~Death of Pleasure~
その頃、祐斗は一度レクエム村に戻っていた。
すると、将吾と雅史、憲明と昌宗もレクエム村に戻っており、五人で情報交換をしていた。
「え?あの大剣使い、黒龍王だったの?」
「らしいよ。俺の知り得た情報だとね。俺も超帝王の部下と戦ったし。」
「俺は不死王を見た。あれが十王神って思うと、俺はお前達の事もちょっと怖いけどな。あんな化け物みたいな強さ…、俺ももっと強くならないとな。憲明が来なかったら苦戦してたよ。」
「お前はハーレム楽しんでたろ!」
「よく言うよ。憲明だって楽しんでたんじゃ?将吾もその後は色々お楽しみだったみたいだし。」
「「あれをお楽しみって言える祐斗さん、怖ぇぇぇ!」」
将吾と憲明は二人揃って身体を震わせながら祐斗を恐怖の大王でも見るかの様に見上げた。その後無言で分厚い本の角で思いっ切り打たれ、その場に倒れ込んで悶え苦しんでいる。
「話が逸れたが、本題に戻ろう。どうやらサンクチュアリ帝国はキメラを使役する魔具を一人の男に奪われたらしく、それを探し出す為に十王神を出て来たみたいなんだ。」
「でも、俺達が行った村や街はキメラはいても、その魔具を持った奴なんていなかったぞ。」
「…って事は、つまり。」
「…あぁ。啓太の向かったラプソの街だ。あの街は既にキメラの村の襲撃を受けて既に壊滅してる。そこにいた住人はおろか、共存関係にあったリザードマンも全員皆殺しに遭っている。」
祐斗は机に肘を着き、溜息を吐く。
「なら俺達もすぐにラプソの街に向かおうぜ!」
「そのつもりだ。しかし…」
「勝てるのか?いくら十王神の力が凄いって言ってもキメラの群れ。」
「聞けば俺も雅史も光天王と機龍王の力の覚醒をして、以前よりも強くはなってる。」
「…そ、それなら俺も黒覇王の力の覚醒はしてるよ。」
将吾は頭のコブを左手で擦りながら、右手の握り拳を開き、剣を出現させる。
「おい、そんな技いつ会得したんだよ!」
「えっと、啓太と出会って、このレクエム村に来る前だったから結構前かな。」
「「「「言えよ!」」」」
「だって聞かれなかったし。」
「分かるか!」
祐斗による本の角の一撃を再び受け、再び倒れ込んだ。
「…これ、死んだな。」
「とにかく覚醒者がこれで三人。憲明は?『実は俺も覚醒してんだよなー』なんて隠してたら分かってるよな?」
祐斗が不気味な笑みを浮かべながら憲明を見詰め、本の角をポンポンと手に馴染ませる。その姿を見て憲明はカタカタと震えながら「滅相も御座いません!祐斗さん!」と答えた。その間も将吾はピクリともせずその場に倒れ込んでおり、哀れな目でシンゲンとマリアが将吾を眺めている。
「少しでも勝ち目は見えてきた。啓太とメイの事も心配だし、すぐにでも俺達もラプソの街に向かおう。」
その頃、啓太とメイは馬でラプソの街に向かっている。
まさか最初の旅では歩いて移動していたのが、祐斗の計らいで馬を借りる事ができ、快適な旅ができていた。
「メイ、この街道で良いんだよね?」
「えぇ、このまま道なりに進んで行けば明日の昼にはラプソの街に着けるみたい。」
「ラプソの街はたしか人間とリザードマンが共存してる街だっけ?」
「だからキメラの襲撃が遭っても食い止められると思うし、サンクチュアリ帝国も攻めようとは思わないと思うの。」
啓太は深刻な表情になり、手網を強く握る。背中越しに伝わってくる啓太の不安と恐怖等の様々な感情が入り乱れた想いをメイは感じ取っていた。
「どうかな?嫌な予感はするんだ。逆にそういう街だからこそ攻め落としておくんじゃないかな?雅史と祐斗が戦ったマンティコアもかなりの強敵だったらしいし、そのキメラ達も並のリザードマンじゃ歯が立たないかもしれないし。」
「そうね、でもケイタの魔法があれば一掃出来るんじゃないの?」
「そういう訳にもいかないんだ。あの魔法は詠唱から発動までにラグが長いし、数で一気に攻めて込まれちゃ僕に勝ち目はないよ。その為に盾での戦闘や魔法を込めたカードを何枚も用意はしてるけど、アリも群れればカブトムシを倒す。僕とは相性が悪いんだ。」
「その間の時間くらい私だって戦えるから任せて!将吾にショートソードとバックラーを作ってもらったし、十分に戦えるよ。」
「ありがとう。でも出来る限りメイは僕の後ろにいて欲しいんだ。す、好きな子くらい自分自身の手で守りたいからさ。」
「ケイタ…。」
啓太のその言葉に、メイはギュッと後ろから抱き締める。啓太は自分の言った台詞とメイの行動に硬直して、手網を握る手に更に力が入る。
その光景を遠くの茂みから覗いている影があった。
「あれがケイタとかいう魔法詠唱者か。それに後ろにいる少女、あれが忌むべき者だな。早くシンジ様にお伝えしなければ。」
影に潜んでいた男は、キメラへと姿を変え、啓太達より先回りしてラプソの街に辿り着き、泉の方へと向かって行った。
「シンジ様、当たりですよ!」
「五月蝿いな!俺の楽しい時間を遮るなよ!」
部屋に入ってきたキメラを蹴り飛ばし、再びマティの膝に頭を置く。
「ダメじゃない、虐めちゃ。それでどうしたの?何が当たりなの?」
「…は、はい。あのケイタとかいう魔法詠唱者が忌むべき者と一緒にこのラプソの街に向かって来てます。」
「何故すぐにそれを言わないんだよ!このクズがっ!」
晋司は再びキメラの頭を何度も踏み付け、顔面がみるみるうちに無残な形へと変わっていく。その間にもキメラは「すみません、すみません。」と何度も晋司に謝罪の声を叫んでいた。
「やっと会えるなぁ、啓太ぁっ!俺から正義の味方を奪ったその罪、この隷属王の晋司様が裁きの鉄槌を食らわせてやるよ!そして俺がちゃんとした物語を紡いでやる!」
晋司は高笑いしながらキメラを何度も踏み付けていく。晋司が高笑いし終える頃には、キメラはもう息をしないただの肉片へと変わっていた。
その夜、マティはそのキメラだった肉片を獣の姿に変身しムシャムシャと貪っていた。その姿は獣の合成物というよりは、幾つもの機械的なパーツを寄せ集めた身体を持った機械の獣の様であった。




