~刃と拳の旅~
憲明の出立を見送り、将吾も雅史と旅の支度をしていた。
「憲明はもうアンプロの街に向かったんだよな?」
「さっきね。帰って来た時に焼き殺されそうだよ。」
「何かやったのか?」
「シンゲンとマリアを危険な目に遭わせたくないと言ってたのに、あの子達の強い意志に負けて鞄に詰め込んだんだよ。」
「じゃあ、あの子達もアンプロに?まぁあの子達は見た目以上にしっかりしてると思うよ。それにマリアは体術を見ただけで習得出来る能力を持ってるから、ガン・バレットだけは教えておいたよ。」
「俺も天牙理心流の衝波を教えておいたけどさ、シンゲンには魔法を教えたかったんだけど、俺は魔法を使えないから教える事が出来なかったのが後悔なんだけど、あの二人ならきっと大丈夫だよ。」
「まぁ憲明に焼かれる覚悟はしておかないといけないな。」
将吾は「だよねー。」と言いながら、鞄を馬に乗せ、二人はレクエム村を出発し、一番キメラの襲撃の可能性が高い、コラルとヒムの街に向かっていた。
コラルとヒムの街は、啓太達が向かう街よりもレクエム村からは離れており、馬を走らせても一日はかかってしまう程離れた距離にある街で、将吾と雅史は途中の川辺で一夜を過ごした。
火を起こし、鍋を拵え、食事をしながら元の世界に帰れるのか、今度どうなって行くのかを話していた。そんな時だった。
「おい兄ちゃん達、命が惜しかったら金と食料を置いていきな。あとその馬もだな。金目になるものは全部だ!」
「盗賊か?」
将吾と雅史を取り囲む様に盗賊が現れる。それも一人や二人ではなく、大勢で二人を囲んでいた。
将吾は食後のコーヒーを飲みながら辺りを見渡しながら賊の数を数えていく。雅史は両手の指の骨を鳴らし、準備運動をする。
「ざっと三十くらいかな。」
「少ないな。食後の運動にはまぁ妥当な数かな。」
「じゃあ任せるよ。俺は鍋を洗っておくから。」
「おい!無視すんな!野郎共、やっちまえ!」
将吾は鍋を持ち川に向かい、鍋を洗い始める。それに腹を立て賊のリーダーが指示を出し、二人に襲い掛かる。雅史は腕に遠心力を付けて一気に賊を一掃する。
「ガン・ストーム!」
雅史の拳によって宙に巻き上げれた賊は次々と川に落ちて流されて行く。それに動じずに将吾は鍋を洗っていた。時には将吾にぶつかりそうに落ちてくるが、そこは洗っていた鍋で弾き、再び鍋を洗う。
「な、ただの旅人じゃないのかよ…。」
「俺達は冒険者さ。」
「レクエム村を拠点としてる冒険者だと。ちっ相手が悪い。撤退するぞ!」
「意外と冒険者って有名なんだね。盗賊まで知ってるって思わなかったよ。」
「たぶん、後ろ盾にイコルマ法国が付いてくれているからじゃないかな?」
「結構すごいんだな。イコルマ法国…。」
残った賊は仲間を抱えて立ち去って行く。将吾も雅史もそれを追う事はせず、焚き火に枯れ技を焼べて朝が来るまで後退で仮眠をとった。
夜が明けると、再びコラルとヒムの街へと馬で移動を再開した。
「たしかコラルの街が人が多くて発展した街で、ヒムは物の流通が盛んな街だったかな。」
「俺も行った事はないけど、どっちも栄えた街だって祐斗から聞いてるよ。」
「街が隣接してるとはいえ、さすがに二人一緒だとどっちかの街を守り切れないし、二手に分かれようか。どっちの街が良い?」
「そうだなぁ、将吾はどっちが良いの?」
「どっちでも良いんだけど、どちらかといえば、コラルかな?市場もあるみたいだし、食材を色々と調達したいなって。」
「戦いに行くのに何か出先の帰りにスーパーに寄って帰る主婦みたいだな。」
「一人で何人分食うんだよって大食漢がいるし、たまには変わった物を食べさせたいって思ってね。これを機にこの世界にどんな食材があるか、俺達の世界の食材の代用品になる食材が存在するのか色々調べたいなって思ってね。」
まさに将吾は主婦だと雅史は再確認させられ、そんな雑談をしつつ、北にあるコラルとヒムの街を目指した。
「そういえば、詳しくは聞いてないんだけど、フュージョニアにも色々な種類が存在するらしいんだ。俺や祐斗が戦ったマンティコアや今回攻めて来るキメラの獣型、人狼とか獣人の亜人型がいるらしんだ。そのプロトタイプがシンゲンとマリアらしいんだ。事の発端は、獣と人間の間に生まれた子供が始まりらしんだけど、幼少期はまだ理性もしっかりしているらしいんだけど、成長するにつれ、自我が保てなくなって闘争本能のままに動く獣になって、今はどこにいるのかも分からないんだってさ。」
「何かどこかの街で人に隠れて暮らしているかもね。でも、自我を失っていたら毎夜毎夜人が襲われて大変な事になってしまうかもね。」
「キメラやマンティコアはその人と獣の間に生まれた子供の遺伝子から研究が行われて様々なモンスターを合成させて出来た生物だって祐斗はイコルマ法国から聞いて来たらしいよ。」
「それが今回兵器として使われてこっちに向かってくるって事なんだね。キメラ達には罪は無いけど、倒すのがキメラにとっても良い事だとしんじて戦うよ。」
街を目視する事が出来たのは、夕方になる頃だった。
「じゃあ俺はヒムの街に行くよ。」
「俺はコラルに。」
二人はそれぞれに背を向け、将吾はコラルに、雅史はヒムの街へと向かって行った。




