~闇への墜落~
「でも、無事で良かった。」
「だけど、将吾や雅史、憲明は…。」
啓太と昌宗はその場で数分沈黙した。
三人も友人を失ってしまい、二人の絶望感は頂点に達している。
「祐斗は?」
「まだ意識は戻ってない。あれだけの怪我をして、まだ生きてる方が奇跡だろうって医者は言ってたよ。」
祐斗の怪我は深く、未だに意識が戻っていない。今はヘリスが祐斗に付きっきりになっている。
「メイド達は…?あいつ等の事だから俺がこんな状態だと知ったら飛んで来そうだけど。」
「それが…。」
「全員殺された。」
医務室に入って来たのはガレッタだった。
「…何だって?悪いな、俺の聞き間違いか?」
「だからここにいたシンクロナイザーのメイド達は全員死んだんだ。」
「どうして!」
「今、ここで起きている猟奇殺人事件によって、彼女達は犠牲者となったんだ。」
「怪奇事件?」
ガレッタは啓太と昌宗にレクエム村で起こった事を話した。そしてまだこの村で事件は解決していない事も。
「おい、ガレッタ。お前は俺達がいない村の警備に来たんだろ?何やってたんだよ!」
「私の任務は外敵からの護衛であって、既に中で起こっている事は任務外だ。それでも調査はしていたんだ。殺されたシンクロナイザーは可哀想だとは思うが我々は十分に働いたぞ。」
昌宗はショックを隠せず。その場で青ざめ絶句した。
彼女達を自由にしてあげる事が出来たのに、それを自分が留守の間にこんな事になるなんて…と自分を責める。昌宗は一人医務室を飛び出して犯人を見つけようと走り出す。昌宗の辛さが思うと、啓太は昌宗を止める事は出来なかった。
昌宗は我武者羅に村の中を走った。しかし誰がメイド達を殺したのかもわからない為、走る事しか出来ずにいる。
「どうして、こんな事になっちまったんだ…。」
昌宗は村中を走り回り、自分の行き場のない衝動を地面にぶつけた。
「俺にもっと力があれば…。」
昌宗は夢の事を思い出した。しかし、その力を手に入れるには仲間の為にではなく、自分の為の力ならという話。今は仲間の為であっても殺されたメイド達の復讐の為に力を欲する様に考えていた。
「…何か悩み事かい?」
昌宗の前にいる老婆が声を掛けてきた。その老婆は黒いローブを纏った見た目からしても怪しい老婆であった。
「何でわかる?」
「アタシはこれでも占いをやってるからね。それも大切な人に関わる事だ。」
「な、何でわかるんだよ!」
昌宗は驚きながら老婆に問い掛ける。
「だから占いで何でも分かるのさ。そして力を欲してると。」
「どっ、どうしてそこまで分かるんだよ!」
「(此奴、チョロいのぉ。)アタシは何でもお見通しなんだよ。」
「…アンタ、ホンモノだよ。」
昌宗は、その老婆をホンモノの占い師だと信頼した。自分が今悩んでる事をズバリと当てられ、驚きと信頼の眼差しで老婆を見詰めていた。
「じゃあ力が欲しいんだね?」
「…あぁ。今はメイド達を殺した奴を俺は許さない。だから犯人に復讐出来る力が欲しいんだ。」
老婆はニヤリと笑みを浮かべ、昌宗を連れてある建物に入って行った。
ある部屋の一室へと連れ込まれた昌宗は部屋の中心部にある魔法陣の上に立つ。老婆は自分の纏っていたローブを昌宗に被せ、老婆は呪文を唱えだした。
「心に秘めし闇よ、心のままに闇を解放せよ。」
ローブは昌宗の身体に溶け、身体に染み渡っていく。身体に溶け込んでいく事が身体に苦痛を与えるらしく、昌宗はその場に倒れ込み、もがきながら悲鳴をあげた。
その行為は数時間にも渡り、昌宗は苦痛のあまり意識を失っていた。
次に昌宗が目覚めた時、昌宗の瞳には光がなく、そして先程までと違い、禍々しいオーラに包まれていた。
「成功したな。」
「…これが、俺。力が湧いてくる。」
昌宗は自分の身体を見ながら湧き出てくる自分の力を感じて笑みを浮かべる。
「良かったの。あとはその力を存分に使うが良い。アタシの為にね。」
「なぁ、俺は槍兵なんだ。槍を一本拵えてくれないか?」
「今のアンタなら、そこの竹槍でもそこいらの槍よりも強い物になるぞ。」
「そうか。」
昌宗は目の前の竹槍を掴むと使い心地を確かめる様に何度かその場で振り回す。ただの竹槍のはずなのに、空を切り、辺りがその風圧で軋んでいる。
「これは大成功だね。アタシの為に存分と働いてもらうよ。この村の連中から生命力を集めて、アタシは若返るんだよ。そして人生をやり直すんだ。青春をもう一度謳歌する為にね。ふぇっふぇっふぇっ!」
老婆が笑い出した時だった。
ドスッ!
老婆の心臓を竹槍が貫いたのだ。老婆は吐血してその場に倒れ込み、昌宗を睨み付けた。
「悪いな、強くしてもらった事には感謝してるが、俺は誰の指図も受けない。せめてもの感謝の印に一撃で葬ってやろうと思ったんだが、上手く出来ずで申し訳ないな。」
「やめろ、アタシはまだやらなきゃいけない事があるんだよ…!まだアタシは若返って、燃える様な恋愛をして子供を産むんだ…、そして…そして…!」
「分かったから、もう死ねよ。フェザーウィンド武槍術、連槍。」
昌宗は竹槍を老婆の心臓に向けて高速で何度も突き刺した。
老婆は絶命し、辺りには老婆から吹き出した血液が飛び散っており、辺りを赤黒く染め上げていた。
「さて、メイド達を殺した奴が出てくるまで待たせてもらおうか。」
昌宗は笑みを浮かべながら奥の椅子に腰掛け、じっとその場を動かずに時が来るのを待っている。
ーーーー時を同じくして、某所。
霧が濃くてここがどこだか分からないくらいの霧が立ち込めている中、憲明は意識を取り戻した。
「…あれ?俺はいったい。」
頭を抱えつつ、辺りを見渡すと、そこには雅史も倒れている事に気が付くと、憲明は雅史の身体を揺すって雅史を起こした。
「雅史、大丈夫か?」
「憲明か。ここは…。」
「分からないんだ。たしか俺はあのニャーニャー言ってた煉獄王に焼き殺された気がするんだが…。」
「俺も、邪龍王にハンマーで頭を叩き割られた気が…。」
「って、事はもしかして…。」
「ここって…。」
「「黄泉の世界なのでは?」」
二人の意見が一致すると、霧が晴れ出し目の前に大きな病院の様な建物が突如現れたのだった。




