~病の魔の手~
キメラの事件が晋司の死とマンティコアの討伐により一件落着し、レクエム村に戻ろうとした矢先、邪王の鏡を持った少年シュラの登場により、啓太達は更なる窮地へと陥ってしまった。
将吾、雅史、祐斗、憲明、昌宗の影から生まれた邪王神。力の差は圧倒的で、撤退を余儀なくされたが、その途中で雅史と憲明は邪龍王と煉獄王に寄って命を落とし、将吾と祐斗は深手を負い、将吾に関しては行方が分からず、祐斗も意識が戻っていない。啓太は晋司とマンティコアとの戦闘で疲弊しており、戦闘できる状態ではなく、囚われの身となっていたメイが戦えるとしても太刀打ちできる訳もなく、レクエム村に辿り着いたのは、啓太、メイ、祐斗、昌宗の四人だけだった。
それと同時に、レクエム村の中でも猟奇殺人が起こっていた。昌宗が連れて来て、屋敷の仕事を行っていたメイド達九人全員が何者かによって殺されていた。イコルマ法国から来たガレッタと七人のドワーフの騎士達も捜査に加わるが、一向に犯人の尻尾を掴めずにいた。
どこか分からない平地。
邪龍王と煉獄王に殺された雅史と憲明。自分達は死んだはずと思っていたが、何故か身体にはどこにも傷はなく、どこか分からない場所に倒れていた。意識を取り戻し、辺りを見渡しここがどこなのかを考える。
「「もしかして、黄泉の世界?」」
二人の意見が一致すると、霧が晴れ出し目の前に大きな病院の様な建物が突如現れたのだった。
「これが天国って所なのか?」
「分からない。でも、俺達って死んだよな?」
「俺は雅史が頭をかち割られてる所を見てたしな。それに俺は自分が焼かれていくのを感じてたし。あの熱さはホンモノだった。」
二人は疑問に思いながらも、自分達の身体がある事に疑問を抱いていた。死んだら身体は無いはず。いったい自分達に何が起こったのか、まだ状況を把握出来ずにいた。
二人が辺りを見回していると、目の前の病院の様な建物からこちらに近付いてくる人影があった。
「あら~大変!急患だわ!」
「「はいぃ!?」」
「これは直ぐに入院ね!早くっ!」
二人の目の前に現れたのはガタイのいい大男。服装がナース服だったので変質者としか思えないその大男は有無を言わさず雅史と憲明を鷲掴みにして建物の中へと入って行った。
「おい、何しやがる!」
「お前はいったい…。」
「アタシはここの看護師のロック。アナタ達は病気なの!重症なのよ!」
「…看護師って、そのムキムキな身体にナース服だなんて、変態かなにかだと思ったぞ。」
「いや、むしろ変態だろ。」
「そんな事ないわ!これでもアタシはこの病院ではすごく人気なのよ!アタシは患者さんをこの身体で癒してあげる一輪の花。アナタのハートをロックよぉっ!」
ロックと名乗ったガタイのいいナース服の大男は憲明の尻に手を伸ばし、揉みしだく。その行為に悪寒が走り、憲明は「ひゃあっ」と叫んでしまった。
「あら、可愛い。食べちゃいたいわね。」
「癒されるより、そのムキムキな身体に吐き気を催してきたぞ…。」
「いけない、症状が悪化し始めてるんだわ!院長とドクターも呼ばなくちゃ!」
ロックと名乗ったムキムキの看護師は雅史と憲明を診察台に縛り付けると、院長とドクターを呼びにその場を去った。
二人はどうにかして逃げ出そうと試みるが、どうにも力が入らずに縄を抜け出す事ができない。
「なぁ、俺達二人共、さっきのあのガチムチ変態野郎にあんな事やこんな事されちまうんじゃないのか!?」
「それだけは避けたいな。こんな縄くらい簡単に外せると思ったんだけど、どうも力が入らないんだ。憲明、この縄を焼き切れないか?」
「それが力が入らねぇんだよ。だから炎が出せねぇんだ。」
「脱出が無理となると、今はこのまま様子見って事だな。」
そうして白衣を着た男性と女性が雅史と憲明のいる手術室へと入って来た。
「急患というのは君達かな?ようこそ、オーザカクリニック病院へ。院長のゼラトだ。そして」
「担当ドクターのレティアです。これは重症患者ですね、院長。」
「その前に、俺達は一体どうなったのか教えてくれないか?」
ゼラトは、雅史と憲明を診察台に縛り付けたまま、話を始める。
「君達は見た目こそ変わりないかもしれないが、肉体が滅び欠けている。ここに来る前に、何か命に関わる事をしてきたんじゃないのかな?」
「まぁ…、多分俺達一回死んでます。」
「そうだよな。雅史は頭砕かれて、俺は焼き殺されて…。」
「何か普通の人間とは違う力を持っていると、たまに死ぬ様な事が起こっても、一回は死なないというスキル持ちがいるからね。その類か。このままでは二人共消えてしまうからね。暫くここで療養するといいよ。」
「身の回りの事は、看護師のロックさんに任せると良いわ。あの子、色々世話焼き好きだから頼ってあげて。」
「げっ!あんなのに世話を任せたら気が休まらねぇよ!」
雅史と憲明は消滅だけは避けたいと思い、この病院に入院する事になった。少しでも早く治して、啓太達と合流しなくてはと療養に専念するのだ。
ーーーーーここから、二人の入院生活が始まった。
翌朝、雅史と憲明は病室で寝ていると、カーテンを開ける音がして、病室に朝の陽射しが差し込んで来る。
「さぁっ!朝よー!マサシサーン、ノリアキサーン朝ですよー!さぁ、朝の検診のお時間ヨ!」
「ホントに、コイツが来やがったよ。」
「もぉっ!つれない事言わないで頂戴!アタシはアナタ達の事、凄く心配してるのよ!アタシはアナタ達が元気になってくれる事を一番に願ってるのよ!特にノ・リ・ア・キ・サ・ン~!」
ロックは憲明の尻を撫で回し、憲明は背筋が一瞬にして凍る様な感覚に襲われた。このままでは自分の身が危ないと本能が訴えかけているかの様に、急に鳥肌が立った。
「アタシがしっかり看病してア・ゲ・ル!」
「助けてーーーーっ!」




