~摩訶不思議の國の雅史(ROUND2)~
「シさん…、サシさん……マサシさん!」
雅史が気が付くと、必死に自分の身体を揺するアヤの姿が目に入ってくる。
「あれ?アヤさん?」
「良かった、目が覚めたんですね。」
「たしかキメラとそれを従えてた男と戦ってたはずだよね…。」
「気が付いたらヒムの街ではないどこかの森に迷い込んでるみたいなんですよ。」
雅史は辺りを見渡すと、薄暗い森の中に自分達がいる事に気付く。生えている木々や植物は今までに見た事の無い種類で、ヒムはもちろんレクエム村付近ではない事は火を見るより明らかであった。
「何か不思議な所だな。」
まだ昼頃のはずだが、辺りは既に日が暮れた後の様に暗く、深い闇の中に飲み込まれたんじゃないかと錯覚してしまう。
雅史とアヤが途方に暮れようとし始めた時、地面が赤く光り、道が形成されていく。
「これは…、道だよね?」
「こんな事あるんですね…。この道を辿ってみましょ。」
「私達、元のヒムの街に帰れるんですかね?」
「もちろん、どんな事があっても、アヤさんは俺がヒムの街へ帰すよ。」
何時間歩いただろうか。赤く光る道を歩き続けているが、どれだけ歩いてもどこにも辿り着けずにただ道だけが続いているだけだ。
「おみゃーら、そんにゃんじゃこの森からは抜けられにゃいぞ?」
雅史達の前に現れたのは、細身のシャム猫だった。
シャム猫はニヤニヤと笑みを浮かべながら、雅史に声をかけてきた。
「本気で抜けたいと思っていにゃいにゃら構わにゃいけど、抜けたいんにゃらまずウサギを探す事にゃね。」
「お前はいったい?」
「あたいはシャム猫。気まぐれなシャム猫にゃよ。おみゃーらに手を貸すのも邪魔するのも気の向くままにゃ。」
「マサシさん、あの猫怪しくて信頼出来るとは思えません。私達を惑わせようとしてるのかも。」
「あたいからしたらおみゃーの方が怪しいけどにゃ?おみゃーの心の奥はどうも黒くて禍々しいものを感じるにゃ。まぁ女の方もだけど、男の方も何か別の意味でオーラを感じるというか、秘めた力を持っているみたいだにゃ。まぁ信じる信じないは別として、助かりたいにゃら、赤ウサギを探して奴に門を開けさせる事だにゃ。」
「「赤ウサギ?」」
雅史とアヤはお互いに顔を向けて首を傾げる。二人は普通の赤毛の兎を想像した。しかし次の瞬間、その想像は轟音で崩壊するビルの如く崩壊した。
目の前に現れたのは兎タイプの亜人種であり、脚の筋肉だけ特化した赤いウサギだった。
「私に何か?」
「…え、あっ、俺達をヒムの街に帰して欲しいんだ。」
「つまり、現界への門を開けろと?それは赤バラの女王様の許可が無ければ出来ませんね。それに私は急ぎの身。あなた達みたいな現界からの迷い人を相手にしている暇はないのですよ。」
そう言い残すと、赤ウサギは猛スピードで走り去っていく。それにいつの間にかシャム猫も姿を消していた。ここはシャム猫の言葉を信じ、雅史とアヤは赤ウサギの向かった方向へと向かって行く。
既に赤ウサギの姿はないが、消え去った方向へと進む。すると道を塞ぐかの様に二人の男が立っていた。
「俺、ドルダム。」
「俺、ドルディ。」
「ここを通りたいのか?」
「通りたいのなら、俺と勝負だ。」
「いや、僕が勝負だ。」
「ドルディ、お前は弱いからすぐ負ける。」
「何を言ってるんだよドルダム。君は僕に一度も勝てた事がないじゃないか。」
「そういうドルディも俺に勝てた事ないだろ?」
「そんな事はない、昨日は僕が勝った。」
「昨日勝ったのは俺だ。」
「いや僕だ。」
「いや俺だ。」
「「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや……!」」
「(このまま通り抜けちゃってもバレないんじゃ…?)」
「(たしかにアイツ等、俺達の事忘れてそうだし、そっと行けば行けるかもしれないな。)」
「おい、通っていいなんて言ってないぞ。まずはどちらが相手をするか決めるまで待て。」
ドルダムとドルディは雅史達の事なんて忘れているかの様に二人だけで揉め出した。その隙にと雅史とアヤは通り抜けようとするが、動くとその度に気付かれてしまい、道を通してくれないのだ。
「もういい!俺達は急いでるんだ。両方一度に相手してやるよ!」
「そうか?なら両方の相手をしてもらおうか」
「その方が手っ取り早く事が済むしな。」
「いや、さっきまでのやり取りの方が無ければもっと手っ取り早く済んだのに。」
雅史はガントレットを両手に付け、ステップを踏みながら、攻撃を仕掛けて来るのを待つ。ドルダムの方からか、どれともドルディの方からか。どちらから来てもカウンターをかけてガン・バレットをお見舞いすれば勝てると思っていた。
しかし、その予想は外れ、ドルディとドルダムは同時に攻撃を仕掛け、雅史にラッシュの雨を喰らわせた。雅史は避ける事ができず、両腕で必死に攻撃を防ぐ。
どんなに早いラッシュの打ち込みでも、隙は生まれる。その隙を狙って反撃に出ようと試みるが、二人の息はピッタリで、少しの隙もなく拳が飛んで来る。
「どうした?反撃して来ないのか?」
「それとも俺達が強過ぎて反撃も出来ないのか?」
「こいつ大した事ないんじゃないのかな?ドルダム。」
「そうかもしれないな。ドルディ。」
「ガン・ラッシュッ!」
雅史は同じく拳で二人の攻撃を相殺させ、一撃で二人を無力化できる隙を狙う。ドルダムとドルディ、どちらか片方だけを狙うと、その隙に残りの片方の攻撃でやられてしまう。両方を一度に倒す方法を必死に考えていた。
しかし、考えている時間はあまり無かった。ドルダムとドルディの攻撃にガントレットが耐え切れずヒビが入ってしまう。
一刻も早くけりをつけないと、ガントレットが割れてしまう。そう思い、雅史は勝負に焦り、そのままガン・ストームを放った。遠心力で威力を増したその一撃は、辺り一面を吹き飛ばし、道すらも消し飛ばしてしまった。
「「……あ。」」




