕留めて目の前で停止させる。それしかないと思った。


「チェックメイトだ。」


祐斗はマンティコアの前脚を撃ち抜く。マンティコアはバランスを崩し、転倒する。マンティコアの速度、慣性の法則に摩擦係数を計算し、自分の位置よりも前で止まる様に前脚を撃ったのだ。


「俺も甘いな。鳥型の奴もそうだけど、このマンティコアも殺さずに鎮圧だもんな。」

「お見事です。でもこの後どうするんですか?」

「森へ帰すか、それとも殺すか。」

「ググググ…。」


マンティコアは辺りに墜落していた鳥型モンスターを喰らう。

するとみるみる内に回復し、何事もなかったの様にマンティコアは立ち上がった。


「アイツ、鳥型モンスターを捕食して回復しやがった。」


祐斗はマルチハンドガンを元の状態に戻し、マガジンを新しい物に装填し直す。


「おい、祐斗ー!」


声のする方向を向くと、雅史が子供二人を連れてこちらに向かっていた。

まだこちらの戦闘が終わっていない事に気が付くと、雅史は子供達をその場から逃す。


「おい、こっちにもマンティコアがいたのか。」

「あぁ、しかもコイツ、同族喰ったら回復する厄介者だ。ヤレるか?」

「俺の拳は弾丸だぜ!それに新しい力を手に入れたんでな。十王神、機龍王の力をね。」

「雅史もか。俺も不本意ながらこの女のお陰というか所為というか、光天王の力を手に入れたんだ。」

「この女って酷い〜!アタシはへリス。錬金術師でユートの愛人でーす!」

「誰の愛人だ!俺はお前をそんな対象で見た覚えはないぞ!」


三人は合流すると、マンティコアに向かって臨戦態勢をとる。


「文句は言いたいが、まずはこの村を救ってからだ。いけるか雅史。」

「もちろんだ。」

「お前にも手伝ってもらうぞ。へリス。」

「名前呼んでくれた!ならアタシも頑張っちゃうんだから!」


マンティコアは雄叫びをあげる。すると倒れていた鳥型モンスターがマンティコアの元へ集まっていく。数で勝負しようってのかと思ったのだが、次の瞬間、マンティコアは鳥型モンスターを喰らい尽くしていく。


「フレンドリーファイアですか!それありかよ!」


雅史は指の骨を鳴らし、マンティコアに向かっていく。その行動を援護するかの様に祐斗は鳥型モンスターを排除していく。

へリスは辺りに散らばった薬莢を回収し、それで長槍を錬成し、近付いてくる鳥型モンスターを撃退していく。

祐斗とへリスは次々と鳥型モンスターを撃退していく。またマンティコアにフレンドリーファイアされて回復されて持久戦に持ち込まれるのは厄介である事は間違いない。出来るだけ早期決着に持ち込みたく、祐斗は雅史が周りを気にせずに戦える状態にする為に次々と鳥型モンスターを排除していく。


「タイマン勝負なら俺に負けはねぇ!ガン・バレット!」


マンティコアの頭部に拳の一撃を与える。先程戦闘したマンティコアよりも、タフなのか一撃では倒せなかった。その反撃の前脚によるパンチをもろに受け、後ろに吹っ飛ばされる。

吹っ飛ばされた先には祠があり、雅史はそこに突っ込んでしまう。

祠には金属でできた龍の顔をモチーフとしたガントレットが奉納されていた。直接拳で殴っても倒れないのなら、このガントレットで殴ってみたら倒せるんじゃないかと考える。

雅史はガントレットを装備して再び立ち上がる。初めて付けた装備なのに、どうもしっくりと自分の拳に馴染む感じがした。

雅史は祠から飛び出し、再びマンティコアの元へ飛び込んでいく。


「第二ラウンド、一撃突上!ガン・ストーム!」


雅史は遠心力を加えてマンティコアの顎に拳をぶつけて突き上げる。今までの威力とは比べ物にならない衝撃をマンティコアに与え、マンティコアの頭部を粉砕し絶命させた。


「ラウンド開始早々、アッパーで一発KOって、いきなりやり過ぎだろ雅史。」

「その拳に付けてるのって機龍王が使っていたとされる王具、機龍掌じゃないですか〜!マサシさんは機龍王になって、王器が真の所有者の元に戻って力を発揮したんですね。因みにそのマルチハンドガンは錬成したんじゃなくて光天王の王具、光天万能銃なのよ!」

「おい、錬金術じゃないのかよ。」


祐斗は銃の柄の部分でへリスの頭を軽く殴る。


「…で、俺のハンドガンは?」

「あー、さっき槍を錬成するのに使っちゃった…アハッ!」

「アハッ!じゃねえよ!俺の丹精込めて作ったハンドガンを…。」


こうしてレクエム村に平穏が訪れた。といってもマンティコアに崩壊させられた建物を復興するには時間がかかっていた。祐斗と雅史も復興作業に協力し、村は元の村よりも立派な村になった。そしてまたマンティコアみたいなモンスターに襲われない様に村の周りを囲う様に石の壁を作り上げた。


「そういえば、おいエセ錬金術師。お前元々この村の人間じゃないだろ?何しにここへ来てたんだ?それに光天王の果実と王具まで持ってるし、一体何者なんだ。」

「アタシに興味持ってくれたの?」

「違う。断じて。」

「残念。えっと私はサンクチュアリ帝国に虐げられて滅んだ街の出身なの。街を滅ぼされて他の街も襲われてるって聞いて一緒にサンクチュアリ帝国に叛旗を翻してくれる人を探してたの。光天王の力の宿る果実と王具を持っていたのは、アタシの街は光天王の力を守っていた街で街が滅んだ時にアタシが持ち出したの。でもアタシに光天王の力は使えなくて、使える人も探してたらアナタがいたって事!お願い、レジスタンスを結成して、サンクチュアリ帝国の侵攻を止めて欲しいの!」


サンクチュアリ帝国の話は聞いている。許せないとは思っていたが、自分には関係ないと思っていた。まずは啓太や将吾達を探す事が先決だと思い、その為に行動していた。サンクチュアリ帝国の相手をしている暇はない。と思っていたのだ。

そして自分達はこの世界からしたら部外者。あまりこの世界に関わってはいけないと思い、出来る限り関わらない様にしていた。

しかし、拠点を持って啓太達を待つ為に、ここにいる事を広く知らしめなければならない。そう思い、祐斗はへリスの願いに縦に顔を頷いた。


「良いだろう。たしか各地でも同じ様な志を持った連中がいるって話だろ?ここにレジスタンスの連合を結成して、戦力を整えようじゃないか。」


その頃、雅史はレクエム村から少し離れた峠に来ていた。雅史は啓太達がこの村に自分達がいる事を知らせる為、石に日本語で文字を刻んだ。


”この先の村でお前達を待つ!雅史様と祐斗”


啓太達がこれを見ればすぐにレクエム村に向かうだろう。そう願い雅史は石に文字を刻んでいく。


「アイツ等、今どこで何してるんだろなー。この世界に来てるのか、無事なんだろうか?」


雅史は村に戻る中、啓太達の安否を気にしていた。機龍王の力を得て、その記憶も継承した今なら、この世界の危険性も理解出来た。もし何も知らずにいるとモンスターに襲われかねないと思うのであった。無事でいて欲しいと願うばかりだ。

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