~Sleeping Snow(第五項)~
その頭上には黒く怪しげに光る黒い球体があり、啓太はそれを湖にいる赤い鯨に向かって投げ付ける。
黒の球体は赤い鯨の頭上に来るとピタッと止まり、今度は赤い鯨を重力で縛り沈めていく。
「晋司にメイを拐われてイライラしてるから容赦しないよ!重力拘束、起点切替。レベル10!」
すると下に向かって強い重力を変えていたが、今度は黒い球体を中心に重力が集約していく。
「一気に倒してメイを救い出す!その球体は、周囲を重力で引き寄せる。ブラックホールだ!」
強い引力で赤い鯨を引き寄せ、赤い鯨の背骨から引力で潰し砕いていく。粒子分解もブラックホールとなった球体が近づくものを粒子レベルで分解していく。赤い鯨はみるみるうちに身体をブラックホールに潰され、見るも無惨な光景が球体付近で起こっている。
雅史と祐斗はその光景をただただ見入ってしまっているだけしか出来ず、下手に動こうならあのブラックホールの餌食になってしまいそうで、必死に岸にしがみついていた。ブラックホールが消えるまでの間、赤い鯨は次々と身体が崩壊していき、既に赤い鯨よりも大きな何かに上半分を食われてしまった様に既にモノ言わない肉片へと変わっていた。
全てを飲み込むと、啓太はブラックホールの魔法を回収して、雅史と祐斗を湖から引き上げ、先程大蜘蛛から聞いた情報を話した。
「あの塔の最上階か。将吾と憲明が向かった方角だな。昌宗と合流してすぐに向かうか?」
「いや、たぶん将吾達も一旦こっちに戻って来るだろう。雅史は昌宗を連れ戻して、全員揃ったら向かおう。全員揃い次第、作戦を伝えるよ。」
その頃、メイは塔の最上階にある個室に連れて来られていた所だった。その個室は薄暗く、少し大きめのベッドにその隣に浴室があるという、少し異質な部屋になっていた。
「なぁメイちゃん、啓太なんかより俺と一緒にいた方が安全だよ。キメラ達もいるし、君が忌むべき者って追われてる身なら俺と一緒にいた方がメイちゃんの為にもなるって!」
「どんなに貴方が強くて頼りになるとしても、私はケイタと一緒にいたいの。」
「へぇ、そんなに啓太の方が良いの?」
「もちろんよ。ケイタはとても優しいし、私の事を大切に思ってくれてる。それに今までも私を助ける為に必死に戦ってもくれたもの。貴方はキメラ達の後ろにいて、何もしてないじゃない!」
晋司はグラスに水を入れ、メイの前にある机に置き、隣に腰を下ろす。
「まぁこれでも飲んで落ち着きなよ。たしかに俺はキメラを使ってしか戦ってないけど、それは俺が本気を出すまでもないって思ったからだし、キメラ達も俺の為にって前に出てくれる。俺はキメラ達の為なら何でもする覚悟さ。」
晋司はニヤリと微笑みながら横からメイの肩に腕を回す。メイは晋司の腕をするりと躱して距離をとる。躱された手は空を掴むかの様にいやらしい手つきで握り、そのまま晋司の膝に落ち着く。
「貴方の言葉には重みというか責任力を感じないの。悪いけど、私は何があっても貴方とは行かないし、啓太が来てくれるのを待つわ。」
メイは晋司が出てきた水を飲み、晋司に反論する。晋司の言葉には責任の重さを感じられず、啓太達とは全く別のタイプだなと思い、断固として晋司と行動を共にする事に反対した。
すると、メイの意識が少しずつ遠退いていく。メイは持っていたグラスを落とし、その場に倒れ込んでしまった。
「やっぱこの薬はこっちでも効き目は抜群だな。元の世界でもこいつで眠らせて、動かなくなった女を楽しむだけ楽しんで、意識が戻った頃に自分の状況を把握した時のあの顔が堪らなく最高だったもんなぁ!メイちゃんはどんな顔をするんだろうなぁ。」
晋司はメイの首筋から舌を這わせ、服を少しずつ脱がしていく。
バランスのとれたメイの身体をなぞる様に晋司の舌がメイの身体に唾液を塗り付けていく。
「こういった少し強気な女ほど、目が覚めた時の表情が堪んないんだよなぁ…。服を脱がせるのも面倒だから引き千切るか。」
晋司はメイの服を引き千切り、メイの身体を包む物が無くなりあられもない姿にする。晋司の息は少しずつ荒らげ、口元から唾液がみっともなくダラダラと零れ落ちる。
「さぁて、薬も大量に入れたから当分の間は目が覚めないだろう。たっぷりと楽しめるな!」
晋司がそう言いながらニヤリと笑を零し、メイの上に跨る。
ーーーーーその時だった。
ドォォォン!
重く激しい揺れが起こり、晋司はベッドから落ち、後頭部を強く打つ。
「ったく、何だ今のは!マティ!一体どうなってる!」
「何者かによる長距離からの砲撃です!」
「何だと!?」
揺れが起こる数分前、湖の畔に啓太達六人が集合し、祐斗が情報整理をしていた。
「将吾、あの塔の高さはどのくらいあった?」
「ざっと見ても三十階立てのビルくらいかな?この街というか、この世界にしては結構高い建築物だと思うよ。」
「じゃああの畔の近くにある岩とかを全長二メートル位の球体に切り出す事は?」
「そんなの余裕だけど。」
「憲明、全長二メートルの岩を火の玉に出来る?」
「溶かさない程度に炎上させるくらいなら楽勝で出来るぞ。」
「雅史、それをここからあの塔にぶつける事は?」
「距離だけなら全然問題なさそうだけど、照準には自信ないな。」
「届くんだな?」
「それは勿論だ。」
「なら作戦はこうだ。まずは火の岩を作って、あの塔にぶつける。それで塔の中のキメラが混乱してる隙に啓太と昌宗を乗せた岩をぶつける。それで下の階のキメラを相手にせずに進めるだろ。侵入したら昌宗が啓太を最上階のメイの所まで連れて行って、啓太が晋司をぶちのめせ。残った俺達は下の階の奴が上に行かないように下からも攻め込んで下に注意を引かせる。単純だけど、まさか晋司の奴は啓太と昌宗が岩に乗って飛び込んでくるなんて思ってないだろうからな。それでチェックだ。」
「天牙理心流、斬無!」
将吾の放った斬撃は、岩を綺麗に球状に切り取り、雅史が拳を撃ち込み易い様に一ヶ所だけ窪みを作る。
「フェザーウィンド武槍術!猛槍っ!」
祐斗の指示の元、昌宗が地面に溝を作り、塔に向かって発射台を作り上げる。
「よっしゃ!火の玉、製造していくぞ!チェイン!バーニング!フレイム!バーン!ファイア!バースト!」
将吾が切り出した岩の球体を憲明が次々と火の玉に変え、昌宗が作った発射台へと装填していく。雅史は龍人の姿へと変身し、右腕を回して柔軟を始める。
「よし!発射だ!」
「ガン・バレット!」
雅史が火の玉に拳の一撃を与えると、パチンコの原理で火の玉は真っ直ぐ塔に向かっていく。
火の玉は塔の真ん中に直撃し、外壁が崩れ、その近くにいたキメラ達が外壁の破片と共に地上へと落ちていく。
「直撃!その角度であと二発撃ち込んだら、啓太と昌宗を乗せた岩を射出だ。」
「了解だ!二人が乗れる様に座席用意しとくよ!岩の座席だから乗り心地は保証できないけど。」
「ありがとう!振り落とされなきゃそれで十分だよ!それとさっきは落ち込んでてごめんね。もう大丈夫だから。」
「しっかり取り返して来い!」
「安心しろ!俺が先陣を切って啓太をメイの所まで届けてやるよ!」
雅史が火の玉を撃ち終え、啓太と昌宗の乗る岩をが発射台に運ばれる。
「ファイア!」
憲明が間違えて二人が乗る玉にも火を付ける。啓太達が慌てながらも祐斗は冷静に雅史に「構わん、発射しろ!」と指示を出し、雅史はそのまま二人の乗る火の玉を撃ち出す。
啓太と昌宗の悲鳴が聞こえたが、残った四人はあえて聞こえないフリをして、塔に向かって進んでいく。
「「憲明ぃぃぃぃぃぃっ!」」




