~命の灯火~
レクエム村で猟奇殺人事件が起こっている時と同じくして、ラプソの街。
啓太達は、メイを救出、キメラ騒動も解決してレクエム村へと戻ろうとしている所だった。
荷物を馬に荷物をまとめ、これからラプソの街を出ようと準備をしている。
「メイ、無事でいて良かったよ。」
「助けてくれるって信じてたから。でも、あのシンジって人、ケイタ達と全然違うタイプだったね。ケイタ達の世界の人達も色々なのね。」
「晋司も悪い奴じゃないんだ。ただ、この世界に来てから大変だったから、誰かに八つ当たりしたかっただけだったんだと思うんだ。」
「いや、あいつは元々あんな奴だった。こっちに来て、魔具に心を奪われて、力に呑まれたんだな。力に溺れた者の末路ってのは、いつも悲惨なものだね…。」
「俺達も十王神という力を手にしてるんだ。いつその力に呑まれてしまうかと思うと、力の使い方には気を付けないとな。」
晋司はたしかにガイアでも、女子生徒達を弄んでいた事には事には変わらない。その事を法で裁けないとはいえ、彼もアースに迷い込んだ、啓太達と何一つ変わらない被害者なのだ。ただ力を手に入れて、その力の使い方を人の為に使うか、私利私欲に使うかの違いがあっただけ。啓太は終焉王の力を手にした時、頭の中に直接語り掛けてきたその声は『己の私利私欲の為に力を欲する訳ではないのだな。なら力を与えよう。』と言って、この力を授けてくれた。
たぶん、将吾や雅史達もそうであったに違いない。
もし、この力を私利私欲に使ってしまったら、自分も晋司と同じ様になってしまうと思うとゾッとした。
「じゃあ、その力さ、僕にちょうだい!」
一人の少年が啓太達に姿を現した。その少年を祐斗は知っていた。
「君はあの時の!邪王の鏡をどうした!」
「あ、お兄さん久しぶり。あの時は助かったよ。鏡はちゃんと使わせてもらってるよ。」
その少年は祐斗がトラマの街で出会った、邪王の鏡を持ち去った少年だった。
「返してもらおうか。答えは聞かないけど!」
祐斗はハンドガンを取り出し、銃口を少年に向ける。
「返すも何も、これは元々僕の持ち物だからね。僕はシュラ。君達の十王神の力を、僕の計画の為に使わせてもらうよ。」
「計画?」
「今の君達に話しても分かってくれないと思うから答えてあげない。答えは聞かないんでしょ?」
祐斗は銃弾を放ち、それと同時に雅史と憲明が飛び出し、シュラに攻撃を仕掛ける。その後ろでは、将吾が弓を出現させ、シュラを狙っている。その行動をシュラは分っていたかの様に銃弾を避け、雅史と憲明に鏡を向け、矢を掴んでへし折った。
鏡からは二本の腕が現れ、雅史と憲明の首を掴んだ。
そして鏡からは雅史と憲明によく似た男が出てきたのだ。
「ここが現実の世界か。」
「やっと出て来れたにゃー。」
「な、何だこいつ等。」
「俺達に似ているって事はまさか…!」
「そう、さしずめ邪王神って所かな。邪龍王と煉獄王だよ。」
すかさず将吾がシュラに切り掛るが、邪王の鏡は遠くからも将吾をその鏡に映り、将吾によく似た男が鏡から飛び出し、将吾の行く手を阻む。
「こんな距離からもか!」
「じゃあ拙者は黒魔王と名乗らせてもらおう。」
将吾の姿を模した男、黒魔王は腕を石化させて将吾の斬撃を受け止める。その姿を見た昌宗は、黒魔王に攻撃を仕掛けようと槍を構えて特攻する。
「やめろ!お前の叶う相手じゃない!」
「ゴーレム!」
すると黒魔王と昌宗の間に立ち塞がる様に地面から岩の巨人が現れて、昌宗を弾き飛ばす。
「あとは、終焉の力と光天の力だね。そいつ等の相手は任せたよ。」
「承知っ!」
「わかったにゃー。」
「了解した。」
鏡から出てきた三人の邪王神の黒魔王、邪龍王、煉獄王はそれぞれ元となった将吾、雅史、憲明と交戦する。岩の巨人は昌宗に襲い掛かる。
黒魔王は岩でできた斧を出現させ、ゴーレムに指示を出しながら将吾と交戦する。どうやら岩を操るゴーレムマスターの様だ。
邪龍王は禍々しく骨で出来た龍をその身に纏い、雅史に格闘戦を挑んでいる。雅史と同じ格闘家タイプだった。
煉獄王は両腕と両脚を何倍にも筋力を増大させ、憲明に殴り掛かる。憲明とは違い肉弾戦を好むタイプに見える。
ゴーレムは昌宗の攻撃を一切受け付けず、何度も弾き飛ばしている。
「おい、将吾や雅史はまだ戦い方が似てるからコピーされたってのは納得いく。だが、何で俺はこんな筋肉ダルマなんだよ!」
「そんな事知らないにゃー。俺はお前のコピーだ。戦い方なんてもんはお前の戦い方を強化したもんになってるのにゃ。だからこの姿にゃのだよチミ!」
憲明はこの状況下でも自分のペースを保てている事に、将吾は驚いていた。
そしてどう見ても、戦況は不利。先程までマンティコアにキメラの大群との戦闘を終えたばかり為、啓太達にはほぼ戦闘を行える程の体力は残っていなかった。ここはどうにかして撤退をしなくては全滅してしまうと、祐斗は逃げる術を必死に模索した。
「祐斗。ここは俺と将吾、雅史で何とか抑えるから啓太達を連れてレクエム村まで戻るんだ!昌宗、お前も啓太達と行け!」
憲明は煉獄王を弾き飛ばし、辺り一面を炎の海へと変貌させる。祐斗は啓太とメイを馬に乗せて走り出す。昌宗は憲明の言葉を無視してゴーレムに槍を向けて突進していく。
「俺だって強い!こいつ等くらい俺一人で全員倒してやるよ!」
「考えが甘いな。ゴーレム、そいつの自信を槍ごとへし折ってしまえ!」
ゴーレムは昌宗の槍を簡単に受け止めて、爪楊枝を折るかの様に簡単に槍をへし折り、昌宗を右腕で掴み上げる。
「お、俺の槍が…。」
ゴーレムは昌宗を喰い千切ろうと、岩でできた口を大きく開けて、昌宗を口元へと運ぶ。昌宗は槍が折れたショックと自分がゴーレムに捕まってこれから喰われる恐怖に襲われ、失禁しズボンを汚した。憲明は昌宗を助けようとゴーレムに向かい、口元で火炎をぶち込んだ。
しかし、ゴーレムは岩で構成されている為、炎が効いていない。憲明はそのままゴーレムの口に捕まった。
「別にお前が弱いとか思ってねぇよ。だがな、ここで全滅するよりは分散して逃げた方が得策だと思っただけだ。早く行け!このゴーレムくらいは俺がぶっ飛ばしてやるよ。」
それを最後の言葉に、憲明はゴーレムに呑み込まれてしまった。するとゴーレムの腹が急に赤く光だし。ゴーレムは爆散した。憲明が自爆し、ゴーレムを跡形もなく吹き飛ばしたのだ。
「「「「「憲明ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」」」」」




