表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

プロローグ

「後ろから攻撃するにゃ、刹那」


「はい」


「たった一匹だにゃ。

俺が敵を惹き付けておくから、落ち着いて攻撃するにゃ」


「はい」


「刹那、喋る時は最後ににゃを付けるにゃ」


「すいません、今それ処じゃなくて」


僕は今、スマホアプリの無料バーチャルゲーム、シンライをやっている。

配信から1ヶ月で全世界で100万人、日本では10万人の人がやっていると噂のゲームを1週間前から始めていた。

ゲーム内のキャラ名は刹那にしているが、本名は荒木 悠真、20歳、職につけずアルバイトで何とか生活している状態だったが、先日、高校時代の友達に町のコンビニで偶然出会った。


「あれ、悠真じゃないか」


「え、あぁ、湊じゃないか、久しぶりだな。

なにやってるんだ」


「休憩だよ、休憩。

営業マンには、休養が必要なの」


「ってことは、ちゃんと職に就いているんだ」


「当たり前だろう、なんだ、もしかして悠真は就職してないのか」


「なかなか決まらなくてな、バイトでなんとか食い繋いでいるよ」


「そうか、こんな不景気の時代だからな、職に就く事は難しいよな。

俺も何とか就職は出来たけど、俺のやりたい事じゃないし、今日も嫌な上司に怒られてサボっている訳だし、嫌々ながらやってるよ」


休憩とか言っていたのに、サボりだと素直にばらしやがった。

上司に怒られているのもサボっているからではないかと思ってしまう。


「それでも職あるだけましだろ、俺なんか職決まらないから親からガミガミ言われるし、いつまで実家にいるつもりだ早く自立しろなんて、顔合わせる度に言われて嫌になるよ、いっそ、何処か誰も居ない所に行きたいよ」


「お前も苦労しているんだな、そうだ、誰も居ない所はこの世界で行くのは難しいけど、ゲームの世界ならいろいろあるぞ」


「ゲームの世界?」


「ああ、ゲームってしたことあるか?」


「スマホゲームなら」


「それなら話が早い。俺がやっているのはシンライというゲームなんだが、知っているか?」


「名前だけは、コマーシャルや雑誌、スマホの広告でもよく出てくるけど」


「実は俺、そのゲームで猫の旅団というギルドマスターをやっているだけど、まだ10人ほどしか居ないし、ほとんど夜しか活動していないけど、最強ギルドを目指して人数集めているんだ。

でもなかなか集まらないんだよな。

どうせ、暇だろ、どうだ」


「暇って決めつけるなよな、確かに暇だけど」


「バーチャルゴーグルは持っているか?」


「いや、持ってないけど」


「なら早速、バーチャルゴーグルを買いに行くぞ」


「まだ、やるとは言ってないだろ」


「大丈夫、任せろ」


「何が大丈夫だ」


昔からこうだ、人の意見を聞き入れない。

自分が決めた事は曲げずに貫く姿勢、全く変わっていなかった。

ギルドマスターやっていると言っていたが、リーダーとしての素質はあるだろう、何故か僕は湊に手を繋ぎ引っ張っられている。

勿論、男同士で手を繋ぐなんて、僕にそんな趣味はない。

周りの目が気になり、周りを見ないで下を向き、恥ずかしさのあまり顔が赤くなっていないか心配しながら歩いていた。


「湊、手を離せよ、ちゃんと付いてくるから」


「そう言って、手を離した途端逃げるだろう。

そんな嘘に騙されはしないぞ」


手を無理やり離そうとしたが、意外と湊の掴む手は力強く抜け出すことは出来なかった。

僕が弱いだけかもしれないけど…。

そして一軒の専門店に着いた。


「買わないといけないのは、マイク付きバーチャルゴーグルと専用コントローラ」


専門店の中に入り、二人で商品を物色していて、その頃には、いつの間にか手を離していた。


「ん~、いろいろ有るけど高いな」


「このくらいはするだろう。

お薦めは俺も使っているこのゴーグルとコントローラ、安いのだと左右に振った時、一瞬タイムロスがあったり画面の端が見えなかったりするからゴーグルは最低でもこれだな。

コントローラも同じ、安いやつは動かした時タイムロスがあったりボタンが足りなかったり、操作しにくかったりするから今まで使った中では、これが一番だ」


「結構高いな、やっぱり。俺のアルバイト代1週間分はあるんじゃないか」


「これさえ買えば、ゲームは基本タダだから、まあ、課金システムだから早く強くなるには課金しないといけないけど、課金しなくても普通に遊べるぞ」


「何か騙させているみたいだけど...」


「頼むよ、ゲーム始めたらレベル上げ手伝うから、あとコントローラは見ないで操作するからボタンの位置を把握しておいてくれ一応、俺の連絡先教えとくからゲーム内で俺が居ない時はメールしてくれ、仕事しているかも知れないけど、夜はだいたいゲームにインしているから、頼んだぞ」


そう言われ友達の言葉に流されて、ついつい買ってしまったゴーグルとコントローラ、買ったからにはゲームをやらないと意味が無いような気がして、家に帰り早速、スマホアプリ、シンライをダウンロードする。

僕の家は二階建ての一軒家、そんなに大きくはないが父が公務員の為、裕福な方だと思う。

母は専業主婦、だから僕が家にいるといつも文句を言われ、早く就職しろと言われるけど、職がないからどうしようもない。

僕の部屋は二階の日の当たらない北側の部屋、僕には丁度いいかもしれない。

ベッド1つに机が1つ、小さな本棚があるだけで殺風景で、綺麗に片付けしているように見えるが、実際はお金に余裕がなく、いろいろ買う事が出来なかっただけだった。

机の上にあるパソコンも父が就職に有利になるようにと買ってくれたものだが、今は使うことがなく電源も入れずに放置されていた。

最初の画面が出てきがバーチャルゲームは初めてなので、説明書を見た。


なになに『シンライの説明について、このゲームは自動で進化するマザーコンピューター、アンフィニーと呼ばれるシステムで運営されております。

これはゲーマー達のやりたい事を出来るようにする、そう言った要望に答える為に開発されたシステムです。

このシステムは、ゲーマー達の会話の中、行動の中から要望やシステムエラーを見つけ出し自動でプログラムを変更していきます。

ゲーマー達のレベル上げがやり易いように、同じ場所に現れるモンスターのレベルをゲーマー達のレベルに合わせて上下します。

etc…。』


「なんか分からないけど、やってみるか。

取り敢えず、ゲームにインする前に湊にメールしてみるか」


メールをすると直ぐ返信が来たが、自宅に帰るまで一時間ほどかかるそうで、先にチュートリアルを先にやって、最初の街グレスの入り口で待ち合わせする事になっていた。

湊のゲーム内でのキャラ名はミケ猫、猫好きもあって家で飼っている猫がミケ猫だから、キャラ名もミケ猫にしているようだ。

早速、チュートリアルを始めた。


キャラ名は、刹那でいいか、顔のパーツをそれぞれ決めて身長は自分と同じ170センチでいいか、そのあと身体能力のポイント振り分け10ポイントあるから、攻撃力に5、防御力に5振ってみた。

そして操作方法、武器屋で初期武器、剣と防具を貰い、錬金屋で強化のやり方を覚え、アイテム屋で回復薬10個を貰った。

それから戦闘のやり方、相手はゴブリンレベル1が1匹、剣で攻撃しながら、コントローラでキャラを移動させると見える画面も一緒に移動する。

3Dということで、実際に目の前にいるような感覚になるが、手を伸ばしても目には見えないし、『いたっ』どうやら現実では机に手をぶつけたようだ。

狭い部屋の中だから周りに気を付けないとな。

最初のスキル強撃を使えと画面にマークと説明が出る。

ただの全力攻撃のようだが、コントローラのスキルに割り当てられているボタンを押すと、勝手にスキルが発動しゴブリンを撃破し、経験値10と10Gのお金が入った。

チュートリアルが終わり、最初の街グレスの入り口に戻ったが、まだ湊は来ていないようだ。


湊が来る間、暇だったのでグレスの街を探検することにした。

グレスの街にはノンプレイヤーキャラ(NPC)と僕と同じ操作しているキャラが多く集まっていた。

どうして分かるかというと、頭の上にNCPはNCPと表示されているし、僕みたいなキャラは名前が表示されている。

更にギルドに入っていれば名前の上にギルド名が表示されていた。

NCPキャラでも武器を売っている人は武器商人、防具なら防具商人、クエスト依頼人など新設に表示されていたのでとても分かりやすいと感じた。

最初の街という事だけあって、まだレベルの低いキャラが大半、それをギルドに引き込もうとレベルの高いキャラ、ギルマスだろうか、チャットで叫んでいた。

湊がまだ来ないので、今の内いろいろ操作を覚えていた。

画面右下に小さなマップ画面がついており、NPCは緑色に、プレイヤーキャラは灰色、フレンドキャラは黄色、ギルドメンバーは青色の点が点灯するようになっているようだ。


見ている画面の中のキャラを選択すると、名前が表示されるようになっていた。

スマホと同じようにチャットも出来るけどメールも送れるようだ。

メールを押すとキーボード画面が出てきて普通にメール文が打てるようだ。

でも、まだフレンドもギルドも入っていないので誰にもメールを送る事は出来なかった。

その時、僕を呼ぶ声が聞こえた。


「悠真、居るなら入り口に集合」


ゲーム内で本当の名前で呼ぶなよと思いながら、街の入り口へと向かった。

そして入り口に立っていたのは、ミケ猫。

そうミケ猫そのものだった。

ミケ猫が二本足で立ち甲冑を着込んで剣を腰に指していた。

ミケ猫を選択してみると、キャラ名はミケ猫、ギルドは猫の旅団となっていた。

こいつが湊で間違いなさそうだ。


「お待たせ、ミケ猫」


「ん、悠真かにゃ?」


「本名で言うなよ、キャラ名は刹那だ」


「何が刹那だ、名前が格好良すぎて名前負けしているにゃ」


「ほっとけ、名前なんて好きな名前付けてもいいだろう。

それに何でにゃをつけているんだ」


「それはミケ猫だからにゃ、猫に成りきらないとにゃ、まあ、そうだな。強くなれば名前負けしなくなるだろうからにゃ。

取り敢えずギルドに入ってくれ、今から招待するからにゃ」


すると猫の旅団からの招待が来たので、了承すると僕の名前の上に猫の旅団の名前が付いた。

メニュー欄にもギルド欄が増えたので確認するとメンバーは僕を入れて10名、僕のキャラ刹那と湊のミケ猫だけが白く光って、あとの人達は文字が薄くなっていた。

他の人はゲームに入っていないということか。


「今はまだ時間が早いから、他に誰もインしてないけど、これから皆インすると思うから、それまで二人でレベル上げでもするかにゃ。

あとこのギルドは最後ににゃを付ける決まりだからよろしくにゃ」


「そんな事聞いてないぞ、そういう事は早く言えよ。」


「言わなかったかにゃ、まあいいにゃ、それじゃ、パーティー組んで街の周りのゴブリンでも刈るか」


「え、でもゴブリンってレベル1だろ、パーティー組むならもっとレベルの高い敵倒した方が効率良いんじゃないの」


「それがこのゲームの違う所さ、ゴブリンレベル1しか出ない所でも、パーティー組むとそのレベルに応じてゴブリンのレベルと数が変化するのさ。

まあ、やってみれば分かるさ」


早速街の入り口を出て辺りを歩き回っていると『いた!』

ゴブリンだ、レベル5、数は3匹。


「本当だ、レベルと数が違っている」


「だろう、俺が倒すから攻撃されないように見ていてくれ」


ゴブリンのへレベル5数3なんて湊の敵ではなかった。

動きもそうだが、湊が動くのを見ていたら、ゴブリンの動きが鈍く感じてしまう。

一体、湊のレベルは幾つなんだろう?

一匹目を頭から真二つにして、あと二匹を同時に横に振り切り、ほとんど瞬殺状態だった。

僕に経験値150が入り、レベルが2に上がり身体能力ポイント5、スキルポイント5が入った。

どうやら能力値にポイントを振り、スキルをポイントで習得して強くしていくようだ。


「あっという間だな」


「まあな、このくらいは朝飯前さ。次は悠真にも戦って貰うにゃ」


「いきなりかよ」


「おいおい、今のうち戦闘訓練しないと、いつやるんだにゃ。

今でしょう。いつでも俺が手伝う訳じゃないし、1人で戦闘しないといけない時もあるんだにゃ」


「分かったよ、でもいきなり3匹は無理だぞ」


「分かってるにゃ、残り1匹を倒してもらうにゃ。

ではゴブリンを探しに行くにゃ」


僕と湊は次のゴブリンを探しに歩き回っていた。

ゴブリンは直ぐに見つかった。

最初の2匹は湊が片付けてくれた。

残り1匹、僕は攻撃するがゴブリンに当たらない。

2度目の攻撃、やはり当たらない。

そしてゴブリンの攻撃、棍棒を振りかぶり殴りつけてくる。

画面が一瞬赤くなる、棍棒が当たったのだろうか。

HPが減っているから、攻撃を受けたのだろう。


「悠真、俺が惹き付けておくから、その間に後ろから攻撃するにゃ」


「分かった」


湊は何かスキルを発動したのだろうか、ゴブリンが湊の方に向かっていくが、湊は攻撃せずに棍棒を受け止めるだけだった。


「ほら、早く攻撃するにゃ」


「分かってる」


僕は攻撃するがなかなか当たらない。

5回に1回当たる程度の確率で、何とか倒すことが出来た。


「よし、次にゃ」


「当たらないよ」


「それはレベルが低いからにゃ、そのうち当たるようになるにゃ。数をこなしてレベル上げるにゃ」


この後、戦闘を何回繰り返しただろうか。

僕のレベルは3に現在の時刻8時になっていた。


「湊、そろそろ晩御飯だから落ちるよ」


「これから皆、インしてくるのににゃ」


「仕方ないだろう。家が五月蝿いんだよ。

また、明日な」


「分かった、また明日にゃ」


僕はログアウトし、コントローラを置きゴーグルを外す、『ふぅ~』意外とゴーグルをかけてゲームすると目が回りそうだ。

体は動いていないのに、目だけは動き回っていたのでゴーグルを外した瞬間、変な感覚に陥る。

僕は目を閉じ、暫くベッドで横になることにした。


そして遠くの方で叫ぶ声がした。


「悠真、ご飯!」


「はーい!」


母の声だった。

返事はしたものの、まだ少しふらついているような感覚になっていて、直ぐに起きて行くことは出来なかった。

ゆっくりと体を起こし、床に足をつきゆっくりと立ち上がる。

大丈夫かどうかを確認しながら立ち上がると、もうふらつき感はなくなっていた。


僕は夕食を取る為に部屋を出て一階にあるダイニングへと向かった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ